卒採用 オンライン面接
実施の企業が急増

来年春に卒業する大学生らの採用活動について、緊急事態宣言が出された先月以降、対面での面接ができないとして、オンラインで行う企業が急増していることが、就職情報大手マイナビの調査で分かりました。

調査は、先月24日から30日にかけて行われ、情報サイトの会員の学生、およそ2100人が回答しました。

それによりますと、企業の採用面接について学生に尋ねたところ、「オンラインで受けた」と回答した面接の割合は、ことし3月後半の時点で41%でしたが、緊急事態宣言が出された4月前半には82.6%に増加しました。

さらに4月後半には94.6%に達しており、ほとんどの企業が対面での面接が実施できないとして、オンラインでの面接に切り替えたことがうかがえます。

また、就職をめぐる環境については、91%の学生が「先輩と比べて自分たちのほうが厳しくなる」と回答しました。

その理由を複数回答で尋ねたところ、「新型コロナウイルスの感染拡大による影響」が85.6%、「景気の悪化」が56.6%、「企業の採用人数が減ると思うから」が51.4%にのぼりました。

学生の間には新型コロナウイルスによる就職環境の悪化を懸念する見方が広がっており、来月から面接が本格化する大手企業の採用動向に注目が集まっています。

最終面接まですべてオンラインの企業も

会社説明会から最終面接まで一度も学生と会わないまま、オンラインで採用活動を行う企業もあります。

東京 足立区のかばんメーカー「土屋鞄製造所」はことし2月以降、新型コロナウイルスの影響で全国で予定されていた会社説明会や面接が中止となり、すべての採用活動をオンラインで行っています。

この日の説明会には、東北から九州、さらには中東のヨルダンに住む就職活動中の学生16人が自宅から参加しました。定番のリクルートスーツを着ている学生はほとんどいません。

企業側の課題の1つは、「伝える難しさ」です。

パソコンの画面上では、同じ映像が長く続くと学生に飽きられてしまいます。担当者は事業内容などを説明するスライドをいつもより増やして、会社の魅力をアピールしていました。

もう1つの課題は、「優秀な学生をどう見抜くか」です。

オンラインでは、実際に学生と会うのと比べて、どうしても情報量が少なくなります。このため、面接の回数や面接官の人数を増やして選考を進めているということです。

帰省先の奄美大島から参加した4年生の徳田李野さんは「緊急事態宣言を受けて東京に戻れないまま就職活動が始まったので、参加できてよかった。雰囲気やその場の空気感は対面とオンラインでは違いが出てくると思う」と話していました。

会社によりますと、これまでに16人の学生に内定を出していて、そのうち14人が関東以外の地域や海外の学生だということです。

採用担当の西島悠蔵さんは「初めは不安があったものの、地域を問わず、いろんな学生に出会えるメリットもある。時代に合わせた方法に企業側も変えていくことが必要だと思う」と話していました。

オンライン面接 学生は不安も

都内の大学に通う4年生の増渕朱里さんは、4月以降、2社の面接をオンラインで受けました。

増渕さんはオンラインの面接の場合、移動のための費用と時間がかからないというメリットがあると感じる一方で、実際に会社を訪ねることができないため、社内の雰囲気を知ることが難しくなったと感じています。

また、パソコンのカメラ越しでのやり取りでは、相手の表情が見づらい時に話しにくさを感じたり、通信回線の状況によって何度も聞き返すことに抵抗感を感じたりすることもあるといいます。

増渕さんは23日、会社から事前に与えられたテーマについて、3分の時間内で語った動画を自分で撮影して送信する「録画面接」に初めて挑戦しました。

自宅での撮影ですが、増渕さんはリクルートスーツを身につけ、あらかじめ要点をまとめたノートを確認したあと、スマートフォンを使って練習を繰り返していました。

増渕さんは、「カメラに向かって1人で話すのは初めてなので緊張します。オンラインの面接は、自分の伝えたいことが本当に伝わっているのか、また、相手の雰囲気も正直、分からないことがあります。慣れるまで大変です」と話していました。

ただ最近は、緊急事態宣言が解除された地域が拡大したことなどから、採用活動を中断していた複数の企業から面接の日程を知らせるメールが来るようになったということで、増渕さんは「次の日程が示されずこのまま無くなるんじゃないかという不安がありましたが、一歩前進した感じです。準備を入念に行っていつでも面接ができるような状態にしておきたい」と話していました。