秋元議員に懲役4年実刑判決
IR汚職事件 東京地裁

IR・統合型リゾート施設の事業をめぐる汚職事件で、収賄と証人買収の罪に問われた秋元司衆議院議員に東京地方裁判所は「大臣に次ぐ要職にありながら特定の企業と癒着し、至れり尽くせりの特別待遇を受けていた」として懲役4年の実刑判決を言い渡しました。

IRを担当する内閣府の副大臣だった衆議院議員の秋元司被告(49)は、中国企業などから合わせておよそ750万円相当の賄賂を受け取ったとして収賄の罪と、贈賄側に裁判でうその証言をするよう依頼し、現金を渡そうとしたとして証人買収の罪に問われ、全面的に無罪を主張していました。

判決で、東京地方裁判所の丹羽敏彦裁判長は「贈賄側の証言は、携帯電話のメッセージなどの客観的な証拠からも信用できる」などとして、議員会館で渡された現金300万円や、そのほかの利益供与はいずれも賄賂に当たると判断しました。

また、証人買収の罪については秋元議員が積極的に主導したと認定しました。

そのうえで「大臣に次ぐ要職にありながら特定の企業と癒着し、露骨な接待を受けて至れり尽くせりの特別待遇を受けていた。さらに証人買収という卑劣な手段で前代未聞の司法妨害を行った。公人としての倫理観はおろか、この種の犯罪に関する最低限の順法精神もなく、長期の実刑は免れない」と指摘し、懲役4年と追徴金およそ750万円の判決を言い渡しました。

弁護団は控訴する方針です。

実刑判決により、東京拘置所に収監された秋元議員について、東京地方裁判所は弁護側の請求を受けて保釈を認める決定をしましたが、検察はこれを不服として東京高等裁判所に抗告しました。

一方、この事件で秋元議員とともに収賄の罪に問われた元政策秘書の豊嶋晃弘被告(42)には懲役2年執行猶予4年が言い渡されました。

判決の影響は

秋元議員は実刑が確定すれば、公民権が停止され、失職します。

また、収賄の罪で有罪判決が確定した場合は、執行猶予が付いても公民権が停止され、失職しますが、秋元議員側は控訴する方針で、直ちに失職することはありません。

政治とカネをめぐっては去年以降、自民党に所属していた現職や元職の国会議員が相次いで起訴されています。

河井元法務大臣がおととしの参議院選挙をめぐる大規模買収事件の1審で実刑判決を受けたほか、吉川元農林水産大臣も現職当時の収賄事件で在宅起訴され裁判が続いています。

また、ことし7月には「桜を見る会」をめぐる問題で、東京地検特捜部が安倍前総理大臣を不起訴とした処分の一部を検察審査会が「不起訴不当」と議決し、特捜部が再捜査しています。

失った国民からの信頼をどのように回復させるのか、厳しく問われていると言えます。

加藤官房長官「コメント差し控える」

加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「判決は承知しているが、個別事案における裁判所の判断なので、政府として、コメントはこれまでも差し控えさせていただいているところだ」と述べました。

赤羽国土交通相「公正性 透明性を確保し審査」

IRを所管する赤羽国土交通大臣は「個別の事案の裁判所の判断については、国土交通大臣としての所感は差し控える」と述べました。

そのうえで、赤羽大臣は、IR事業の今後の手続きの進め方について「当然のことだが、公正性、透明性をしっかりと確保しながら、その審査の過程や結果については、国民の皆様に十分、納得がいただけるように情報公開を進めて、説明責任を果たしたい」と述べました。

今回の汚職事件を受けて、政府は、収賄などの不正行為を防止するため、整備する地域を選定する際の基本方針を見直し、国や自治体の職員などがIRの事業者と面談する際は複数の職員で対応するほか、面談記録を作成し、一定期間、保存するといったルールを盛り込みました。

そして、IRの誘致を目指す自治体からの整備計画の申請は、10月1日から受け付けることにしています。

萩生田文部科学相「党としても重く受け止めて対応」

萩生田文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で「かつて自由民主党に所属した国会議員なので、党としてもきっと重く受け止めて対応していくことになるだろう。司法の中でさまざまなやり取りがあるだろうから、それをまずは見守っていきたい」と述べました。

自民 森山国対委員長「極めて大きな問題」

自民党の森山国会対策委員長は、国会内で記者団に対し「かつての同僚議員が議員在職中に行った行為に有罪の判決が出されたことは極めて大きな問題だ。国会議員一人一人が、自覚して政治活動に取り組んでいくことが大事なことだと改めて思う」と述べました。

また、記者団から衆議院選挙などへの影響について問われたのに対し、森山氏は「もう党員でないので、コメントは差し控えたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「党内でコンプライアンスの徹底を」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「実刑判決が出たことを重く受け止めなければならない。今回の事案は政治家が当然守るべき法律を守っていなかったことに尽きる。改めて党内でコンプライアンスの徹底を図っていくことが重要だ」と述べました。

自民 岸田前政調会長「党としても重く受け止め信頼回復を」

自民党の岸田前政務調査会長は国会内で記者団に対し「現職の国会議員に対する大変重い判決だ。本人は自民党を離党しているが、党は公認などを行った責任もある。党としても重く受け止め、政治の信頼回復に努めなければならない」と述べました。

公明 山口代表「司法ゆがめた責任 深く自覚すべき」

公明党の山口代表は、記者会見で「自民党をすでに離党してるとはいえ、IR政策の担当副大臣だったことから、責任は極めて重い。特に証人買収の罪まで有罪とされたことは、立法府にある人間が、司法の過程をもゆがめたということであり、責任を深く自覚すべきだ」と述べました。

立民 枝野代表「当然 議員辞職すべき」

立憲民主党の枝野代表は、党の役員会で「最初に立件された事件に加え、証拠隠滅や言い逃れをするために、さらに罪が指摘される経緯を見ても、秋元議員は、なぜいまだに現職にとどまっているのかと思う。当然、議員辞職すべきだ」と述べました。

立民 安住国対委員長「自民の責任で議員辞職させるべき」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「秋元議員は、かつて所属していた自民党の責任で議員辞職させるべきだ。裁判での証言を邪魔するような買収工作をしたという悪質性も指摘されているのに、自民党は秋元議員に対し、何ら処分をしてこなかった。だらしない、厳しさのない政党だ」と述べました。