内感染相次ぐ
疑い含め1000人余

医療機関の中で新型コロナウイルスに感染する「院内感染」が相次いでいます。医療機関で感染した、またはその疑いのある医師や患者などは全国で1000人余りに上り、国内の感染者全体の1割近くに達していることが、NHKのまとめで分かりました。院内感染が相次げば医療崩壊につながるおそれもあり、感染をどう防いでいくかが大きな課題となっています。

NHKは、各自治体の発表や医療機関への取材などをもとに、3日前の今月21日の時点で各地の院内感染の状況をまとめました。

それによりますと医療機関で新型コロナウイルスに感染した、あるいはその疑いがある医療従事者や患者などは、全国のおよそ60の医療機関で合わせて1086人に上りました。

医療従事者は513人で、このうち医師は109人、准看護師などを含む看護師は181人となっています。
また、患者は534人に上っています。
(※内訳不明者などその他は39人)。

地域別では、
▽東京都が454人、
▽大阪府が155人、
▽北海道が123人、
▽福岡県が62人、
▽兵庫県が60人、
▽埼玉県が55人などとなっています。

集計した3日前に国内で感染が確認された人は合わせて1万1541人で、院内感染が疑われる人は全体の1割近くに達することになります。

感染者が出た医療機関では、患者の受け入れを一時休止するなどの影響が出ているところも多く、院内感染が相次げば医療崩壊が起きるおそれもあり、感染をどう防いでいくかが大きな課題となっています。

都内の感染 約14%が医療機関の関係者

NHKは、東京都の発表や医療機関が公表した情報をもとに新型コロナウイルスに感染した医療関係者の数をまとめました。その結果、今月21日までに入院患者や医師、看護師など少なくとも454人が感染していたことがわかりました。同じ期間に都が発表した感染者の総数は3306人で、医療機関の関係者はおよそ14%にあたる計算になります。

感染の確認が多いのは、
▼台東区の永寿総合病院で201人
▼中野区の中野江古田病院は95人
▼墨田区の都立墨東病院は40人です。

このうち入院患者や医師などが次々と感染した永寿総合病院では3月20日以降、患者30人が死亡しています。永寿総合病院では外来や救急の受け入れを停止しているほか、新規の入院は受け入れていません。

また都立墨東病院では、今月14日に患者2人の感染が確認された後1週間のうちに、ほかの患者や医師、看護師など合わせて38人の感染が明らかになり、救急の患者の受け入れを停止しています。

都は、感染経路がわからない人も少なくない一方で、一つの病院で数十人を超えるようなケースは院内で感染した可能性が極めて高いとしています。都福祉保健局は「まだ全容を把握できていない医療機関もある。死亡するケースが出ていることや、複数の医療機関で診療などの制限が続く現状を重く受け止めている。対策の項目を整理したチェックリストの配布や専門家の派遣などを通じて感染の拡大を防ぐ取り組みを徹底したい」と話しています。

専門家「リスクゼロにはできないこと前提に対策を」

日本感染症学会の理事長で、東邦大学の舘田一博教授は、「インフルエンザなどの感染症に比べると院内での感染が多い印象だ。ウイルス自体の感染力の強さもあるが、全く別の病気で来院して、症状がない人が気付かずにウイルスを持ち込んでいるおそれもある。対策が非常に難しいウイルスで、リスクをゼロにはできないと考えて対策に当たるべきだ」と指摘しました。

そのうえで、具体的な対策として、リスクを極力下げるため、感染した患者と感染していない患者で対応する医療スタッフを別にすることや、医療スタッフに対してきめ細かな健康観察を行い、体調不良を訴えた場合にはすぐに休んでもらうことなどが重要だとしています。

さらに、院内で感染が疑われる人が見つかった場合は、状況に応じて、濃厚接触した人以外でも、すべての医療関係者や患者を速やかに検査して隔離するなど、全員が感染している可能性があるという前提で対策すべきだと指摘しています。

舘田教授は「最近はPCR検査で陽性と判定された人の割合も高くなってきていて、すでに誰が感染していてもおかしくない状況だと考えられる。院内の対策だけでなく、院内にウイルスを持ち込む人を減らすためにも、密閉、密集、密接の『3つの密』を避け、人との接触を8割減らすなどの対策を徹底して、社会全体で広げない取り組みが求められる」と話しています。