原発事故いわき市住民訴訟
国の責任認める 福島地裁

東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐり、避難指示が出なかった福島県いわき市の住民1400人余りが訴えた裁判で、福島地方裁判所いわき支部は国の責任を認め、国と東京電力に総額2億円余りの賠償を命じました。

福島県いわき市の住民1400人余りは、事故によって平穏な生活を奪われたとして、国と東京電力に合わせて26億円余りの賠償を求めました。

原告の弁護団によりますと、原発事故の集団訴訟で避難指示が出なかった地域の住民だけが原告となっているのは、この裁判だけで、国と東京電力が巨大な津波を事前に予測できたかや、国の審査会が指針で示している慰謝料の金額が妥当かどうかなどが争点となりました。

26日の判決で福島地方裁判所いわき支部の名島亨卓裁判長は「国は原発事故の2年前ごろまでには大津波が到来する可能性があるという試算を原発の安全評価に取り込むべきだった。安全対策を講じていれば事故を回避できた可能性があり、国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ」と指摘し、東京電力とともに国の責任を認めました。

そのうえで「いわき市の住民は放射線被ばくによる健康被害に不安を抱え、事実上、避難を強いられる状況にあった」として、原告のほぼ全員に対し、国と東京電力に総額2億円余りの賠償を命じました。

原告の弁護団によりますと、各地で起こされている同様の集団訴訟で1審判決が言い渡された15件のうち、国の責任を認めたのは今回を含めた8件で、裁判所の判断が分かれています。

原告側「さらなる賠償認められる可能性ある判決」

原告側の広田次男弁護士は「いわき市の住民の被害が認められた点でいい判決だったと言える。原発事故の被害は福島全体に及んでいて、避難指示が出ていない地域でも、さらなる賠償が認められる可能性がある判決だ」と話していました。

被告側「今後の対応を検討」

26日の判決について、原子力規制庁は「国の主張が一部を除いて認められなかったものと考えている。関係機関と協議し、今後の対応を検討する」としています。

また、東京電力は「今後、判決内容を精査し対応を検討する」としています。