イパーカミオカンデ」
建設へ概算要求 文部科学省

文部科学省は、ノーベル賞につながる成果をあげた素粒子観測施設「スーパーカミオカンデ」の後継となる、次世代の施設「ハイパーカミオカンデ」を新たに岐阜県に建設する方針を固め、来年度予算の概算要求に、検出器の開発費など十数億円を盛り込むことを決めました。

「ハイパーカミオカンデ」は、「宇宙ニュートリノ」の一種の観測に世界で初めて成功した「カミオカンデ」と、「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象を初めて捉えた「スーパーカミオカンデ」という、2度のノーベル賞につながった観測施設の後継となる施設です。

岐阜県飛騨市の地下650メートルに、直径70メートル余り、深さ60メートルの巨大な水槽を作り、高感度の検出器で宇宙から来る素粒子の一種であるニュートリノなどを観測する計画です。

建設費の総額は670億円余りと見積もられていて、今年度は建設の意義などを検討する調査費が計上されていましたが、文部科学省は来年度から計画に着手する方針を固め、新たな検出器の開発や製造費用など十数億円を来年度予算の概算要求に盛り込むことを決めました。

本格的な稼働の目標は2020年代の後半で、ニュートリノの反対の性質をもつ反ニュートリノや、原子核を構成する陽子が壊れる現象である陽子崩壊などの観測により、宇宙が誕生した謎に迫る高い成果が期待されています。

ハイパーカミオカンデに期待される成果

「ハイパーカミオカンデ」は、小柴昌俊さんがノーベル賞を受賞した「宇宙ニュートリノ」の一種の観測に世界で初めて成功した「カミオカンデ」と、梶田隆章さんがノーベル賞を受賞した「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象を初めて観測した「スーパーカミオカンデ」に続く施設です。

「ハイパーカミオカンデ」は、岐阜県飛騨市神岡町にある山の地下650メートルに設置され、施設は、直径74メートル、深さ60メートルと巨大な水槽に、高感度の検出器をおよそ4万個を設置して、「ニュートリノ」が水と反応して発生する「チェレンコフ光」と呼ばれる弱い光を検出します。

「ニュートリノ」は、最も基本的な粒子である素粒子の一つで、地球上の1センチ四方の狭い範囲に、太陽から、1秒間に660億個降り注いでいます。

しかし、直径が1ミリの1000兆分の1以下と極めて小さく、どんな物質でもすり抜けてしまうため観測が非常に困難でしたが、「カミオカンデ」と「スーパーカミオカンデ」はその難しいニュートリノ観測で高い成果をあげてきました。

「ハイパーカミオカンデ」では「スーパーカミオカンデ」のおよそ10倍のデータが得られるため、「ニュートリノ」とともに、「ニュートリノ」の反対の性質をもつ「反ニュートリノ」を数多く観測することで性質のわずかな違いを見つけ出し、宇宙誕生直後に物質ができた謎を解明することができる可能性があるとされています。

また、これまで誰も観測したことのない、原子核を構成する陽子が壊れる陽子崩壊という現象を捉えることができれば、現在の物理学の「標準理論」を超える理論とされている「大統一理論」が証明される可能性があるなど、極めて高い成果が期待されています。

文部科学省は来年度から計画に着手したいとしていて、2026年度の実験開始を目指しています。