小中学校の休み
短縮の動き広がる

新型コロナウイルスの影響で、都内の小中学校では長期間の休校に伴う学習の遅れをいかに取り戻すかが課題となっています。東京23区ではすべての区が夏休みを短縮して、授業時間を確保することになりました。

東京23区では、ことし3月から5月まで公立の小中学校が休校したうえ、6月も分散登校となったため、授業の遅れをどう取り戻すかが課題となっています。

NHKの取材で、東京23区ではすべての区で公立小中学校の夏休みを短縮し、授業時間を確保することが分かりました。

具体的な夏休みの日程を短い順にみてみると、
▽大田区と豊島区、荒川区、それに足立区が8月8日から23日までの16日間と最も短く、次いで
▽新宿区と江東区、葛飾区、それに江戸川区が8月8日から24日までの17日間となっています。

続いて、
▽千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、品川区、杉並区、北区、練馬区が8月1日から23日までの23日間。
▽港区と目黒区と板橋区が8月1日から24日まで、
▽中野区が8月8日から31日までの24日間。
▽渋谷区が8月1日から30日までの30日間。
そして、
▽世田谷区が8月1日から31日までの31日間と、23区で最も長くなっています。

一方、当初予定していた夏休みの期間をどれだけ短くしたかでみると、大田区と荒川区、それに足立区が42日間を16日間と26日短縮したほか、葛飾区が25日、中央区と新宿区、豊島区が21日短くしています。

また、夏休みの短縮以外に、およそ半数の区が土曜日の授業の回数を増やすほか、これまで休みとしていた10月1日の「都民の日」を授業としたり、複数の学校から子どもたちが参加する区の運動会や区の陸上大会などの行事をなくしたりするところもあります。

文部科学省では、こうした夏休みの短縮や土曜日の午前授業の実施などで学習の遅れを取り戻すよう求める一方、小学6年生と中学3年生以外は、一部の内容を来年度以降に移してもよいとしていますが、東京23区の多くの区では、これらの方法で授業時間を確保して、年度内に遅れを解消できるようにする方針です。

※注 夏休みの期間や日数は最後の登校日の翌日から数えています。

夏休み30日間 渋谷区では

東京23区で2番目に長い30日間の夏休みを確保する渋谷区は、平成29年からすべての小中学生にタブレット端末を1人1台貸与しています。

ことし3月から続いた休校中もタブレットを通じて課題を提出してもらったり、双方向の授業を行ったりするなどオンラインでの学習を進めてきました。

このため、土曜日の授業回数を増やすなどすれば、夏休みを大幅に短縮しなくても十分、学習内容を子どもたちに定着させられるとしています。

このうち、区内でも積極的にオンライン授業に取り組んできた笹塚中学校では、分散登校を終えた現在も授業でオンラインを活用しています。

2日も密集を避けるため、1年生の数学は1クラスを2つの教室に分け、片方のクラスで教壇に立つ教諭の様子を別の教室の子どもたちが手元のタブレットで見たり、音声をつないで問題に答えたりしていました。

1年生は、休校が続いていた間ほぼ登校せずにこうしたオンライン授業を自宅で受けていたということで、女子生徒の1人は「最初は少し難しかったけどだんだん慣れました。今後、何かあっても大丈夫だと思う」と話していました。

駒崎彰一校長は「休校は5月いっぱい続いたが、授業の遅れは2週間程度にとどまっている。学びを止めず、質を高められるよう今後もオンラインでの授業をうまく活用したい」と話しています。

横浜・川崎・相模原 夏休み2~3週間程度短縮

3か月にわたり休校が続いた神奈川県内の3つの政令指定都市では、小中学校の夏休みの期間を例年より2週間から3週間程度短縮して、授業時間を確保することにしています。

横浜市では小中学校の夏休み期間を7月21日から8月26日までとしていましたが、3週間短縮して8月1日から16日までの16日間にする方向で検討しています。

授業時間を確保するため、教育委員会は学校に対し、行事の中止や簡素化なども検討するよう通知しているほか、冬休みや春休みの期間も短縮する方向で検討しているということです。

川崎市は、小中学校の夏休みの期間を7月20日ごろから8月下旬までとしていましたが、8月1日から16日までの16日間に短縮する予定です。

市の教育委員会は、学習の状況に応じて夏休みの間も補習授業の実施を検討するよう学校に推奨しています。

相模原市は、小中学校の夏休みの期間を7月21日から8月24日としていましたが、ことしは小学校は8月1日から23日の23日間に、中学校は8月8日から23日の16日間に、それぞれ短縮することにしています。

市では授業時間の確保のため行事を取りやめたり、中学校の修学旅行を中止したりして対応するということです。

さいたま市も夏休み短縮や行事中止

臨時休校による授業の遅れを受けて、さいたま市教育委員会は、夏休みの期間を短縮したり、学校行事の一部を中止にしたりして授業時間を確保することになりました。

さいたま市ではすべての公立学校を3月2日から臨時休校にしていましたが、緊急事態宣言の解除を受け、先月1日から段階的に再開しました。

この間の授業の遅れを取り戻すため、市の教育委員会は、今年度の夏休みは来月1日から16日までと、当初の予定から22日短縮することを決めました。

また、子どもたちが密集する環境を作らないよう、例年行っている小学5年生の林間学校や中学2年生のスキー教室も今年度は中止とし、授業時間に充てることにしています。

このほか、今年度中にそれぞれの学校で土曜日に8日間授業を行うほか、運動会や修学旅行などの学校行事の準備時間を短くすることも計画しています。

千葉県 夏休み11日間の自治体も

新型コロナウイルスに伴う臨時休校の影響で、千葉県内では54の市町村すべてで公立の小中学校の夏休みの期間が短縮されます。

全体の4割を占める24の市町村で夏休みの期間は16日間となっていますが、鎌ケ谷市では8月7日から17日までの11日間のみと県内で最も短くなっています。例年は7月21日から8月末までの42日間だったため、ことしは夏休みが31日、短縮されることになります。

鎌ケ谷市教育委員会学校教育課は「鎌ケ谷市では土曜日やオンラインでの授業を行っていないため、夏休みを短縮して必要な時間を確保した」と話しています。

千葉市 熱中症防止でエアコンなど整備

およそ3か月間の臨時休校が続いた千葉市の市立学校は、授業時間を確保するために夏休みを30日余り短縮する予定ですが、子どもや職員が熱中症になることを防ぐため、エアコンなどの整備を進めています。

千葉の市立の小中学校などではことし5月末までのおよそ3か月間を臨時休校にしていますが、先月から授業を再開しました。

このため授業時間を確保する必要があるとして、ことしの夏休みは来月8日から23日までと当初の予定より35日間短縮することにしました。

しかし、例年授業を行わない暑い時期になるため熱中症への対策を進めています。

このうち千葉市立新宿小学校では、ことし4月に普通教室にエアコンが設置されたばかりです。

2日は5年生の児童たちがウイルス対策のために換気を行いつつ整備されたばかりのエアコンや扇風機の風を受けながら書道の授業を受けていました。

千葉市は、去年まで普通教室へのエアコンの整備が進んでいませんでしたが、5月までに165ある市立の小中学校のすべての普通教室に設置を終え、夏に間に合ったということです。

また、夏の期間も給食を提供することにしていますが、調理室にはエアコンがないため千葉市は「スポットクーラー」と呼ばれる持ち運び可能なエアコンをすべての学校に配備する予定です。

5年生の女の子は「エアコンがついてから勉強に集中できるようになりました。夏休みが短くなって旅行にも行けなくなり少し残念ですが、暑い時期でも頑張れると思います」と話していました。

また、担任の上侑里子教諭は「子どもたちはマスクをしているので具合が悪くならないか不安ですが、エアコンと小まめな水分補給で乗り切りたいと思います」と話していました。