ペットの多頭飼育崩壊問題
環境省が自治体に対策指針案

ペットが増えすぎ、適正な飼育ができなくなる「多頭飼育崩壊」と呼ばれる問題に対応するため、環境省は自治体などが対策を講じる際のガイドライン案を取りまとめ、地域と連携し、リスクの高い飼い主を早めに見つけることなどを求めています。

犬や猫を無計画に繁殖し、悪臭や騒音によって周囲とトラブルになったり、動物虐待になったりする問題は「多頭飼育崩壊」と呼ばれ、環境省の調べでは、全国の都道府県と政令指定都市、それに中核市には、平成30年度、多頭飼育をめぐる苦情が合わせて2000件余り寄せられています。

これに対応するため環境省は3日開かれた専門家会議で自治体や関係機関に向けた対策のガイドライン案を示しました。

この中では、事態が深刻化する前に問題を察知して対応することが重要だとしていて、発生を未然に防ぐため近隣の住民や民生委員などと連携し、チェックシートを活用するなどしてリスクの高い飼い主を早めに見つけ、アドバイスや指導につなげることを求めています。

そして、問題が見つかった場合は、飼い主と相談し、ペットの不妊手術や譲渡を進めることや、必要な場合は、飼い主を社会福祉の生活支援につなぐことが必要だとしているほか、解決したあとも、適正に飼育できているか地域での見守りを続けるなど、再発防止に努めるよう求めています。

環境省は今月中にもガイドラインを完成させ、自治体や関係機関に周知したいとしています。

「早めの対処が重要」動物愛護団体

「多頭飼育崩壊」の問題に対応している動物愛護団体も事態が深刻化する前に早めに対処することの重要性を指摘しています。

兵庫県の公益財団法人「どうぶつ基金」は全国の自治体から依頼を受け、「多頭飼育崩壊」に陥った飼い主のもとにいたペットを保護するなどの活動を行っています。

去年11月には、島根県で地元の動物愛護団体と協力して住宅で飼われていた164匹の犬を保護しました。

飼い主は30年ほど前、捨て犬を拾って飼育を始めましたが、繁殖を繰り返してどんどん数が増え、不妊手術の費用が賄えなくなったと話しているということです。

また去年7月には、北海道でおよそ40匹の猫を保護しました。

飼い主は10年ほど前に2匹の猫を飼い始めましたが、不妊手術は行わず、生まれた子猫の引き取り先を見つけられないうちに、数が増えてしまったと話しているということです。

現場からは、保護した猫のほかに、死んだ子猫が9匹見つかったということです。

「どうぶつ基金」の佐上邦久理事長は「犬や猫は繁殖能力が高く、数が少ないうちに不妊手術をするなど早めに対策をとることが最も重要だ」としたうえで「生活の困窮が問題の背景にあるケースも多く新型コロナウイルスの感染拡大で経済状況が悪化する中、『多頭飼育崩壊』は増えるおそれがある。地域での見守りが必要だ」と指摘しています。