「保活」して感じたこと
どうなの?国会の議論

「3桁のかたにお待ち頂いています」。「去年は定員6人に150人の申込みがありました」。去年、職場復帰を目指す「保活」の最中、私が聞いた言葉です。見学すら断られた保育園もあり、「これが、”保育園落ちた”の実態か」と実感することもありました。結果的に、保育園は見つからず、職場復帰後、今は、一時預かり保育の2つの施設などにお世話になっています。政府は待機児童の解消に向けた政策を強化し、私が取材している国会でも活発な議論が展開されていますが、なぜ、なかなか状況は改善されないのか。議論は実態と合っているのか、今の国会での論議から、考えてみたいと思います。
(政治部記者・相澤祐子)

国会ではシンポジウムも

先月26日、国会内で「保活」を経験した保護者や保育士など120人が集まり、待機児童対策を求めるシンポジウムが開かれました。

パネリストの1人、NPO法人の代表理事を務める駒崎弘樹さんがこう呼びかけました。 「なぜ、いまだにこんな状況かというと、子育てのことは、『のど元過ぎると熱さを忘れてしまう』から。保育園に入れると『よかった』で忘れてしまう。高齢者が予算をとれるのは、ある年齢を過ぎるとずっと高齢者だから。待機児童が終われば、学童保育、中学受験となるが、待機児童の問題は自分の痛みだったと思って活動してほしい」

政府の対策は?

政府は、この問題にどう取り組もうとしているのか。
去年12月に閣議決定された政策です。

▽0歳から2歳までは、住民税が非課税の世帯を対象に、3歳から5歳までは、所得にかかわらず、一律で認可保育所や認定こども園、幼稚園で無償化を行い、2020年4月から全面的に実施する。
▽待機児童の解消のため、2020年度末までに32万人分の受け皿整備を目指す。

安倍総理大臣は、こうした政策を「人づくり革命」として、今の通常国会の施政方針演説でも、「現役世代が抱える介護や子育ての不安を解消する」と決意を表明し、新年度に10万人分以上の保育の受け皿を整備する方針を示しました。

政府は、財源には、2兆円が必要だとして、消費税率の10%への引き上げ分となる税収と経済界からの3000億円程度の負担を充てるとしています。

政府・与党内では、幼児教育の無償化には、7000億円~8000億円、待機児童の解消には、3000億円程度の予算が必要だという想定が出ています。

国会論議 政府への批判

こうした政策に対し、国会では、どのような議論が展開されているのか。

政府の政策に対して、国会の冒頭、立憲民主党代表の枝野幸男氏は、次のように指摘しました。

「待機児童問題が解消されないまま、保育所が無償化されれば、『二重の不公平』が生じる。無償化の対象となるかたにとっても、延長保育や子どもが病気の時の対応など、柔軟な制度を可能にすることや、無認可の保育所を認可の基準に近づけるなど、より安心できる体制の実現こそ、保育料以上に優先すべき課題だ」
(1月24日 衆議院本会議)

幼児教育の無償化という理念と方向性には賛同するものの、限られた予算の使いみちとしては、待機児童の解消に集中して取り組むことが先ではないか、というのです。

国会論議 幼児教育の無償化

一方、与党の議員は、政府の打ち出した政策を具体的にどのように進めていくのかという観点で質問しています。

自民党の後藤茂之氏。
「自民党内でも、認可外保育施設や幼稚園の預かり保育などの取扱いについて、活発な議論が行われ、認可外保育も含めて無償化を進めるべきということで党も提言をまとめた。政府は、こうした認可外の無償化の取扱いについて、今後どのように検討するのか」

茂木経済再生担当大臣。
「幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会を1月23日に立ち上げたところだ。指摘いただいた幼稚園の預かり保育の取扱いも含め、夏までに結論を出していきたい」
(2月2日 衆議院予算委員会)

政府は、子どもを短時間預ける「一時預かり」や、夜間保育を行う「ベビーホテル」、幼稚園での「預かり保育」など、認可外保育の無償化の範囲について、ことし夏までに詳細な制度設計をまとめるとしています。

国会論議 保育の質や保育士も

国会では、これまでの政策と整合性がとれているか、また、各党が重視する具体策と異なっている点はどこかなどについても議論が行われます。

日本維新の会の片山大介氏。
「保育士確保プランが平成27年1月に作られた時には、今年度までに46.3万人の保育士を確保するということになっていたが、そのたった10か月後、確保目標が保育士から保育人材に変わった。これはどういうことなのか」

加藤厚生労働大臣。
「子ども・子育て新支援制度がスタートするため、認定こども園では保育教諭、地域型保育事業では保育従事者という形で、保育士以外のかたが保育の担い手になっていただく多様化が進んできている。そういうことを踏まえて、保育士確保から保育人材確保ということで名前を変えた」

片山氏。
「多様なサービスというのは必要だが、いずれのサービスにしても質の確保は重要で、やはり保育士の確保は大切だ。保育人材となると、保育士とは違って国家資格が要らないので、数を集めやすいという思惑もあるんじゃないか」
(2月1日 参議院予算委員会)

保護者は?

こうした国会の論議を、保護者は、どう考えているのでしょうか。
埼玉県所沢市で、育児休業の取得による保育園の退園の問題に取り組んできた渡辺雄太さんに聞いてみました。

ご自身も子どもを保育園に通わせているほか、ツイッターなどを通して、待機児童対策などについて情報発信し、いろいろな保護者と意見交換しています。こうした交流の中で、渡辺さんは、一口に待機児童対策、幼児教育の無償化といっても、幼稚園を利用している家庭と、保育園を利用している家庭では、意見が異なるのではないかと感じています。

「おおまかにいえば、保育園ユーザーにとっては、待機することなく、子どもの通える保育園が増えることが最優先で、どちらかといえば、無償化のニーズは低いように感じる。一方で、幼稚園を利用している人たちは、2~3歳までは行政に頼らず子育てをしているので、幼稚園を無償化してほしいと考えているのではないかと思う。ならば、折衷案が必要ではないか」

渡辺さんは、政治や行政が、もっと幅広く保護者の意見に耳を傾けてほしいと言います。

国会論議をみて

認可保育園に入るには優先順位があること。自治体ごとに違う基準。「保活」をしてみて、私自身、初めて知ることばかりでした。

「保活」を体験し、国会の論議を詳細にみてみますと、改めて、これまでに比べ、さまざまな議員が、多様な立場から、子育ての問題を取り上げるようになったと感じました。

一方で、保育園探しなどの苦労に直面している保護者の切迫感を本当に感じているのか、疑問に思う場面もありました。

今月9日には、待機児童の解消に向けて、都道府県ごとに市町村や有識者が参加する協議会を設置するなどとした「子ども・子育て支援法」の改正案が、「森友学園」への国有地売却をめぐる問題で立憲民主党など野党6党が欠席する中、審議入りしました。

私は、幸い、新年度からの保育園が決まりましたが、みずからの経験を忘れずに、引き続き、国会は、どれほどの熱意を持って、子育て施策の改善に取り組もうとしているのか、議論を注視していきたいと思います。

政治部記者
相澤 祐子
平成14年入局。長野局を経て政治部へ。現在、野党担当。