いちトリエンナーレ
補助金 交付方針固める

慰安婦を象徴する少女像など、一部の展示が中止された愛知県の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金について、文化庁は全額不交付とした決定を見直し、交付する方針を固めたことが分かりました。

去年、愛知県で開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」は、慰安婦を象徴する少女像や、天皇をコラージュした作品などに抗議が集まり、展示が一時中止されました。

文化庁は、この芸術祭への補助金およそ7800万円について、愛知県側が会場の安全などを脅かすような重大な事実を認識しながら申告しなかったなど手続きに不備があったとして、去年9月、全額不交付にする決定をしました。

これに対して愛知県側は、補助金適正化法に基づき文化庁に不服を申し出ましたが、関係者によりますと、審査の中で愛知県側は展示会場の安全性などに懸念がありながら事前に報告しなかったことを認め、それにかかった経費などを減額して再申請したということです。

このため文化庁は補助金を6600万円余りに減額して交付する方針を固めました。

文化庁が、いったん採択した補助金を全額不交付としたことは当時、異例とされましたが、今回はその決定を見直したことになります。

この問題をめぐっては、芸術祭に補助金を出すことを採択した文化庁の外部委員が不交付決定に抗議して辞任したり、芸術家や大学教授らが抗議声明を出したりしていました。

「あいちトリエンナーレ」とは

「あいちトリエンナーレ」は、愛知県などが3年に1度開催している国内最大規模の国際芸術祭です。

去年はジャーナリストの津田大介さんが芸術監督を務め、国内外から90組余りのアーティストを迎えて8月1日に開幕しました。

文化庁は、愛知県からの申請を受けて、この国際芸術祭に、去年4月、観光資源としての文化の活用推進を目的とした補助事業としておよそ7800万円の補助金を出すことを採択しました。

しかし国際芸術祭のうち「表現の不自由」をテーマにした企画展で、慰安婦を象徴する少女像や、天皇をコラージュした作品などに抗議が集まり、展示が一時、中止される事態となりました。

文化庁は去年9月、申請の手続きなどが不適切だったとして、採択していた補助金を全額交付しないことを公表しました。

これに対して愛知県の大村知事は「問題とされた企画展は106ある企画の1つで、予算も全体の0.3%にすぎない。全額不交付は裁量権を逸脱している」と抗議して、去年10月、文化庁に不服の申し出を行っていました。

この不交付の決定については、文化庁の外部委員が相次いで辞任したり、芸術家のグループが署名を持って文化庁に抗議したりする動きも広がっていました。