理番」先輩記者が語る

「首相動静」の起源に迫った今回の特集記事、読んでいただけましたでしょうか。
いやはや、先輩記者の方々の話、総理番をやっている私たちも、本当に知らなかったことばかりで勉強になりました。
さて、そんな先輩記者の話ですが、取材は更に奥深いところにまで。総理番時代のエピソードや、政治記者とはどうあるべきかなどいろいろとうかがいました。
滅多に聞けないお話もあったので、こちらにまとめてみました。お読みください。

番小屋に総理が登場!

まずは、元日本経済新聞の山岸一平さん(81歳)からうかがった、岸信介元総理大臣のエピソードです。時は日米安全保障条約が可決した1960年ごろのこと。

岸総理大臣が官邸で番記者が詰める番小屋にふらっと現れたというのです。
「あの頃は新聞各紙は全部、『岸やめろ』という論調だった」

「そんな中で岸は総理番に『君らはいいよなあ。勝手なことを書いて。俺も政治家じゃなくて新聞記者ならよかったなあ。だから俺は1人しかいない娘を新聞記者に嫁入りさせたんだよ』って、そんなことを言ってた」

「岸の娘は今の安倍総理大臣のお母さんの洋子さん。その新聞記者とは安倍総理大臣のお父さんの安倍晋太郎さんのことだよ。岸さんは新聞にいくら批判されても鷹揚としてたな」

NHKのアーカイブには、今の時代よりかなり近い距離で記者たちに囲まれて、取材を受ける岸元総理大臣の映像が残っています。

厳しい質問のなかでも、確かにたびたび笑顔が出て、受け答えしている様子がうかがえました。総理が番記者たちと、そんな話をしていたんですねえ。

政治記者の役割とは

次は、政治畑一徹だった、NHKの先輩記者、海老沢勝二さん(84歳)からうかがった話です。

まずは、「政治記者」というものの役割についてです。
「軍国主義と軍国政治という流れの中で、いまの憲法によって全体主義的なものが排除され、天皇中心の政治から国民主権の民主政治に大きく転換した。日本の一番基本は平和主義であり自由主義であるし、その中で『健全な民主主義を果たさせる、それに報道機関は大いに資するべきだ』という時代になった。そこを踏まえておかないと、今の政治情勢というのはわからない」

続けて、細川内閣の際に、衆議院の選挙制度が中選挙区から小選挙区に改められたことに触れた上で次のように指摘しました。
「どの選挙制度がいいかは政治情勢によって変わるし、どの選挙制度でも欠点はあり、『これが正しい』というのを選ぶのは難しい。だから変えていかなくてはならんと思う。政治というのは、その時の世論の動向なり政治情勢によって非常に変わるというのを基本におかないといけない」

そして、憲法改正についての持論は。
「憲法が70年も続いているというのは珍しい。憲法改正は国民が決める話だが、変える時期というのは来る。そういうことを念頭においておかないと非常に硬直した議論になってしまう」

最後に、これからの時代の政治取材についての助言をいただきました。
「戦後70年以上たって、いま時代の大きな転換期を迎えている。アメリカの大統領も、イギリスの首相も代わり、世界が非常に混沌としている。世の中がどう変わってきているのか、常にアンテナを張って見ていないと大きな所で間違ってしまう。『これからの日本の民主政治をどうしていくのか、国民のためになるのか』というのを判断して動くのが政治記者の業務だ」

常にアンテナを張り、見誤らないように。「国民のために」は決して大げさなことではなく、肝に銘じるべきことだと思いました。ありがとうございました。

政治部記者
佐久間 慶介
平成24年入局。福島局から政治部へ。現在、官邸クラブ総理番。ゴルフ、スキーが趣味。