酒提供飲食店と取引停止要請
酒販売事業者への要請撤回

緊急事態宣言の対象地域などで酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請したことについて、政府は、与党からも反発が相次いでいることを踏まえ撤回しました。

新型コロナウイルス対策で、政府は酒の販売事業者に対し、緊急事態宣言の対象地域などでは酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請しました。

加藤官房長官は13日の記者会見で、要請に応じなくても不利益は生じず、営業の自由を阻害するものでもないと説明していました。

しかし立憲民主党などは「協力金が不十分な中で、やむなく営業している飲食店をはじめとした業界への圧力だ」として、撤回を要求し、西村経済再生担当大臣の辞任も求めています。

これに加えて、酒類販売の業界団体は12日、自民党の下村政務調査会長に懸念を伝えたほか、自民党の会合でも13日、「酒の販売事業者の経営は非常に厳しく白紙に戻すべきだ」として反発が相次ぎました。

こうした状況を踏まえ、政府は、大きな混乱を生じさせたとして、13日夜、各組合を通じて、酒を販売する事業者に要請を撤回する文書を出しました。

菅首相 「おわび申し上げたい」

菅総理大臣は14日午前、政府が酒の販売事業者に対し、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう求める要請などを撤回したことについて、総理大臣官邸で記者団に対し「先週の事務方の説明の中で言及しているということだが、要請の具体的な内容について議論したことはない。すでに要請は撤回されているが、多くの皆様に大変、ご迷惑をおかけしたことについて、おわび申し上げたい」と陳謝しました。

そして「内閣として、関係者の皆さんに迷惑をかけるようなことは避けるべきだ。皆で、しっかり対応していかなければならない」と述べました。

そのうえで「緊急事態宣言を発出する中で、例えば、酒の提供停止などに応じた飲食店への協力金の先渡しなどで、少しでも理解をいただき、協力いただくということが極めて大事だ。結果的に、そうしたことが国民の皆さんの感染拡大防止につながる」と述べました。

“金融機関に働きかけてもらう”も撤回

酒の提供停止などの要請をめぐっては、先週、西村経済再生担当大臣が、飲食店などへの要請の順守を金融機関に働きかけてもらう考えを示しましたが、森山国会対策委員長らが「大臣の発言は非常に重いものなので、誤解を招くことがないよう気をつけてもらいたい」と伝えその後、政府として方針を撤回していて、今回は、それに続くものになります。

西村経済再生担当相 「混乱を招き、不安与え反省」

西村大臣は記者会見で「私の発言で混乱を招き、飲食店の皆さんに不安を与えることになった。何とか感染を抑えたい、できるだけ多くの方に協力をいただきたいという強い思いからではあったが、趣旨を十分に伝えきれず反省している」と釈明しました。

そして「融資を制限する趣旨ではなかったが、さまざまな指摘を重く受け止め、金融機関への働きかけは行わないことにした」と述べるとともに、営業時間の短縮要請に応じてもらえるよう、協力金を早期に支給できる仕組みの導入を急ぐ考えを示しました。

また、野党側などから辞任を求める声が出ていることについて「反省すべきは反省しながら、感染を抑え事業も継続できる環境を作れるよう、責任を果たしていきたい」と述べ、辞任を否定しました。

さらに、金融機関への働きかけをめぐり、関係閣僚での調整があったかどうかについては「総理大臣官邸での打ち合わせで、事務方から、金融機関や卸売業者への働きかけについても触れられたが、閣僚間では議論はなかったと記憶している」と述べました。

麻生副総理・金融相「放っておけと言った」

麻生副総理兼金融担当大臣は閣議のあとの記者会見で「海外出張中に金融機関の働きかけについて検討中だと、途中段階の報告を受けた。私は違うんじゃないかと思って『放っておけ』とだけ言った」と述べました。

その理由について麻生大臣は「『融資してください』とお願いをしているのに『融資を止めてやろう』という話をするのであれば、普通に考えればおかしいと思う」と述べたうえで「金融機関に対しては、これまでも何回にもわたって、飲食店を含む事業者の立場に立って、迅速かつ柔軟な対応で支援を行うよう要請している」と述べ、事業者の経営を下支えする政府の方針に変わりはないという考えを示しました。

田村厚生労働相「誤ったメッセージ伝わった」

田村厚生労働大臣は記者会見で「飲食店の皆さんに誤ったメッセージが伝わり、おわび申し上げたい」と陳謝しました。

そのうえで「決して変な圧力ではなく、理解をいただきたい。たび重なる時短営業や営業停止の中で、資金繰りも含め飲食店が大変な状況だということは認識している」と述べ、理解を求めました。

また、田村大臣は東京の緊急事態宣言について「4回目ということで、効果が弱まることも当然あるが、緊急事態措置を出さないよりも滞留人口をある程度抑えられると思う。特に夜間の繁華街での滞留人口を抑えるためメッセージを出していきたい」と述べました。

自民 二階幹事長「誤解受けることがないよう慎重に」

自民党の二階幹事長は党の総務会で「自民党は、飲食店の皆さんに営業自粛という無理なお願いをし、一丸となってこの国難を乗り越えようと努力している。誤解を受けることがないよう、今後は事前に党に相談してもらい、発言には慎重を尽くしてもらいたい」と苦言を呈しました。

また、佐藤総務会長は記者会見で「一刻も早く新型コロナを撲滅したいという思いが、あのような発言になってしまったのではないか。西村大臣から、けさ電話をもらい『反省し気を付けたい』とのことだったので、今後に期待したい」と述べました。

立民 枝野代表「政権全体の体質の問題だ」

立憲民主党の枝野代表は党の常任幹事会で「西村大臣の発言のみにとどまらず、政権全体の体質の問題だ。この問題は補償もないままに長期にわたって協力を迫るという、無理を重ねてきたことに大きな原因がある。われわれは当初から自粛と補償はセットだと言ってきた。臨時国会を召集し、事業者が協力してもらえる状況を作るために努力していく」と述べました。

国民 玉木代表「酒販売業者への要請撤回を」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「酒の販売業者に対して出されている要請は筋が悪く、速やかな撤回を求める。経済的な支援と補償を万全にする必要があり、政府には臨時国会を召集し、消費税の一時的な減税を含めた30兆円の補正予算案の編成を求めていきたい」と述べました。

経済同友会 櫻田代表幹事「大きな混乱を生んだ」

酒の提供停止など、飲食店への要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言について、経済同友会の櫻田代表幹事は、13日の定例会見で「大きな混乱を生んだのは間違いない」と述べたうえで、政府に対する国民の信頼が損なわれているとして、丁寧な対応を求めました。

この中で櫻田代表幹事は「どういう意思決定のプロセスであの発言につながったのかは分からないが、大きな混乱を生んだのは間違いない。要請の内容が法的な根拠がないとすると、昔の裁量行政を想起させるようなもので大変まずい」と述べました。

そのうえで「なぜ4回目の緊急事態宣言が出たのかや、新型コロナのワクチンが突然足りなくなったことに対し、明快な説明が出ていない中で、この発言が出てきた。政府は本当のことを伝えているのかという疑問を持たれてもしかたのない現象が続いている」と述べ、政府に対する国民の信頼が損なわれているとして、丁寧な対応を求めました。

立民 酒販売事業者への政府要請 撤回要求相次ぐ 党会合で

酒の販売事業者に、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請しているのは国による業界への圧力だとして、立憲民主党の会合では要請の撤回要求が相次ぎました。

新型コロナウイルス対策で政府が酒の販売事業者に対し、緊急事態宣言の対象地域などでは酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請していることを受け、立憲民主党は会合を開き、政府担当者からヒアリングを行いました。

出席した議員からは「協力金が不十分な中で、やむなく営業している飲食店をはじめとした業界への圧力で、要請に法的根拠もなく問題だ」として、要請の撤回要求が相次ぎました。

また「要請を撤回しなければ、西村経済再生担当大臣は辞任に値する」として辞任を求める意見も出されました。

これに対し、政府側は今のところ撤回は考えていないとしたうえで「業界の方と対話を続けながら丁寧に説明しているところだ」と述べました。

菅首相 公明 山口代表に陳謝 飲食店めぐる経済再生相の発言

酒の提供停止など飲食店への要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言について、菅総理大臣は公明党の山口代表に「ご心配をおかけした」と陳謝しました。

菅総理大臣は13日午後、総理大臣官邸で公明党の山口代表と昼食を取りながら会談しました。

この中で菅総理大臣は、酒の提供停止など、飲食店への要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言について「ご心配をおかけした」と陳謝しました。

そのうえで、両氏は事業者の協力が得られるよう協力金の迅速な支給など、自治体とも連携して進めていくことを確認しました。

また、東京都に4回目の緊急事態宣言が出されたことを踏まえ、感染対策を徹底し、ワクチン接種も加速させられるよう全力で取り組むことで一致しました。

一方、会談では先の東京都議会議員選挙で自民・公明両党で目標とした過半数の議席に届かなかったことを踏まえ、秋までに行われる衆議院選挙に向けて緊密に連携していくことを確認しました。