41道府県議選
無投票当選者が過去最多

NHKのまとめによりますと、29日に告示された41の道府県議会議員選挙では、合わせて945の選挙区のうち、全体の39%にあたる371の選挙区で定員を超える立候補者がなく、合わせて612人が無投票で当選を決めました。これは、前回・4年前よりも111人増え、総務省に記録が残っている昭和26年以降、最も多くなりました。また、定員全体に占める割合も、前回より5ポイント高い27%と最も高くなりました。

今回の選挙では、前回、無投票の選挙区がなかった大阪と山口も含め、41の道府県すべてで無投票の選挙区がありました。

道府県別にみますと、無投票当選者の割合が最も高かったのは岐阜で、定員46人のうち無投票で当選したのは22人で48%に上りました。

次いで、香川が定員41人のうち19人で46%、広島が定員64人のうち28人で44%、熊本が定員49人のうち21人で43%などとなりました。

これに対し、最も割合が低かったのは鳥取で、定員35人のうち3人で9%、次いで、島根が定員37人のうち4人で11%などとなりました。

また、今回の道府県議会議員選挙では、広島市内の8つの選挙区のうち6つで無投票となったほか、京都市内の11の選挙区のうち5つ、浜松市内の7つの選挙区のうち4つなど、政令指定都市の選挙区で無投票が相次ぎました。

一方、17の政令指定都市の市議会議員選挙では、前回より5つ多い7つの選挙区で無投票となりました。

無投票当選者は全体の3%にあたる34人で、前回より17人増えました。

平成の31年間に一度も選挙戦なし

島根県議会議員選挙で、中山間地域、奥出雲町の仁多選挙区は、1人の定員に対して自民党の現職以外に立候補の届け出がなく、無投票で当選が決まりました。

仁多選挙区は9回連続の無投票となり、平成の31年間に一度も選挙戦が行われませんでした。

背景には、高齢化率がおよそ43%に上る人口減少の中で議員のなり手が不足していることや、強固な地盤を持つ自民党の現職に対抗するのが難しい状況が続いてきたことがあるとみられます。
仁多選挙区では、有権者からさまざまな意見が聞かれました。

80代の男性は「奥出雲町を盛り上げる人材が出てくれればよいが、なかなか出る人がいないし、無投票はしょうがないと思う」と話していました。

60代の女性は「正直、関心が薄れてきているのが、本当は選挙になったほうがよいと思う」と話していました。

70代の男性は「現職の功績はもちろん評価するが、対抗する人が出て選挙にならないと、多様な意見は出てこないと思う」と話していました。

仁多選挙区で、無投票で6回目の当選を果たした絲原徳康氏(71)は「当選させていただき、大変ありがたく思っている。無投票が続いたのは強固な後援会態勢づくりのおかげかなと思う。一方、4年間の活動が評価される機会がなかったのは、残念な気もせんではない」と話しています。

有識者「民意が正確に反映されず 大きな問題」

選挙制度に詳しい慶応義塾大学の小林良彰教授は、無投票が増えていることについて「議員になる人の属性や職業経験がどうしても偏りがちになり、民意が正確に反映されなくなる。また、有権者にとっても投票する習慣が失われ、政治に対して関心を持てなくなり大きな問題だ」と警鐘を鳴らしています。

また、無投票が増えた背景について「住民から見ると、地方自治をやっているのは首長であり、議会ではないと思っている。昔は地方議員は名望家と言われ、周囲から尊敬される位置づけだったが、今は時代の流れとともにそうではなくなっている。さまざまな制約の中で議員にやりがいを見いだしにくいのが、立候補する人が少なくなっている原因だと思う」と指摘しています。

そのうえで、「無投票を解決するためには、地方議員をもっとやりがいのある仕事にすべきだ。根本的に地方議員の役割を見直して、彼らがもっと活発に活動できるよう制度改革しないかぎり、もっと増えていくと思う」と話しています。

一方、議員のなり手を確保するために議員報酬を増額することについては「報酬を上げたからといって、直ちに多くの人が出てくるわけではないと思う。報酬目当ての人ばかりが議員になるのも困る」と述べ、否定的な見解を示しました。

このほか、道府県議会議員選挙の政令指定都市の選挙区で無投票が相次ぐ一方、政令指定都市の市議会議員選挙では無投票が少ないことについて「政令指定都市は、都道府県を飛び越えて国と直接いろいろな交渉ができるので、いちばんやりがいを持ちやすい。しかし、道府県議会議員は、まず当選が見込めないうえ、当選したとしても知事の権限が強いため追認するしかなく、自分の仕事を見いだしにくい。これが無投票が増えてきている原因だと思う」と話しています。