“水と油”は混じり合うのか?
立民・維新 連携の行方

「今の臨時国会は野党ペース」
与野党からそうした声を聞くことが多くなった。
国会で多数を握るのは与党だが、旧統一教会をめぐる問題で連携する野党に勢いがあるように見える。
その推進力となっているのが、立憲民主党と日本維新の会のタッグだ。
“水と油”の関係とも言われた両党はなぜ手を結んだのか。
動き出した新たな野党連携の行方を追った。
(仲秀和、青木新、鹿野耕平)

異例 野党主導の協議会

近年の国会では異例の「野党主導」の与野党協議が10月21日スタートした。旧統一教会の被害者救済を図る、自民・公明両党と立憲民主党、日本維新の会による協議会の初会合だ。そして、今の国会で必要な法案の成立を目指すことで合意した。

協議の参加者は、法案の成案を得ることに合意して参加している。それをほごにしたら国民から指弾される。意見の開陳や弁論大会のために来ているわけではない

会合後、記者団に対し、強気の発言で自民・公明両党をけん制したのは、立憲民主党の安住国会対策委員長。日本維新の会の遠藤国会対策委員長とともに、国会運営で一連の動きを主導してきた。

協議会に先んじて、立民・維新の両党は、被害者救済を図る法案を国会に共同で提出。政府・与党の被害者への対応は遅いなどと追及してきた。旧統一教会との関係が次々に明らかになる山際経済再生担当大臣(10月24日辞任)をめぐる政府側の対応に世論の批判が高まる中で、自民党の参議院議院運営委員長の失言も重なる。こうした中で、流れは野党ペースとなり、被害者救済の法整備の与野党協議を自民党に“飲ませた”形になった。衆・参両院ともに与党が“数の力”で圧倒する中では異例の事態だ。

これまでは “水と油”

これまで、いわば“水と油”の関係だと言われてきた立憲民主党と日本維新の会。
2か月ほど前までは、今の両党の連携をイメージできた人がどれほどいただろうか。

互いに「悪口を言い合ってきた」と振り返るように、両党は、憲法改正などの基本政策や国会対応をめぐる方向性の違いから、しばしば批判の応酬を展開してきた。
ことし8月中旬、立憲民主党が、憲法の規定に基づいて臨時国会の召集を求めようと野党各党に呼びかけたときも、日本維新の会は同調せず、「政府・与党が応じないような無駄なパフォーマンスはしない」と姿勢の違いを強調した。

ただ、両党とも、このままバラバラではいられない事情を抱えていた。

立憲民主党は、夏の参議院選挙で敗北。
泉代表は党執行部を刷新し、幹事長に岡田・元副総理、国会対策委員長に安住・元財務大臣を据え、民主党政権時代を知るベテラン勢を起用した。安住は「今、党は徳俵に足がかかっている」と述べ、現在の党勢を“土俵際の力士”になぞらえて、危機感をあらわにしていた。
一方の日本維新の会。
野党だが「是々非々」の立場を主張し、安倍・菅両政権との独自のパイプを生かして政策実現を図ってきた。しかし、岸田政権にかわり、これまでのパイプが事実上、機能しなくなったこともあり、政権に対峙する姿勢を強めてきた。8月下旬には馬場が新たな代表に就任した。

混じり始める“水と油”


そんな立民・維新両党が連携するきっかけになったのが9月1日の民放のテレビ番組だ。
代表の泉と馬場がそろって出演。秋の臨時国会の召集について議論していたときだった。「憲法の規定には開会までの期限が明記されていない」と指摘した馬場は、憲法改正ではハードルが高いため、「国会法」に期限を明記する改正を目指そうと提案。泉も「ぜひ、やりたい」と応じたのだ。

これを受けて、両党の国会対策委員長、安住と遠藤が協議を開始。
旧知の仲の2人は、国会法の改正にとどまらず、衆議院の小選挙区を「10増10減」するための公職選挙法の改正案の成立など、協力が可能な項目を1つずつ増やしていった。

ただ、両党には、互いを敵対視している議員も少なくない。
連携を協議すること自体に反発も予想されたため、進捗を知らされていたのは少数の幹部のみだった。
そして9月14日の夕方、安住と遠藤が2人きりで極秘に面会し、大筋で合意に至った。

驚きの立・維「共闘」合意

その1週間後、秋の臨時国会が迫りつつあった9月21日。
臨時国会での6項目にわたる協力を決定した2人は、そろって記者会見に臨み、グータッチまで披露して見せた。

(立憲民主党 安住国会対策委員長)
強力にタッグを組み、緊張感のある政治状況をつくる。次の臨時国会で野党内『共闘』することを決定した
(日本維新の会 遠藤国会対策委員長)
野党がいがみ合っても与党がほくそ笑むだけだ

立民・維新両党には、巨大与党に対峙する大きな塊をつくるという、共通する狙いがあった。自民・公明両党が、衆・参両院で全体の議席の6割を超える430余りを占める中、野党第一党と第二党が手を結べば、200議席近くになる。

これまで互いに批判を繰り返してきた立民・維新両党の連携に、与野党から驚きの声が上がった。なかでも注目されたのが、「共闘」の2文字が合意文書に盛り込まれたことだった。

ほかの野党は

そもそも、立憲民主党と「共闘」路線を進めてきたのが共産党だ。

9月26日には、両党の国会対策委員長が会談し、旧統一教会の問題などで政府・与党を追及していく方針で一致。そのあと、共産党側が、記者団に配布した1枚のペーパーには、「さらに共闘を強めていく」と明記されていた。日本維新の会を「与党の補完勢力」と厳しく批判してきた共産党にとって、立憲民主党との「共闘」路線を確認しておく必要があった。

かつては立憲民主党と「兄弟政党」とも言われてきた国民民主党の幹部は、「知らなかった」と驚きを隠さなかった。立憲民主党とは、去年の衆議院選挙後、距離を置き、ことしに入ってからは、政府・与党に接近を図ってきた。10月3日には、野党各党が国会法改正案を国会に提出したが、国民民主党は名を連ねなかった。党内からは埋没を懸念する声も聞かれる。

両党内からは期待や批判も

立憲民主党と日本維新の会の合意から1か月。臨時国会では、連携が具体化し始めている。

立憲民主党からは、国会での「共闘」にとどまらず、その先の選挙協力への期待の声も出ている。
政策的に違う部分もあるが、党勢回復に向けて反転攻勢のきっかけにしたい
将来的な選挙協力を全否定できる者はいない

ただ、日本維新の会からは、拠点のある大阪を中心に批判の声も聞かれた。
政策実現のために手を結ぶことも必要だが選挙での連携はあり得ない
岸田政権に対する揺さぶりにすぎない

政府は警戒か

一方、政府からは、今回の連携を警戒し、日本維新の会への配慮ともみられる動きも出ている。

10月6日の衆議院本会議での代表質問では。

(日本維新の会 馬場代表)
日本維新の会は、『積極防衛能力』の構築に向け、果敢に提言していく。安全保障関連の3文書を閣議決定する前に国会で改定案を示してもらいたい。政府・与党とオープンに議論する用意がある
(岸田総理大臣)
国家安全保障に対する日本維新の会の見解は、政府・与党内で検討を進めるにあたっても、大変参考になるものだと感じている。閣議決定する前に議論を行うという提案は、党首間でのやりとりも含めて、建設的なものとして受け止め、検討させていただく

さらに、10月21日には、岸田総理大臣が日本維新の会の代表、馬場と会談。経済対策の提言まで受け取ってみせたのだ。
通常国会で今年度予算に賛成した国民民主党を除けば、総理大臣みずからが野党の提言を受け取るのは、ここ数年ではあまり見られなかった光景だ。

会談後、馬場は「全体的に維新の政策に理解をいただいている」と岸田を持ち上げてみせた一方で、「手練手管で国民のための政治を実現する」と狙いを強調した。

“水と油”の関係 今後の行方は…

こうした状況について、事前の協議の段階から知る幹部の1人は、こう呟いた。
今回の連携を主導した安住も遠藤も、与野党の反応は全て想定してやっている。結局、野党が何かしらの成果を得るには、与党を動かさなければならない
ただ、“水と油”が一緒になってやることで、この先、何を狙っているのかは、それぞれの頭の中にしかない。まさに狐と狸の化かし合いだ

野党第一党と第二党の連携により、野党がひとつの大きな塊となって政府・与党に対峙する下地はできつつあるという声を聞くようになった。
ただ、国民が評価できる具体的な成果を出さなければ、野党による政権交代が現実味を帯びるほどの党勢の拡大は難しい。旧統一教会をめぐる問題などを背景に内閣支持率が下落する中、今の臨時国会は、野党がその第一歩を踏み出せるかどうかの試金石となる。
(文中一部敬称略)

 

政治部記者
仲 秀和
2009年入局。前橋局、選挙プロジェクトを経て政治部に。現在は日本維新の会の取材を担当。
政治部記者
青木 新
2014年入局。大阪局を経て2020年から政治部。総理番と外務省担当を経験したのち、ことし8月から野党担当。
政治部記者
鹿野 耕平
2014年入局。津局と名古屋局を経て、2020年から政治部。総理番と文部科学省を担当したのち、ことし8月から野党担当。