第一三共 コロナワクチン
年内にも臨床試験実施へ

新型コロナウイルスの国産ワクチンについて、開発を進める製薬会社の1つ、第一三共は、国産の「mRNAワクチン」の数千人規模の臨床試験を年内にも実施する方向で準備を進めていることが分かりました。

国産の「mRNAワクチン」

これは製薬大手の第一三共でワクチン開発の責任者を務める籔田雅之バイオロジクス本部長がNHKの取材に対して明らかにしました。

現在、国内で使われている「mRNAワクチン」はいずれも海外で開発されたものですが、第一三共では独自の技術を使った国産の「mRNAワクチン」の臨床試験を始めています。

籔田バイオロジクス本部長によりますと年内にも開発中のワクチンを数千人に投与する最終段階の臨床試験を始める準備を進めていて、結果を踏まえて国に承認の申請を行う方針だということです。

新型コロナウイルスではすでに実用化されたワクチンがあることから、ワクチンが含まれていない偽の薬を数万人に投与して効果を比較する大規模は臨床試験は倫理的に難しいとされています。

このため会社では開発中のワクチンを投与した人の抗体の値をすでに実用化されたワクチンと比べて遜色がないことを確認する「非劣性試験」という方法で検討しているということです。

承認されれば、埼玉県にある工場で大量生産を行うということで、現在生産体制の整備も進めているということです。

国内の企業のワクチン開発については、このほかバイオベンチャーのアンジェス、塩野義製薬、製薬会社のKMバイオロジクスがそれぞれ臨床試験を始めています。

籔田バイオロジクス本部長は「2022年度の実用化を目標に掲げ、パワーを入れて進めていく。『mRNA』は非常に速いスピードで医薬品開発ができるのでいまは新型コロナが最優先だが、今後ほかのワクチンや遺伝子治療、がん領域でも開発を推進していきたい」と話していました。

国内メーカー4社が臨床試験

新型コロナワクチンを開発している国内メーカーでは、これまでに4社が開発中のワクチンをヒトに投与する臨床試験を行っています。

このうちアンジェスは500人規模で最終段階の臨床試験を行っていて、今後の大規模試験については国の審査機関などの方針によるとしているほか、塩野義製薬、第一三共、それにKMバイオロジクスもそれぞれ臨床試験を始めています。

ワクチン開発の臨床試験では、開発中のワクチンと「プラセボ」と呼ばれるワクチンが含まれていない偽の薬を合わせて数万人規模で投与し、効果や安全性を比較するのが一般的な方法となっていて、例えばファイザーのワクチンでは合わせて4万人以上で臨床試験が行われました。

ただ新型コロナウイルスではすでに効果が確認されたワクチンがあることから、試験のために偽の薬を投与することは倫理的な問題があるとされ、国際的にも後発のワクチン開発の課題となっています。

このため各国で偽薬を使わない臨床試験の在り方が議論されていて、開発中のワクチンを投与した人の抗体のレベルをすでに実用化されているワクチンと比較する方法などが検討されています。

これについて国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構は「ワクチンの開発企業に対し、各国当局やWHOの検討を踏まえ最新の情報に基づいて開発計画についての意見交換やアドバイスをしている」としています。