宣言期限まで5日 新規感染
“減少ペース鈍化”なぜ?

東京都内では2日、新型コロナウイルスへの感染が新たに232人確認されました。いま、都内では新規感染者の減少が鈍化しています。今月7日には首都圏1都3県での「緊急事態宣言」が期限を迎える中、都内ではなぜ減少が鈍化しているのか。緊急事態宣言の解除はどうなるのか。最新の情報をまとめました。

なぜ鈍化? 保健所では

東京 北区ではことし1月に新規感染者が大幅に増加し合わせて944人にのぼりましたが、その後、減少に転じて先月は263人と3分の1以下に減りました。

しかし、先月中旬以降は下げ止まりとなっています。

先月12日までの1週間は新規感染者が43人でしたが、その翌週は62人と増加に転じています。

この要因について北区保健所は、
▽介護施設や医療機関で高齢者の感染が相次いでいることや、
▽会食など飲食に関連した感染が続いていることなどを指摘しています。

「下げ止まり感が強い」

北区保健所・前田秀雄所長
「感染者数の下げ止まり感が強い。このままでは感染者数が大きく減っていかない可能性があるので、宣言を解除するしないにかかわらず対策を強化していくべきだ」

都内全体の状況は

続いて、東京都内全体の状況を詳しく見てみます。

都内では先月1か月間で合わせて1万997人の感染が確認されました。

このうち、感染経路がわかっている人の割合は、
▽最も多かった家庭内が44.7%、
▽施設内が37.1%、
▽職場内が6.7%、
▽会食が2.9%でした。

要因1. 「高齢者施設」などで集団感染

施設内が家庭内に次いで2番目に高くなっていますが、都内では「高齢者施設」と「医療機関」で集団感染の発生が相次いでいます。

東京都の分析によりますと、都内で起きた3人以上の集団感染は先月は21日までで58件で、施設別でみると、
▽最も多いのは「高齢者施設」が32件で55%、
次いで
▽「医療機関」が15件で26%、
▽「企業」が5件で9%でした。

一方、1月は
▽「高齢者施設」が最も多く63件で全体に占める割合は45%、
次いで
▽「医療機関」が38件で27%、
▽「学校・教育施設」が15件で11%でした。

先月は「高齢者施設」と「医療機関」を合わせると集団感染全体の81%を占め、この割合は1月の73%より上昇しています。

都によりますと、高齢者施設などでの感染は、
▽職員をきっかけに広がったケースや、
▽数人の感染が分かって入所者に検査を行うとほぼ全員が感染していたケースなどがあったということです。

要因2. 若い世代 依然多く

そして、20代や30代を中心に若い世代の感染が依然、多くなっています。

先月、感染が確認された人を年代別で見ると、
▽20代が2091人で全体の19%を占めて最も多く、
次いで、
▽30代が1787人で16.2%、
▽40代が1553人で14.1%となっています。

全体から見た割合は小さいものの、会食や職場で感染するケースは若い世代ほど目立っています。

このうち会食では全体の159人のうち、
▽20代が56人で35.2%、
▽30代が36人で22.6%と、
20代と30代でおよそ6割を占めています。

専門家「さらに感染者数 減らす必要ある」

東京医科大学・濱田篤郎教授(感染症に詳しい)
「感染者の数は年末年始の時期に比べ減少したとは言え、最近は大きな減少が見られず、千葉県など逆にリバウンドの兆しが見られる地域も出てきている。また、現在の東京都の1日300人前後という感染者数は去年夏の第2波のピークとあまり変わらない水準だ。現状よりもさらに感染者数を減らす必要がある」
「今のままの状態で首都圏で緊急事態宣言が解除され、さらに人の流れが増加すれば早い段階で再び感染者数が大きく増加してしまう懸念もある。宣言の解除は、もう少し感染者数が減った状態で行うべきではないか。感染者をさらに減らすためにも、これからの人事異動や卒業のシーズンでも会食を避けてもらうことが必要だ」

首都圏1都3県感染状況 “宣言”解除は

こうした中、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言は5日後の今月7日・日曜日に期限を迎えます。東京都の小池知事らは感染者数などが十分に減少していないなどとして、感染状況のさらなる改善が見られない場合の解除に慎重な姿勢を示しています。

2日の1都3県の感染確認の発表は、
▽東京都が232人、
▽埼玉県が102人、
▽1日に東京都を上回り全国で最も多かった千葉県は87人、
▽神奈川県が84人でした。

“宣言”解除 知事の反応

東京都 小池知事 “宣言解除できない可能性も”

東京都は感染確認の7日間平均を前の週の7割以下に抑えることを目安にしていますが、1日時点で12日連続でこの目安を超えています。

小池知事は都庁で記者団に対し「日曜日にいたっては下げ止まりどころか1週間前より増えている。7日間平均を前の週の7割以下に減らすことをずっと目安にしてきたが、だいたい8割、9割に近い」と述べました。

そのうえで「もう一段、対策のギアを上げないと間に合わない事態が生じているのではないかという分析がある。1都3県で連携しながら、どういう方法がいいかまとめていくことが必要だ」と述べ、感染状況などのさらなる改善が見られなければ緊急事態宣言を解除できない可能性もあるとする考えを示唆しました。

千葉県 森田知事「あす増なら7日解除は非常に難しい」

千葉県の森田知事は記者団に対し「感染者数がでこぼこしている状況だ。あす、また感染者の数が増えれば7日の解除は非常に難しくなると思う」と述べました。

そして、首都圏の1都3県で足並みをそろえる必要があるとしたうえで「今の状況が続けば国として決断をしていただきたい」と述べて、感染状況によっては緊急事態宣言の延長を国に求めていく考えを示しました。

埼玉県 大野知事「7日まで全力挙げる」

埼玉県の大野知事は県内の新型コロナウイルスの感染状況について「病床使用率が40%台と極めて高い状態だ。今後、ワクチンの接種も担う医療機関にさらなる負担はかけられない」と述べ、緊急事態宣言の期限を前に危機感を示しました。

そのうえで「新規感染者の数をここまで下げることができたのは皆さんのおかげで、これまでの努力を無にしないためにも7日までに目いっぱい感染者数を下げていくことに全力を挙げたい」と述べました。

また、週内にも1都3県で今後の対応について協議するとしたうえで「1都3県でワンボイスでどういう方向で国に要請していくか調整したい」と述べました。

“宣言”解除 飲食店「解除方針や詳しい情報を」

緊急事態宣言を受けて休業を続けている都内の居酒屋からは、先行きが見通せないことへの不安の声が聞かれました。

東京 新宿区の居酒屋は緊急事態宣言が出されたことを受けて、ことし1月から臨時休業を続けていて、今月7日に解除されれば翌8日にも営業を再開したいと考えています。

ただ、宣言が解除されたあと営業時間の短縮が要請されるのかや、協力金がどうなるのかといった情報がないことから、いつ営業を再開するのかを決められないといいます。

宣言の期限を5日後に控えた2日の段階でも食材を仕入れられず冷蔵庫は空っぽのままで、アルバイトのスタッフにも、いつから働いてもらうのか明確に伝えられていません。

そのうえ、千葉県や埼玉県の知事が解除に慎重な姿勢を示し、先行きが見通せないことに不安を感じています。

「和創作 空 西新宿」門倉和幸店長
「緊急事態宣言が予定どおり解除されるのかや時短要請などについての情報が示されず、食材の仕入れやスタッフの確保など営業再開に向けた準備が全く進められないのが、いちばん困っていることです。国や東京都には、なるべく早く解除の方針や詳しい情報を示してほしい」

菅首相 “最終的にはみずから判断”

緊急事態宣言の解除に東京都の小池知事らが慎重な姿勢を示していることに関連し、菅総理大臣は感染状況などの推移を見極めたうえで、専門家の意見も踏まえて最終的にはみずからが判断する考えを強調しました。

菅総理大臣は2日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「まずしっかり数字を見て専門家をはじめ関係者に相談させていただき、最終的には私自身が判断したい。とにかく今は、感染拡大防止に全力を尽くすべきだと思っている」と述べました。

また、宣言の解除や延長は1都3県を一体として判断するのかと問われたのに対し「1都3県はいろいろな意味で関連するので、そういうことになるだろう」と述べました。

西村経済再生相 “諮問委員会開き判断”

西村経済再生担当大臣は閣議のあと記者団に対し、首都圏の1都3県で続く緊急事態宣言について「日々、基準となる目安の指標を精査している。1都3県とも綿密に連携し宣言を長引かせないという思いは共有している」と述べました。

そのうえで、宣言を解除するかどうかについて「できるだけギリギリまでデータを見たいが、あまり直前になってもいけないので適切なタイミングで判断したい」と述べ、今月7日の期限を前に今週、適切なタイミングで諮問委員会を開き判断する考えを示しました。

また、西村大臣は「解除された地域も、飲食の機会には引き続き最大限の注意を払っていただきたい。昔のように食事をすれば感染は確実に増え、去年12月と同じようなことが起きる」と述べ、会食する時は感染防止策がとられた店を選び、会話の際はマスクを着用するなど対策の徹底を呼びかけました。

経済同友会 櫻田代表幹事 “慎重に判断すべき”

経済同友会の櫻田代表幹事は2日の定例会見で、今月7日に首都圏の1都3県への緊急事態宣言の期限が控えていることについて「経済と命の両方を守らなければならない中で難しい判断だ。ただ、日本経済を見ると企業ごとにまだらもようではあるものの、業績には底打ち感も出てきている」と述べました。

そのうえで、宣言解除のタイミングについて「慌てて一気かせいに門を開けなくても経済は少しずつ回復していくのではないか。少なくとも経済が心配なので直ちに門を開けた方がよいということではない」と述べ、政府は1都3県の知事の意向なども踏まえて、慎重に判断すべきだという考えを示しました。