都専門家“都内で感染再拡大
1日約1500人の危険性も”

東京都のモニタリング会議で専門家は、都内の新規陽性者数の増加比が高い値で推移していて「感染が再拡大している」と指摘しました。現在の増加比が続くと、4週間後には1日およそ1500人となり、変異ウイルスの影響で増加比がさらに上昇すれば年明けの第3波を超える急激な感染拡大の危険性が高くなると強い危機感を示しました。

会議の中で、専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、7日時点でおよそ625人となり、およそ503人だった1週間前・先月30日時点の1.24倍になりました。

新規陽性者数の増加比は高い値で推移していて、専門家は「感染が再拡大している」と指摘しました。

また、現在の増加比が続くと、3週間後の今月28日には1日1000人を超えて今の1.91倍のおよそ1192人となり、4週間後の来月4日には今の2.36倍のおよそ1478人と、年明けの第3波とほぼ同じレベルになると分析しました。

さらに、人の流れの増加や感染力が強い変異ウイルスの影響で、増加比がさらに上昇すれば年明けの第3波を超える急激な感染拡大の危険性が高くなると強い危機感を示しました。

一方、7日時点で入院患者は1週間前の先月30日より120人多い1673人と増加傾向が続いているほか、重症の患者は62人と15人増えました。

専門家は、若い世代や中年の入院患者が増加し、重症の患者も発生しているとしたうえで、急激な重症患者の増加は通常の医療も含めて医療提供体制のひっ迫を招くため厳重に警戒する必要があると指摘しました。

小池知事「実効性あるより強い措置とる」

モニタリング会議の中で小池知事は「国が東京都に対して緊急事態宣言を発出する手続きを進めている。現在の感染状況は専門家の指摘のとおり厳しい状況にある。都としても国と危機感を共有し、基本的対処方針や専門家の意見を踏まえ、実効性のあるより強い措置を対策本部会議で決定する。そのうえで都民、事業者への要請や呼びかけをお示しする予定だ。改めて極めて重要な段階だと思っているので、ご理解とご協力をぜひとも引き続きお願いしたい」と述べました。

新たに288床を確保

東京都は、新型コロナウイルスの患者用のベッドを新たに288床確保し、これで都内全体では5882床になったと明らかにしました。

このうち、
▽中等症以下の患者向けは、新たに269床確保して5490床
▽重症患者向けは、新たに19床確保して392床になりました。

モニタリング会議 専門家の分析結果

8日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、7日時点で、7日間平均が625.4人となり、1週間前、6月30日時点の502.7人より、およそ122人増加しました。

増加比は、前の週のおよそ124%でした。

前回に続き120%前後で専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

今月5日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、20代が31.3%でした。

20代は、前の週より2ポイント余り増え、前の週に続いて最も多くなりました。

次いで、
▽30代が20.2%
▽40代が16.7%
▽50代が12.3%
▽10代が7.5%
▽60代が4.8%
▽10歳未満が3.3%
▽70代が2.1%
▽80代が1.5%
▽90代以上が0.3%でした。

50代以下で全体のおよそ91%を占めています。

一方、65歳以上の高齢者は、今週は224人で、前の週より40人増えましたが、割合は0.1ポイント増えて5.5%で横ばいでした。

感染経路が分かっている人では、
▽同居する人からの感染が48.8%と最も多く、
次いで、
▽職場が18.4%
▽高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が9.2%
▽会食は8.6%と前の週から横ばいでした。

今週は、職場での感染が前の週から3.7ポイント増えました。

年代別にみると、
▽40代では5.2ポイント
▽50代では10ポイント
それぞれ増加しました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路が分からない人の7日間平均は、7日時点で383.9人で、前の週から83人増え、4週連続して増加しています。

また、増加比は、7日時点で127.6%と、前回から12.2ポイント上昇し、5週連続して増加しました。

専門家は「第3波では増加比が120%を超えたあと、急激に感染が再拡大しており、今後の動向に十分警戒する必要がある」と分析しました。

そのうえで「さらなる感染の拡大を防ぐためには、感染経路が分からない人の増加比をさらに低下させる必要がある。人の流れの増加を抑制するとともに、感染防止対策を徹底することが必要だ」と警戒を呼びかけました。

感染経路が分からない人の割合は、およそ62%と、前の週と比べて横ばいでした。

年代別では、20代~60代で60%を超えています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査で、いつ、どこで感染したのか分からないとする陽性者が増加している。経路が追えない人が増えることによる感染拡大を防ぐために、職場や施設における感染状況をいち早く把握し、速やかに濃厚接触者の検査を行う体制を強化することが必要である」と指摘しています。

医療提供体制

検査の陽性率の7日間平均は、7日時点で6.1%となり、前の週の6月30日時点と比べて1ポイント上昇しました。

入院患者は、7日時点で1673人と、6月30日の時点より120人増加しました。

専門家は「新規陽性者の増加に伴って入院患者も増加している。今後、さらなる人流の増加や変異ウイルスの影響によって、医療提供体制のひっ迫が危惧される」と警戒感を示しています。

そのうえで「医療機関は、およそ1年半にわたり新型コロナウイルスの患者の治療に追われている。現在はワクチン接種にも多くの人材を充てており、さらに負担が増している」と指摘しています。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ82%を占めていて、専門家は「およそ1か月前の65%前後から上昇傾向だ」と分析しています。

年代別で最も多いのは、
▽50代で、およそ21%
次いで、
▽40代のおよそ18%でした。

また、
▽30代以下も全体のおよそ32%を占めていて、
専門家は「6月以降、若年、中年層の割合が増加している。この傾向が続けば、若年、中年層の中等症患者が増加し、遅れて重症患者が増加する可能性がある。人と人との接触機会を減らし、基本的な感染防止対策の徹底や、ワクチン接種に発症の予防効果が期待されていることを啓発する必要がある」と呼びかけています。

都の基準で集計した7日時点の重症患者は、6月30日時点より15人増えて62人でした。

男女別では、
▽男性46人
▽女性16人です。

また、年代別では、
▽50代が23人と最も多く、
次いで、
▽70代が17人
▽60代が12人
▽80代が2人
▽40代が5人
▽20代が3人でした。

専門家は「50代が重症者全体の37%と、最も多くを占めている。20代でも新たな重症例が発生している。若年、中年層であっても入院治療が必要な中等症患者が一定の割合で発生し、重症化する患者も増加する」と指摘しました。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、7日時点で183人で、6月30日時点と比べて5人増えました。

7日時点で陽性となった人の療養状況を6月30日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は、229人増えて1183人
▽都が確保したホテルなどで療養している人は、321人増えて1455人
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は、256人増えて1049人と、
すべて増加しています。

「療養が必要な人」全体の数は926人増えて、7日時点で5360人となり、専門家は「依然として高い水準で推移している」と指摘しています。

また、今月5日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した13人が亡くなりました。

このうち10人は、70代以上でした。

インドで確認 変異ウイルスの陽性率 2週連続で上昇

東京都は、民間の検査機関とともに6月中旬から、新たな陽性者のうち半分余りの検体について、インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスかどうかを調べるスクリーニング検査を実施しています。

その結果、6月27日までの1週間では、1770件のうち261件が、この変異があるウイルスでした。

陽性率は14.7%で前の週より6.3ポイント増えました。

陽性率は、
▽6月13日までの1週間が3.2%
▽20日までの1週間が8.4%で、
2週連続で上昇しています。

イギリスで見つかった「N501Y」に変異があるウイルスは、陽性率が10%を超えたあと、4週間で4倍となり、最大で90%近くに達したことが報告されました。

都の専門家は「N501Yよりも感染力が強いと言われていることを踏まえると、L452Rへの急速な置き換わりが懸念される」と指摘しました。