防衛省 馬毛島買収で大半
所有する開発会社と一定合意
在日アメリカ軍の空母艦載機の訓練の移転先として買収を予定している鹿児島県の馬毛島をめぐり、防衛省は島の大半を所有する開発会社との間でおよそ160億円で買収することで、一定の合意に達しました。
防衛省は、小笠原諸島の硫黄島で行われている在日アメリカ軍の空母艦載機の離着陸訓練の移転先として、鹿児島県西之表市の馬毛島を買収するため、島の大半を所有する開発会社と協議を続けていました。
その結果、29日、およそ160億円で買収することで、一定の合意に達したということです。
防衛省は、今後、詰めの調整を進めて買収し、自衛隊とアメリカ軍が共同で使用できる施設を整備する方針です。
馬毛島をめぐっては、アメリカ側が、「硫黄島は本土から遠く、乗組員の安全確保が難しい」などとして、早期に訓練施設を整備するよう強く求めていました。
空母艦載機着陸訓練とは
アメリカ軍の空母艦載機が、地上の滑走路を空母の甲板に見立て、着陸してすぐに離陸する「タッチアンドゴー」を繰り返す訓練は「FCLP」と呼ばれています。
空母の甲板は300メートルほどと短く、艦載機が洋上で安全に着艦するには、高い技術と訓練が必要とされ、出港前にはFCLPが行われています。
現在は、横須賀を拠点にする原子力空母「ロナルド・レーガン」の艦載機が、年に1回から2回、小笠原諸島の硫黄島でFCLPを行っています。
1回の訓練は10日間ほどで、日中から深夜に及ぶということです。
防衛省はアメリカ軍が抑止力として空母を運用していく上で、FCLPは不可欠だとしていて、訓練施設の提供を続けています。
曲折の半世紀
FCLP=空母艦載機着陸訓練は、昭和48年、アメリカ軍の空母が横須賀に配備されたのに伴い、青森県の三沢基地や山口県の岩国基地で始まりました。
しかし、いずれも遠いことから昭和57年に神奈川県にある厚木基地で訓練が行われるようになると、特に夜間の訓練による騒音被害が深刻化し、周辺住民からは飛行差し止めなどを求める集団訴訟も起きました。
アメリカ側からも、代わりの訓練場を確保するよう要請があり、日本政府は、平成3年から小笠原諸島の硫黄島を(いおうとう)暫定的な措置として訓練場にしました。
ところが、アメリカ側は硫黄島は遠くて訓練に制約があるとして、さらに代わりの訓練場の確保を要請しました。
その後、平成18年に空母艦載機が厚木基地から岩国基地に移転することが決まると、平成23年には日米の外務・防衛の閣僚協議、「2+2」の共同声明で、恒久的な訓練場として、岩国基地から比較的近い、鹿児島県の馬毛島を検討対象とすることが明記され、交渉が続けられてきました。