大阪 兵庫 宮城にまん延
防止等重点措置 分科会了承

新型コロナウイルス対策で、感染症の専門家などでつくる分科会は「まん延防止等重点措置」を、来週5日から1か月間、大阪府、兵庫県、宮城県に適用する政府の方針を了承しました。

新型コロナウイルス対策をめぐり、感染症の専門家などから意見を聴く政府の「基本的対処方針分科会」が、西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣も出席して開かれました。

この中で、西村大臣は、緊急事態宣言が出されていなくても集中的な対策を可能にする「まん延防止等重点措置」について、来週5日から5月5日までの1か月間、大阪府、兵庫県、宮城県に適用する方針を諮りました。

また、対策が講じられる地域について、▼大阪府は大阪市、▼兵庫県は神戸市、西宮市、尼崎市、芦屋市、▼宮城県は仙台市とする方向で調整が行われていると説明しました。

そして、こうした地域では、
▼飲食店に対し、午後8時までの営業時間の短縮要請を行い、カラオケ設備の利用自粛を求めるほか、
▼イベントの開催は収容人数の上限を5000人までとし、
▼テレワークの推進などを行う考えを示しました。

また、営業時間の短縮要請に応じた協力金については、1日当たり4万円の水準を維持したうえで規模に応じた仕組みを検討する方針を示しました。

一方、田村大臣は、厚生労働省の職員が都内の飲食店で深夜まで送別会を開いていた問題について謝罪したうえで「患者が拡大してくる可能性があるので、すぐに入院できる病床やホテルなどの療養施設を速やかに、最大限、確保してもらうなど自治体の体制整備に協力したい」と述べました。

そして、議論が行われた結果、分科会は、こうした政府の方針を了承しました。

これを受けて、夕方には、衆参両院の議院運営委員会で事前の報告と質疑が行われ、政府は、1日午後6時半から開かれる対策本部で、3府県への重点措置の適用を正式に決定することにしています。

法律に基づいて「重点措置」が適用されるのは今回が初めてです。

官房長官 1か月間で諮問した理由は…

加藤官房長官は、午前の記者会見で「大阪府、兵庫県、宮城県は『ステージ3』相当の対策が必要な状況になっていると考えられることや、それぞれの特定地域で感染の拡大がみられ、医療提供体制のひっ迫が懸念されていること、大阪府と兵庫県は緊急事態宣言の解除以降、引き続き、時短要請を行っているにもかかわらず、感染者が増えており、さらなる対策の必要性が認められることなどを踏まえ、諮問した」と述べました。

また、来週5日から1か月間とする方針について「ゴールデンウィークが終了するまで、飲食店における感染防止対策などを徹底する必要があることや、変異株の発生状況を踏まえ、対象地域とその他の地域間の往来自粛を要請していくこと、1か月間で感染拡大の芽を徹底的にたたくといった考え方に立って、1か月間で諮問した」と述べました。

西村大臣「全国的かつ急速なまん延とならないよう全力挙げる」

西村経済再生担当大臣は、分科会のあと記者団に対し「大阪府、兵庫県、宮城県を対象に今月5日から5月5日まで実施することで了解をいただいた。それぞれの知事と緊密に連携しながら、集中的で効果的な対策を行って感染を抑え、全国的かつ急速なまん延とならないように全力を挙げていきたい」と述べました。

そのうえで「変異株について、特に感染力が強いことへの懸念が多くの方から示された。大阪、兵庫で変異株が広がっており、関西との移動にしっかり対応するようにと指摘をいただいたので、両知事とも連携しながら対応したい」と述べました。

また、西村大臣は、分科会では、山形県、愛媛県、それに沖縄県などの感染状況をめぐっても意見が交わされたと明らかにし、引き続き、状況を注視しながら、緊張感をもって対応する考えを示しました。

田村厚労相「感染拡大の兆候あれば対応」

田村厚生労働大臣は、記者団に対し「大阪や兵庫を中心に、変異株がかなりの割合になってきているため『拡大しないための対策をとらなければならない』という話もあった。東京も含めてほかのエリアも十分に注意していく必要があり感染拡大の兆候があれば、しっかりと対応したい」と述べました。

尾身理事長「変異株に強い対策を」

「基本的対処方針分科会」でも会長を務めることが決まった地域医療機能推進機構の尾身茂理事長は、会合のあと報道陣の取材に応じ、政府が示した「まん延防止等重点措置」の適用の方針について「宮城県、大阪府、兵庫県の3つの地域を重点措置の対象にし、期間は1か月とすることで合意した」と述べました。

そのうえで「市民に対して、単にいままでどおり行動変容してくださいということだけを要請しても、みんながコロナ疲れを感じているのが現状だ。これからも協力を得るためには国と自治体が文字どおり汗をかいて、飲食店の見回りや、モニタリング検査の実施など、要請をする以前に、環境作りをしっかりやってほしいというのが合意事項だ」と説明しました。

また、関西などで感染が広がる変異ウイルスについて「日本ではまだ明確なエビデンスはないが、特に関西で中心になっている、英国で最初に確認された変異株は、従来のものより感染力が高いことがさまざまな状況証拠から示唆されている。このことを一般の人たちにも知ってもらい、感染力の高さを前提にした強い対策を打つ必要がある」と指摘しました。

日本医師会 釜萢常任理事「感染源の多様化に対応」

日本医師会の釜萢敏常任理事は、記者団に対し「飲食店だけにフォーカスするのではなく、感染源の多様化に対応できるかが大事だ。変異株の状況は無視できず移動制限が強調されるべきで、実効性のある対策を講じないといけない。もっと早く『まん延防止等重点措置』を適用すべきだったし、今後も、対象の都道府県を増やしていく必要が出てくるだろう」と述べました。

宮城 村井知事「財政的な手当て お願いした」

「まん延防止等重点措置」の宮城県への適用について、村井知事は1日午前、記者団に対し「県から要請はしていないが、昨夜、西村大臣と話をした中で大阪よりも宮城はまん延している状況なので、大阪が適用の対象になるのであれば、宮城も議論に上げてほしいと伝えた。適用となれば、店舗によっては負担が大きくなるので、財政的な手当てについては強くお願いした。国からの対処方針を受けて具体的な制度設計をしていきたい。対象地域については、仙台市以外でも感染者が増えているので、県独自の対応も考えていきたい」と述べました。

仙台市長 国に財政支援求める考え

政府は緊急事態宣言が出されていなくても集中的な対策を可能にする「まん延防止等重点措置」を宮城県にも適用する方針を決め、対策を講じられる地域については仙台市とする方向で調整しています。

これについて仙台市の郡市長は1日の記者会見で「感染状況は厳しく、医療現場の険しさも一層深まっていて、国の方針に従うのは当然だ」と述べました。

そのうえで、措置の適用によって、現在、酒類を提供する飲食店などへの夜の営業時間を午後9時までとしている短縮要請が、午後8時までに繰り上げられることについて「さらに厳しくなる店舗への協力金の上乗せも必要になってくるので、国にお願いをしなければならない」と述べ、国に対し必要な財政支援を求める考えを示しました。

また、郡市長は今月8日と9日に行われる市内の小中学校の入学式について、来賓など出席者を減らしたり、時間を短縮したりするなど感染防止対策を行ったうえで、予定どおり行う方針も明らかにしました。

自民 二階幹事長 「緊張感を持って対応したい」

自民党の二階幹事長は、記者団に対し「まん延を防止することは、今なすべきことの中で最も重要だ。政治の要諦は、国民の命と暮らしを守ることであり、まさにそのことを実行していかなければならない。重要な時期が差し迫っているという緊張感を持って対応したい」と述べました。

自民 伊吹元衆院議長「知事の仕事のやり方も総括を」

自民党の伊吹元衆議院議長は、派閥の会合で「大阪では独自色を出そうとして、知事や市長が大変頑張っているのはいいが、『緊急事態宣言を解除してほしい』と言ったのは知事サイドだ。まん延防止等重点措置を決定するのは国の責任だが、要請するのは都道府県であり、責任の所在が非常に不明確になっている。知事の仕事のやり方もしっかりと総括しないといけないのではないか」と述べました。

立民 安住国対委員長「緊急事態宣言発出の事態なのでは」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「大阪、兵庫、宮城の感染者数や、その広がりの速度を考えると『まん延防止等重点措置』ではなく、緊急事態宣言を発出するような事態なのではないか。政府には、なぜ重点措置なのかの説明を求めたい」と述べました。

また、緊急事態宣言が解除された地域で感染が再拡大していることについて「宣言の解除が早く、菅内閣の政策判断は間違っていたのではないか。もっと先手先手を打った対応を望みたい」と指摘しました。

公明 山口代表「感染拡大防止に全力を」

公明党の山口代表は、党の中央幹事会で「昨夜、菅総理大臣から電話があり『特に兵庫県と大阪府では、変異株も注意する必要がある』と述べていた。重点措置は、緊急事態宣言と違って、もう少し小回りのきくポイントを絞った措置がとられる。全国的に予断を許さない傾向が見られるので、今回の実例をもとに、感染の拡大をいかに防いでいくかということに全力を挙げていきたい」と述べました。