被災者生活再建支援法の早期
適用目指す方針 熱海 土石流

今回の土石流被害について、棚橋泰文防災担当大臣は6日、閣議のあとの会見で「被災された方の生活再建に全力を挙げたい」と述べ、住宅の被害の程度に応じて再建費用を支給する被災者生活再建支援法の早期適用を目指す方針を示しました。

棚橋防災担当大臣は、静岡県熱海市で起きた土石流について「被災された方に市内3か所の避難所に避難していただいている。地域の要望を踏まえ、災害応急対策や被災された方々の生活再建にも全力をあげてまいりたい」と述べました。

そのうえで、全壊や中規模半壊など住宅の被害の程度に応じて再建費用が支給される被災者生活再建支援法の早期の適用に向けて、静岡県や熱海市と手続きを進める方針を明らかにしました。

また、土木施設など、自治体の復旧工事の費用を支援する「激甚災害」の指定については、基準に該当するかどうかを含めて被害状況の確認を進めているということです。

一方、静岡県と熱海市は5日夜、所在が分からない人の氏名を公表しました。
死者や行方不明者、所在がわからない人の氏名の公表については、国は一律の基準を設けておらず自治体が独自に判断しているのが現状です。

これについて棚橋大臣は「個人情報ではあるが、なんといっても命を守ることが最優先なので、適切に対応されたと理解している。防災の観点での氏名の公表については不断の見直しをしていく必要があり、どうしても氏名の公表が適切でないというケースへの対応も含めて将来の対策に生かしていきたい」と話しています。

武田総務相 熱海市に普通交付税繰り上げ交付

土石流による災害で被害が出ている静岡県熱海市を支援するため、武田総務大臣は、閣議のあとの記者会見で、9月に交付予定の普通交付税を繰り上げて交付する方針を示しました。

このなかで、武田総務大臣は、熱海市で発生した土石流災害への総務省消防庁の対応について「市の災害対策本部に7人の職員を派遣し、消防隊の活動調整などを行っている。緊急消防援助隊がおよそ600人の態勢で、防災ヘリやドローンによる情報収集、救出活動を行っている」と述べました。

一方、携帯電話がつながらなくなっていた一部の地域には、移動型の基地局を設置し、現在は支障が解消していることを明らかにしました。

そして、武田大臣は、市の財政を支援するため、9月に交付予定の普通交付税を繰り上げて交付することを今週にも決定するとしたうえで「人命最優先で救出救助にあたるとともに早期の復旧に向けて全力で取り組む」と述べました。

熱海 土石流 ドローンを使って上空から見た住宅被害の実態は

土石流の被害が出た静岡県熱海市の現場を、民間のベンチャー企業がドローンを使って上空から撮影し、およそ250枚の写真から1枚の画像データを作りました。

これを、ことし1月に現場周辺を撮影した衛星写真と比べると、住宅が建ち並ぶ地域を土石流が襲い、広い範囲に土砂が広がっていることがわかります。

また、国土地理院が2010年に作成した「基盤地図情報」から建物の輪郭のデータを抽出して重ね合わせて分析すると多くの建物が流されて元の場所から無くなってしまっていることがわかります。

NHKは、災害現場の調査を長年続けている静岡大学の牛山素行教授とともに建物が完全に破壊されたり、別の場所に流されたりした建物を数えたところ、写真などを分析する限り、少なくとも47か所に上っていました。

牛山教授は「被害を受けた建物はもっと多いが、全壊・流出した建物だけでも、1か所での土石流災害としては大きな被害だ。土石流は谷筋に沿って流れ下り、中でも低い部分にあった建物が大きな被害を受けた可能性が高い」と分析しています。

氏名公表めぐる現状は

災害時に安否がわからない人の氏名の公表をめぐっては、3年前の西日本豪雨の際、岡山県が発災から5日後、安否不明者43人の氏名や住所を公表したところ情報が寄せられ、半日で不明者がおよそ半数まで減りました。

国の防災基本計画では、死者や行方不明者は都道府県が数をまとめるとしていますが、安否不明者も含め氏名の公表に関して明確なルールはなく、自治体が独自に判断して対応しているのが現状です。

各地で大規模な災害が相次いでいることから、全国知事会はおととし、国に対して氏名の公表に関する統一の基準作りを要望しました。

しかし国は、「救出や救助に資する場合には積極的に公表すべき」とする一方、「災害時の対応は状況に応じて自治体が判断すべきもの」だとして基準は作っていません。

全国知事会も、都道府県知事の間で考え方に違いがあるとして一律の基準は作らず、先月、判断の参考にしてもらうためのガイドラインを策定しました。

ガイドラインでは、
▽個人情報の保護を重視し、家族や遺族の同意、それにDVや児童虐待などの被害者でないかを確認したうえで公表するケース。
▽氏名などの情報が得られたら、家族の同意などがなくても速やかに公表するケース。
それに▽被災状況などに応じて氏名を公表するかや公表の際の基準について知事が判断するという、3つのケースに分類しました。

そのうえで、いずれのケースでも、情報の収集方法や公表のタイミング、方法について市町村や警察と事前に調整を進めることが必要だとしています。

ガイドラインについて知事会は今後も調査や検討を続けるとしています。