「不育症」検査費用助成の
自治体に国が補助へ 報告書

妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」の支援策を検討する、政府の作業チームは、検査にかかる費用を助成している自治体に対し、国が補助する仕組みを新たに設けるなどとする報告書をまとめました。

不妊治療の保険適用の拡大が検討される中、政府は、妊娠するものの胎児が育たずに流産や死産を繰り返す「不育症」の治療に対しても支援を求める声があることから、支援の在り方を検討しており、30日開いた作業チームの会合で、報告書をまとめました。

それによりますと、保険が適用されていない検査費用を助成している自治体に対して、国が補助する仕組みを新たに設けるとともに、有効性や安全性が確立した治療については、順次、保険適用を目指すとしています。

また、都道府県などが設置している「不妊専門相談センター」の機能を充実させ、カウンセラーの育成やマニュアルの整備を図るとしています。

座長を務める坂井官房副長官は「子どもを産み、育てたいという切実な望みがかなえられるよう、支援の充実にしっかり取り組みたい」と述べました。

政府は、この報告書を踏まえて、来年度予算案に、必要な経費を盛り込むことにしています。

支援団体「自治体の助成が進んでほしい」

厚生労働省の調査によりますと、全国の都道府県、政令指定都市、それに中核市の中で、不育症の検査や治療の費用を助成する制度を設けているのはおよそ3割にとどまっています。

政府の作業チームのヒアリングにも参加した不育症の当事者で作る支援団体「不育症そだってねっと」の工藤智子代表は、今回まとまった報告書について「支援策では国による全国一律の助成は実現しなかったため、助成制度のない自治体に住む人はこれからも経済的負担が続くことになる。これを機に自治体の助成が進んでほしい。ただ、今回政府が動いてくれたことで少し前進したと思うし、当事者の励みにもなったのではないか」と指摘しました。

そのうえで「政府に対して不育症の専門医の育成についても求めてきたが、盛り込まれなかった。不育症の専門医は全国的にも少なく、不育症の知識を持った医師による診療を受けられずに流産を繰り返す人もいる。希望する人が赤ちゃんを産めるような医療や社会になっていってほしい」と述べました。