入院勧告応じない患者に
罰則へ 委員から慎重意見も

新型コロナウイルスの患者が、自治体からの宿泊療養などの要請に応じないケースが出ていることから、厚生労働省は、入院を勧告した上で応じなかった患者への罰則を設ける方針を15日専門家会議に示しました。
会議ではおおむね了承された一方、委員からは慎重な適用を求める意見が相次ぎました。

自治体は新型コロナウイルスの患者のうち軽症の人などには宿泊施設や自宅で療養するよう要請していますが、法的な位置づけがないため、拒否されるケースが出ています。

厚生労働省は、15日開いた専門家会議で、感染症法を改正する方針を示しました。

15日示された案では、療養の要請に応じない患者には自己負担で入院するよう勧告し、拒否した場合は罰則を科すことができるようにするとしています。

また、保健所の調査を拒否したり、虚偽の申告を行ったりした場合の罰則も新たに設けるということです。

罰則の具体的な内容は示されませんでしたが、
▽入院勧告に反した場合は「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」、
▽保健所の調査を拒否した場合などは「50万円以下の罰金」を科すことが検討されています。

会議では罰則を設けることについておおむね了承が得られましたが、委員からは「刑事罰は重すぎるのではないか」とか、「罰則を設けても誰がどう判断するのか難しく、実効性があるか分からない」、「患者との信頼関係にひびが入らないようにしてほしい」などと慎重な適用を求める意見が相次ぎました。

また、委員の1人からは、罰則を導入するからには、実際に療養を拒否したケースが何件あったかや、罰則がなければ感染拡大を止められないという科学的根拠を示すべきだという意見も出されました。

これに対し、厚生労働省は「どれくらいあったかは把握できていないが、いろいろな保健所から報告を受けている」としたうえで、患者に協力を促すための手段の一つとして罰則の導入への理解を求めました。

厚生労働省は15日の議論を踏まえて、今月18日に召集される通常国会に感染症法の改正案を提出する方針です。

田村厚労相「早期の成立を」

田村厚生労働大臣は、記者会見で「国民の権利を制限するような内容を検討している。国民的な意見も『厳しい対応をすべきだ』という意見がある一方で『あまり厳しい対応をすべきではない』という意見もあり、非常に分かれている。感染症に対応するための法の権能や根拠がないことには対応できず、十分に強制力がないことから、検討の課題にあがっている。政府としては、いろんな課題や論点を示したので、与野党で話してもらい、早く成立をお願いしたい。いま緊急事態宣言中でもあり、法律が成立し施行されれば、すぐにでも必要な部分もある」と述べました。

加藤官房長官「権利制限と利益のバランスに留意」

加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「感染症法の改正については、患者の権利制限と社会経済全体の利益のバランスに留意しつつ、感染症法の規定の実効性をより高めるための方策を検討することが必要と考えている。厚生労働省の審議会での議論や与野党の意見、さまざまな団体などの意見も踏まえながら、通常国会の早期に改正案が提出されるものと承知している」と述べました。

また「専門家などから指摘を受け、患者への差別がないように政府からも積極的に広報している。今後の改正にあたっても、その点に留意して検討する必要ある」と述べました。