五輪閉幕 期間中に感染急拡大
24日からのパラ開催に課題

新型コロナウイルスの影響で1年の延期を経て開催された東京オリンピックは、8日午後8時からメインスタジアムの国立競技場で閉会式が行われ、17日間にわたる大会が幕を降ろしました。

新型コロナウイルスの影響で1年延期され、先月23日に開幕した東京オリンピックは、史上最多の33競技が実施され、205の国と地域に加え難民選手団の合わせて1万1000人余りが参加して開催されました。

大会を通しての日本のメダル数は、金メダルが27個、銀メダルが14個、銅メダルが17個の合わせて58個になりました。

これまで最多だったリオデジャネイロ大会の41個を17個上回り、史上最多のメダルの数となりました。

期間中 新型コロナが急拡大

8日閉幕したオリンピックの期間中、開催都市の東京都では新型コロナウイルスの感染が急拡大し、半月後にパラリンピックの開幕を控えるなか感染を抑え込めるかが課題です。

先月23日に開幕し今月8日に閉幕した東京オリンピックは、感染拡大で緊急事態宣言が出される中、東京など1都3県の会場は無観客になるなど異例の大会となりました。

大会期間中、開催都市の東京都ではこれまでにないスピードで感染が急拡大し、1日の感染確認は8日までの5日連続で4000人を超えました。

また、7日間平均は、閉幕した8日時点で開幕した先月23日の2.9倍になりました。

さらに入院患者は7日、8日と、2日連続で過去最多を更新したほか、自宅療養者も急増していて、都の専門家は、医療提供体制がひっ迫していると指摘しています。

大会の開催が人出を誘発したという見方がある一方、小池知事は、「テレビで観戦した人も多く、ステイホームにつながった」と述べ、開催自体が人出の増加や感染の拡大につながってはいないという認識を示しています。

対策の効果が現れるにはおよそ2週間かかるとも言われていて、半月後の今月24日にはパラリンピックの開幕を控えるなか、感染を抑え込めるかが課題です。

大会関連の感染者は計458人に

大会組織委員会は、オリンピックの閉幕から一夜明けた9日、新たに28人が新型コロナの検査で陽性反応を示したと発表しました。

この中に選手はおらず、海外から来日した人は、大会関係者が5人、メディアが1人、大会の委託業者が1人の合わせて7人で、このうち大会関係者1人は選手村に滞在する人でした。

海外から来日した選手と関係者の感染者は、先月1日から8日までの累計で151人となり、選手村に滞在する人の累計は34人となっています。

また、日本在住の人で新たに感染が確認されたのは、大会の委託業者が12人、ボランティアが6人、組織委員会の職員が2人、大会関係者が1人の合わせて21人でした。

これで組織委員会がまとめるオリンピックに関連した感染者の累計は、国内と海外合わせて458人となりました。

警備の警察応援部隊 計49人感染確認

8日、東京オリンピックの都内の競技会場で警備にあたっていた岡山県警察本部などの警察官14人が新たに新型コロナウイルスに感染したことが分かりました。
地方から派遣された応援部隊で感染が確認されたのはこれで49人となります。

感染が新たに確認されたのは、応援部隊として派遣されていた20代から40代の警察官で、岡山県警と和歌山県警がそれぞれ6人、大阪府警と兵庫県警がそれぞれ1人の合わせて14人です。

警視庁によりますと、14人は都内の複数の競技会場で警備に当たっていましたが、今月5日から7日にかけて、このうちの一部が発熱の症状を訴えたことから検査を受けた結果、いずれも陽性と判明しました。

これを受けて、警視庁は接触の疑いがある38人の警察官についても都内の施設で隔離する措置をとっているということです。

東京オリンピック・パラリンピックでは、全国から応援部隊としておよそ1万2000人の警察官が派遣されていて、感染が確認されたのはこれで49人となります。

閉会式 会場周辺は“密”に 開催反対団体のデモも

東京オリンピックの閉会式に合わせて、国立競技場の周辺には雰囲気を味わいたいと多くの人が訪れ、場所によっては「密」の状態になっていました。

国立競技場から南東に500メートルほど離れた歩道には、閉会式の1時間ほど前から人が集まり始めました。

この場所から先は通行が規制され、閉会式の様子はほとんど分かりませんでしたが、多くの人たちが足を止めて国立競技場を写真に収めたり、スマートフォンのアプリでテレビの中継を見守ったりしていました。

開会式の日も会場近くを訪れたという千葉県の32歳男性は「きょうも花火などが見られるかと思い近くにホテルを予約して来ましたが、通行規制で開会式の時よりも近づけないので残念です」と話していました。

集まった人の中には、大会に参加した国々の公用語で「ありがとう。また会いましょう」と書かれた横断幕を準備したという52歳の女性もいました。

この女性は「選手たちは今回競技場とホテルの往復だけで日本を楽しめなかったと思うので、少しでも気持ちを伝えたいと3日間かけて準備しました。会場に近づくことができず残念ですが、新型コロナウイルスが収束したらまた日本を訪れてほしいです」と話していました。

一方、競技場により近い渋谷区の歩道にはさらに多くの人が詰めかけ、場所によっては身動きがとれないほどの「密」の状態になっていました。

このほか、会場周辺ではオリンピックの開催に反対する市民団体によるデモも行われ、およそ70人が「五輪よりもコロナ対策を」と書かれた看板などを掲げてシュプレヒコールをあげていました。

橋本会長「五輪の価値の本質に迫り 大会開催」

東京オリンピックの閉幕を前にIOC=国際オリンピック委員会が総会を開き、大会組織委員会の橋本聖子会長がコロナ禍で開催された大会を振り返り、「このような時だからこそ、オリンピックの価値の本質に迫り、大会を開催することができた」と述べました。

新型コロナの影響で史上初めて1年延期された東京オリンピックが8日夜、閉幕するのを前に、IOCは都内で総会を開き、オンラインの参加を交えながらおよそ70人の委員が出席しました。

総会では、バッハ会長が「東京オリンピックは正しいタイミングで行われたと確信を持って言うことができる」とあいさつし、組織委員会の橋本会長が「このような時だからこそ、オリンピックの価値の本質に迫り、大会を開催することができた。今の時代にこそ不可欠な卓越、尊敬、友情というオリンピックの価値がより一層、世界に広がり、このムーブメントが推進されることを願っている」と応えました。

また、武藤事務総長は「コロナで分断された時代に世界中からアスリートが集い躍動する舞台を整えることができた。世界中の皆様に感動と希望を与える大会が開催できたと確信している」と話しました。

会場では、出席した委員全員が席を立って長い拍手をおくり、直前での無観客開催の決定や新型コロナの感染拡大でいくつもの課題に追われた大会運営の労をねぎらいました。

このあと、困難な時期に大会開催を実現したことをたたえ、功労章である「オリンピック・オーダー」を橋本会長や菅総理大臣、小池都知事などに贈ることを決めました。

また、総会では、大会期間中に日本人として初めてIOCアスリート委員に選出された北京オリンピックのフェンシングの銀メダリスト、太田雄貴氏が正式にIOC委員に選任されました。

このほか、総会では、国際競技団体がIOC理事会の決定に従わない場合やオリンピックのイメージを損ねるような行為があった場合にはIOC総会で競技をオリンピックから除外することができるとする憲章の改正案を採択しました。

コロナ禍の東京オリンピック開催 都民の受け止めは

東京・臨海部に設けられた東京オリンピックの聖火台の周辺では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で開かれた大会について、さまざまな声が聞かれました。

東京 江東区にある「夢の大橋」に設けられた聖火台の聖火は、8日の閉会式の途中で消されることになっていて、現地での観覧は感染拡大を防ぐため自粛が呼びかけられてきました。

近くに住む30代の女性は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で開催された大会について、「対策がとられたと聞いているので、大会で感染が拡大したとは思いません。開催前はもやもやしたものがありましたが、新型コロナで沈んでいる中で、テレビでオリンピックを観戦できたのは元気の材料になったと思います」と話していました。

一方、20代の男性は「お祭りで舞い上がってしまい、コロナの感染者が増えてしまったところはあるのではないか」と話し、大会が人々の行動に影響したと感じていました。

また70代の女性は「選手の頑張りを見ると開催できてよかったと思います。一方でオリンピックには税金が使われていて、今後、当然その負担がかかってくるわけですから、率直に言うと心配です」と話していました。