衆院選 小選挙区割りふり
“5都県で増 10県で減”

今回の国勢調査の結果に基づいて導入される新しい計算方法で、総務省が衆議院選挙の各都道府県に割りふられる小選挙区の数を試算したところ、東京で25から30に5つ増えるなど5都県で増加する一方、10県で1つずつ減少する結果となりました。

衆院選 小選挙区「アダムズ方式」で試算

衆議院選挙の各都道府県に割りふられる定数289の小選挙区の数は、今回の国勢調査の結果をもとに現在の計算方法よりも人口に比例した配分となる「アダムズ方式」と呼ばれる方法が導入されることになっていて、総務省は25日に公表した国勢調査の速報値をもとに試算を行いました。

小選挙区 “5都県で増加 10県で減少”

それによりますと小選挙区の数が増加するのは5つの都と県で
▽東京で5つ
▽神奈川で2つ
▽埼玉・千葉・愛知で1つずつ増えます。

一方、小選挙区の数が減少するのは
▽宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県で
それぞれ1つ減ります。

この試算によると
▽最も多い東京の小選挙区の数は25から30にさらに増える一方
▽和歌山では3から2に減ることになります。

比例代表 “東京ブロックなど増 東北・北陸信越など減”

また、衆議院選挙の比例代表の定数176を全国の11ブロックに割りふった試算では
▽東京ブロックで2、南関東ブロックで1
定員が増える一方
▽東北・北陸信越・中国の3つのブロックでは
1つずつ定員が減ります。

秋までの次の衆院選は現行の数の割りふりで

こうした小選挙区の数と比例代表の各ブロックの定員は11月に公表される国勢調査の「確定値」をもとに正式に決まり、その後、小選挙区の区割りの見直しも行われることから、秋までに行われる次の衆議院選挙は現行の数の割りふりのままで行われます。

加藤官房長官「審議会の議論を見守る」

加藤官房長官は午後の記者会見で「速報値の公表を受け今後『衆議院議員選挙区画定審議会』で小選挙区の区割り改定に関して調査と審議が行われ、法律の規定によって選挙区間の人口格差を2倍未満とする改定案の作成や勧告がなされると承知している。政府としてはまずその議論を見守ることにしたい。それを踏まえ速やかに必要な法制上の措置を講ずることになると思う」と述べました。

大島衆院議長「継続的な議論を期待」

大島衆議院議長はコメントを発表し「今回の数値に基づき、今後、政府の衆議院議員選挙区画定審議会で区割り改定作業が開始されることになるが、まずは審議会における議論の推移を見守りたい。次期衆議院選挙のあと、各党・各会派において衆参両院の役割や機能を踏まえた選挙制度の在り方について、継続的に議論していくことを期待する」としています。

安倍前首相「議員数のバランス議論を」

自民党の安倍 前総理大臣は前橋市内で記者団に対し「東京都など関東地方に議員の数が非常に集中していくことになる。そのバランスをどう考えるかも含め、この5年10年のことではなく、その先も考えながら議論しなければならない」と述べました。

自民 逢沢選挙制度調査会長「一極集中の是正をさらに強化」

自民党の逢沢 選挙制度調査会長はNHKの取材に対し「1票の格差が2倍を超えない状況をしっかり確保していくことは、非常に大切な憲法上の要請だ。ただ、地方と都市部の議員の数の格差がさらに広がることは、国民も相当な危機意識を持つと思う。地方創生や一極集中の是正をさらに強化しないといけないし、党としてより配慮した努力が求められる」と述べました。

立民 安住国対委員長「やり方正しいか議論を」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「1票の格差を2倍以内に抑えていくことは、憲法の理念からもやらなければいけない。ただ、政治が本来、光をあてないといけない過疎地から議員を減らし、東京だけを増やせばいいということには、大変複雑で割り切れない思いだ。このやり方が果たして正しいかどうかは、これから議論したほうがいい」と述べました。

公明 井上政治改革本部長「投票価値の平等へ法改正を」

公明党の井上 政治改革本部長は「新たな議席配分が実現すれば『1票の格差』が2倍以内となり、投票価値の平等が確保される。速やかに区割り案の検討が行われることを期待するとともに、その後、公職選挙法など必要な法改正を進めていきたい」とするコメントを発表しました。

維新 馬場幹事長「根本的な選挙制度の見直しを」

日本維新の会の馬場幹事長はNHKの取材に対し「人口が集中する地域の議席が増える一方、人口が減る地域では議席が減っていくというのは制度自体のひずみで、根本的な選挙制度の見直しをしていく時期が来ている。地方で現状と同じ程度の議席を確保しつつ、国内全体の定数は減らすことを検討すべきだ」と述べました。

共産 穀田選対委員長「小選挙区制度に根本的な問題」

共産党の穀田選挙対策委員長はNHKの取材に対し「有権者にとってみれば、しょっちゅう選挙区が変わることになる。そもそも小選挙区制度そのものに根本的な問題があるのであって、この制度を変えることなしには1票の格差の問題は解決できない。選挙は民意をいかに正しく反映させるかが重要で、比例代表を軸にした制度に変える必要がある」と述べました。

国民 玉木代表「地方の衰退に強い懸念」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「地方の衰退を助長することにつながらないか、強い懸念を感じる。『1票の格差』の問題は非常に重要だが、国土を守っていくためにオールジャパンの観点も必要だ。このまま地方の議席を減らしていいのか。憲法も含めて、根本に立ち返った議論を始めるべきだ」と述べました。

定数減る和歌山県の反応「意見が国に届きにくくなる」

試算によりますと、和歌山県に割りふられる小選挙区の数は現在の3から1つ減って2になります。これについて和歌山市内で聞きました。

和歌山市の42歳の女性は「県内が寂れていく状況が進んでいて、もっとよくしてほしいのに、和歌山の意見が国に届きにくくなると残念だ」と話していました。

和歌山県有田市の21歳の男性は「自分たちの声を国に届けて、住みやすい町にしてくれる、県内の国会議員が減れば、人口減少などがさらに進むのではないかと思う」と話していました。

和歌山市の28歳の男性は「人数の多いほうが意見が通りやすいので、県内の議員定数が減ったら困る」と話していました。

「アダムズ方式」 導入の経緯は?

衆議院選挙で都道府県に小選挙区の数を割りふる方法としては「1人別枠方式」が採用されています。

「1人別枠方式」では人口の少ない県への配慮から各都道府県にまず1議席を割り当てたうえで、残りの議席を人口に応じて配分します。

しかし2011年に最高裁判所は小選挙区の1票の格差について「違憲状態」との判断を示し「1人別枠方式」を主な要因として指摘しました。

これを踏まえ2016年、衆議院議長の諮問を受けた有識者の調査会は格差の是正に向けて「アダムズ方式」と呼ばれる計算式に変更するなどとした答申をまとめました。

「アダムズ方式」は各都道府県の人口を一定の数値で割って議席の数を決める方法で、より人口に比例した配分ができるとされています。

国会では「アダムズ方式」をめぐり2010年と2020年のどちらの大規模な国勢調査に基づいて導入するかで各党の意見が折り合いませんでした。

そして答申から4か月後、2020年の国政調査に基づいて「アダムズ方式」を導入するとした自民・公明両党の法案が可決・成立し、25日の調査の速報値が公表されました。

「アダムズ方式」今後の流れは?

「アダムズ方式」による各都道府県の新たな小選挙区の数の割りふりは11月に公表される予定の国勢調査の「確定値」に基づいて正式に決まりますが「速報値」に基づく試算と同じ結果となる見通しです。

この試算をもとに内閣府に設置される「衆議院議員選挙区画定審議会」が各都道府県の小選挙区の区割りについて検討し、来年6月までに見直し案をまとめて総理大臣に勧告することになっています。

そして政府は審議会の勧告をもとに新たな区割りを定める法案を国会に提出し、法律が成立すれば1か月程度の周知期間を経て、その後の衆議院選挙から適用されます。

このように手続きに時間がかかるため、秋までに行われる次の衆議院選挙は現行の「1人別枠方式」による小選挙区で行われます。

一方「アダムズ方式」による小選挙区の数の割りふりは衆議院議員の定数の見直しがないかぎり、2030年に行われる次の大規模な国勢調査の結果が出るまで変わりません。

ただ、小選挙区の区割りは2025年に行われる次の簡易な国勢調査の結果に基づく計算で1票の格差が2倍以上となった場合、該当する都道府県の中で見直されることになります。

衆院「1票の格差」 最大で2.094倍

また、衆議院の289の小選挙区ごとのいわゆる「1票の格差」は最大で2.094倍で、格差が2倍以上となる選挙区は20選挙区に上っています。

総務省は25日に発表した国勢調査の速報に基づいて、衆議院と参議院の選挙区ごとの人口を試算しました。

それによりますと、衆議院の289の小選挙区で議員1人当たりの人口が最も多いのは
▽東京22区で57万3969人
次いで
▽東京9区の56万5788人
▽東京3区の56万2284人などとなっています。

逆に最も少ないのは
▽鳥取2区で27万4160人
次いで
▽石川3区の27万4976人
▽鳥取1区の27万5120人などとなっています。

この結果いわゆる「1票の格差」は最大で2.094倍となり、議員1人当たりの人口が最も少ない鳥取2区との格差が2倍以上となる選挙区は20選挙区に上っています。

参院「1票の格差」 最大で3.026倍

また、参議院では「合区」の2か所を含む45の選挙区で比較すると
▽議員1人当たりの人口が最も多い宮城県と
▽最も少ない福井県との間で
最大で3.026倍となっています。