人データの企業活用
利用停止求める要件緩和

個人データを活用したビジネスが広がる中、各個人が企業側に対し、みずからの情報の利用停止を求めることができるなどとした改正個人情報保護法が5日、参議院本会議で可決・成立しました。

個人情報保護法の改正案は5日の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決され、成立しました。

改正法は携帯電話の位置情報やネットで検索されたことばなど、さまざまな個人データを活用したビジネスが広がる中、各個人がみずからの情報を守る権利を強めることを柱としています。

改正法では、企業側に個人情報の利用停止や消去を求めることができる要件について、情報の不正取得などの場合にかぎるとしていたのを改め、広告や勧誘に個人データが利用されるなど、個人の権利や利益が損なわれるおそれがある場合にも請求できるよう緩和しています。

そのうえで、みずからの情報がどのように利用されたか把握するため、個人情報のやり取りに関する記録の開示を企業側に求めることができるようにしています。

また、企業がインターネットの閲覧記録などのデータを別の企業に提供する際、提供先の企業が個人を特定する形で情報を利用することが明らかな場合、利用者の同意を得るよう義務づけています。

さらに、企業の個人情報の漏えいが一定数以上となった場合、政府の個人情報保護委員会に報告するとともに、本人に通知することを新たに義務づけています。

このほか、個人情報保護委員会の命令に違反した場合などの罰則を強化し、法人に対する罰金の上限額を1億円に引き上げるとしています。

クッキーの利用条件厳格に

個人データをめぐっては、巨大IT企業がネットで検索されたことばや、通信販売の購買履歴などの情報を個人を識別できないよう統計データの形に加工して外部に販売するなど、ビッグデータとして活用するビジネスが急速に広がっています。

特に、インターネット上のIDや閲覧履歴を記録する「クッキー」と呼ばれる電子情報は、ウェブサイトで自動的に表示される広告などで活用が進んでいます。

一方、就職情報サイト「リクナビ」の運営会社が、学生の内定辞退率を予測し企業に販売していた問題では、学生が企業のサイトを見た時に残る「クッキー」の情報を、学生に十分な説明をせずに集めていたことが明らかになりました。

また、「クッキー」などの電子情報はIT技術の進展に伴って、容易に個人の特定も可能となっている現状もあり、本人の同意を得ないまま、企業側が活用することに懸念が出されていました。

こうしたことを踏まえ、今回の改正では「クッキー」などの電子情報を企業が利用する際の条件を厳格化しました。

具体的には、企業がこうした電子情報を別の企業などに提供する際、提供先が持っているデータベースで照合すれば、個人を特定できると想定される場合は、個人情報として取り扱うことを明確にし、本人の同意を得ることを義務づけるとしています。