中国で「海警法」成立

中国の周辺海域で活動する中国海警局の権限などを定めた法律が成立しました。法律の草案では、違法に領海などに入った外国の船舶が停船命令などに従わない場合、武器の使用を認めるとしていて、今後の影響が懸念されます。

中国の国営メディアは、北京で開かれていた全人代=全国人民代表大会の常務委員会で22日、海上警備にあたる中国海警局の任務や権限を定めた「海警法」が可決・成立したと伝えました。

法律の全文は、まだ発表されていませんが、事前の草案では中国が管轄する海域に違法に入った外国の船舶を強制的に排除したり、差し押さえたりする権限を盛り込んだうえで、停船命令や立ち入り検査に従わない場合は武器の使用を認めるなどとしています。

また、中国が管轄する海域や島などに外国の組織や個人が設けた建造物などについても、強制的に取り壊せるとしています。

この法律は、2月1日から施行されるということです。

沖縄県の尖閣諸島周辺では、中国海警局の船が連日のように航行を続けていて、去年、領海に侵入し続けた時間は過去最長となり、日本の漁船を追尾するケースもありました。

中国はここ数年、海警局を軍の指揮下にある武装警察に編入したり、船の大型化を進めたりして体制の強化を図っていて、今回の法律の制定で今後の影響が懸念されます。

茂木外相「わが国の懸念 先方に伝達」

茂木外務大臣は記者会見で「沖縄県の尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も疑いのない、わが国の固有の領土であり、現にわが国は、これを有効に支配している。尖閣諸島の周辺海域において、中国公船による接続水域の航行や領海侵入が継続していることは極めて遺憾で、外交ルートを通じて繰り返し、厳重に抗議している」と述べました。

そのうえで「中国海警局をめぐる動向については高い関心を持って注視しており、海警法案に対するわが国の懸念、関心についても先方に伝達している」と述べました。

中国「海洋政策は変わらず 意見の違い適切に処理」

中国外務省の華春瑩報道官は、22日の記者会見で「海警法」について、中国海警局の役割や権限などを明確にするものだとしたうえで「中国の海洋政策は変わっていない。われわれは引き続き、関係国とともに対話と協議を通じて意見の違いを適切に処理し、地域の平和と安定を守る」と説明しました。

一方、沖縄県の尖閣諸島についても言及し「中国固有の領土であり、領土の主権と海洋権益を守る」などと独自の主張を展開しました。

専門家「関係国の行動抑止を意図」

中国の安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の飯田将史米欧ロシア研究室長は、「海警法」について「中国海警局が任務の上で武器を使用できる権限を明確にすることで、係争がある国々の行動を抑止しようという意図があるとみられる。中国は海洋権益を拡大しようと一歩一歩、行動していて今回の法律の制定もその一環だ」と指摘しています。

そのうえで「法律ができたからといって武器の使用に積極的になるかどうかわからないが、中国が南シナ海や東シナ海で海洋権益の拡大を図っていけば関係国との摩擦が強まり、緊張した状況が起きた場合に、海警局がもてる能力を最大限発揮するという可能性は否定できない」と述べ日本としても警戒が必要だという考えを示しました。