コロナ回復患者を一般病床へ
入院待機ゼロに 墨田区

東京 墨田区は新型コロナウイルスの患者を受け入れる病院の病床を確保するため、地域の病院と連携して新型コロナから回復した患者の一般病床での受け入れを進めています。取り組み開始から1か月となり、区の保健所では開始以降、入院の待機者がゼロの状態が続き「一定の効果が出ている」としています。

東京 墨田区では区内で唯一、コロナの重症患者を受け入れる「都立墨東病院」の病床がひっ迫し患者の受け入れができなくなる事態を防ごうと、ことし1月から区内の医療機関と連携し、国の退院基準をみたしたうえで引き続きリハビリなどの入院治療が必要な患者について、一般病床に転院させる取り組みを始めました。

墨田区は保健所と医師会が連携し、地域の医療機関に対して国の退院基準を満たした患者は感染の可能性が極めて低いことを周知したうえで、回復患者の転院を受け入れる医療機関には1000万円の補助金を支払うことにしました。

そして、患者の転院を依頼された場合は原則すべてを受け入れるという墨田区独自のルールで運用を始めました。

保健所によりますと、取り組みを始めた1月25日から2月25日までに協力する7つの医療機関でおよそ40人の患者の転院を受け入れたということです。

そして、多いときには30人ほどいた入院の待機者が、取り組みを始めて以降ゼロの状態が続いているということです。

取り組みを中心となって進める墨田区保健所の西塚至所長は「コロナ患者が減少しているということもあるが、連携により患者の受け入れがスムーズになって入院を待機している人の健康観察などが減り、保健所の業務負担の軽減にもつながっている」と話しています。

病院の受け止めは

墨田区が中心となって始めた「墨田区モデル」について、区内で唯一、感染症の指定医療機関として重症患者などを受け入れている「都立墨東病院」は、取り組みが始まる前はコロナの回復患者の転院を受け入れてくれる病院を探すことなどに時間がかかり、新たな患者の受け入れの要請があっても対応できない状況が続いていたといいます。

しかし「墨田区モデル」が始まったことで、転院調整にかかっていた時間を大幅に削減するとともに、新規の患者への対応をスムーズに進められるようになったといいます。

墨東病院感染症科の中村ふくみ部長は「これまでは転院の相談をしてもコロナの回復患者というだけで相談にさえ乗ってもらえないケースもあったが、取り組みが始まってからはスムーズに調整が進み転院までの日数も短くなった。その分、新たなコロナの重症や中等症の患者を受け入れて診療をスムーズに進められるようになり、効果があったと思います」と評価していました。

一方、取り組みに協力し、この1か月間で6人の回復患者を受け入れている墨田中央病院の小嶋邦昭院長は「回復患者は感染力がほとんどないとは言え、万が一、患者や職員が感染するようなことがあってはならないので、個室を用意するなどの工夫をしたうえで受け入れを始めた。院内では毎週、会議を開き議論や検討を続けてきたので、取り組みの開始以降、不安の声は聞かれていない。これからも何か課題があった場合にはひとつひとつ解決していきたい」と話していました。

そのうえで「回復患者の受け入れなどできることをやっていくことで、コロナ病床のある病院の負担軽減につながるのであれば大きな意味があると思う」と話していました。

支援の広がりは

新型コロナウイルスから回復したあと、リハビリなどで引き続き入院が必要な患者を受け入れる医療機関に対し、国は診療報酬を引き上げるなどして転院の支援を進めています。

また、東京都も症状が落ち着いた回復患者の転院を受け入れた医療機関には1人につき18万円の支援金を支払うことにしています。

さらに、回復患者の情報を病院間で共有できる転院支援のシステムを活用したり、転院の調整がうまく進まないケースは都が病院に働きかけを行ったりすることにしています。

一方、東京 杉並区では転院を受け入れた病院に補助金を出したうえで、区内の民間病院と転院先の確保を進めるための協定も締結しているほか、東京 八王子市では市が協力金を用意したうえで、医療機関や介護施設とネットワークを構築し、回復した患者の転院を進めています。