臨時休校 覚障害の生徒
への学習支援に課題

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い各地で臨時休校が続くなか、聴覚に障害のある生徒が字幕や手話通訳の付いたオンライン授業などを受けられず、自宅での勉強を思うように進められないケースも出ています。今後、休校が長引くことも予想され、教育の質をどう維持していくかが課題となっています。

東京 武蔵村山市に住む高校2年生の井上絢介さん(16)は、生まれつき耳が聞こえず手話を使って生活しています。

井上さんが通う都内のろう学校では、先月から臨時休校が続き、自宅で宿題をこなす日々を送っていますが、思うように進まず頭を悩ませています。

休校中、学校側から週に1度、家庭の状況などを保護者に確認する連絡は入るものの、勉強で分からないことを教師に質問することができません。

一般に向けてネットで配信されている教材を利用することも考えましたが、字幕や手話通訳がないため内容が分からず諦めました。

教師だけでなく友人とコミュニケーションを取る機会も、大きく減っているということで、井上さんは「だんだんストレスがたまっています。早く新型コロナウイルスが収まって学校で勉強したい」と話しています。

また、母親の真由美さんは「1日の生活にメリハリがなくなっていて、なんとなく宿題をして、その日が終わる日々を送っています。親が付きっきりで勉強の指導をすることもできないので、もう少し学校にはコミュニケーションも含めて、密に子どもに接してほしい」と話しています。

井上さんが通う「都立立川ろう学校高等部」によりますと、多くの教職員が在宅勤務を余儀なくされていることに加え、オンライン授業などを行う環境が整っておらず、対応しきれていないといいます。

加藤紀彦副校長は「現在、情報通信技術を活用した自宅学習を導入する準備を進めています。経験したことがない状況で、試行錯誤で取り組んでおり、これから少しでも学習支援の充実につなげたい」と話しています。

オンライン授業の導入準備も

聴覚障害のある生徒の学習支援をめぐり、東京都教育委員会はインターネットを活用したオンライン学習を都内の特別支援学校に導入する方向で準備を進めています。

ただ、家庭によってはネット環境が十分整っておらず、配信される大容量の動画に対応できない場合もあることから、都教育委員会は配信方法も含めた具体策を検討しています。

一方、聴覚に障害のある生徒に向けて手話通訳を付けたオンライン授業を無料で提供しようという塾もあります。

東京 清瀬市にある日本社会事業大学の斉藤くるみ教授が中心となって運営している「ろう・難聴高校生の学習塾」では、早ければ来月から国語や数学などのオンライン授業を、希望する人を対象に無料で行うことにしています。

斉藤教授は「手話を使う人たちにとっては、顔の表情も『文字の一つ』なので教育の質を担保するためにもオンラインによる授業を積極的に活用したい」と話しています。