衆院選の争点 憲法改正
各党の主張は

70年前、現在の「日本国憲法」が施行されました。柱に据えたのは「国民主権」、「基本的人権の尊重」そして「平和主義」。
これまで、改正されることがなかった憲法。その改正の是非、中でも憲法9条が今回の選挙で主要な争点の1つとなっています。

9条をめぐる各党の立場

改正に賛成・前向きなのは、「自民党」「日本のこころ」「希望の党」「日本維新の会」です。

「公明党」はどちらかといえば慎重な姿勢です。

一方、反対なのは「共産党」「立憲民主党」「社民党」となっています。

ただ、賛成、反対と言っても、それぞれ党のスタンスは微妙に違います。

憲法9条とは

憲法9条は、1項で「戦争の放棄」、2項で「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を定めていて、憲法の基本原則の1つ「平和主義」を規定しています。

政府は、自衛権まで否定するものではないという見解を示していて、自衛隊は、「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であり、憲法に違反するものではない」としています。

これに対し、憲法学者の中からは「憲法を文字どおりに読めば、自衛隊は違憲としか言えない」という主張が出ています。

各党の主張は?

「自民党」は今回初めて、「憲法改正」を公約の重点項目に位置づけました。特に、憲法9条に関わる部分としては「自衛隊の明記」を掲げました。

自民党は5年前、野党時代に、9条を改正して自衛隊に代わる「国防軍」の創設を盛り込み、自衛権を明記した憲法改正草案をまとめていました。

しかし安倍総理大臣が、ことし5月に打ち出したのは、9条の1項と2項をそのまま残したうえで、自衛隊の存在を規定する条文を追加するというものでした。

党の草案と異なる方針を打ち出したことについて、党内には、憲法を変えるのではなく必要な条文をつけ加える「加憲」という方針を主張してきた公明党に配慮した考え方だという見方も出ています。

今回の公約も、党の総裁である安倍総理大臣の主張を反映したものと言えます。

また、「日本のこころ」も、安倍総理大臣の案を支持しています。

一方で、自民党と連立政権を組む「公明党」は、現行憲法を積極的に評価したうえで、戦後70年が経過し、新しい価値観も出てきており、憲法に新たな条項を加える「加憲」という考え方を示していますが、衆議院選挙の公約そのものには憲法改正を盛り込んでいません。

自民党が掲げる「自衛隊の明記」については、「多くの国民は現在の自衛隊の活動を支持しており、憲法違反の存在とは考えていない」と慎重な姿勢を強くにじませています。自民党と温度差があることは否定できません。

次に、改正に賛成・前向きな「希望の党」「日本維新の会」です。
「希望の党」は「9条を含め、憲法改正論議を進めていきたい」と、公約の3本柱の1つに掲げています。小池代表は自民党時代に防衛大臣も経験していて、そうしたことも背景にあるとみられます。一方で小池代表は「自衛隊の明記をめぐる議論だけをこのまま進めるのは、大いに疑問だ。『地方分権』など議論も進めるべきだ」とも話しています。

また、「日本維新の会」は「時代にあった憲法が必要だ」として、9条改正の必要性を盛り込んでいます。すでに、党としての憲法改正原案をまとめていて、教育の無償化や道州制を含む統治機構の改革、それに憲法裁判所の設置を主張しています。

両党とも、9条改正の議論はするが、安倍総理大臣とは力の入れどころが異なると言えます。

そして、「共産党」「立憲民主党」「社民党」です。

「共産党」は、今の憲法の前文を含む、すべての条項を守るとともに、平和主義や民主主義の条項を完全に実施すべきという立場で、「安倍政権による『9条改悪』に反対し、9条に基づく平和の外交戦略を確立する」としています。

「立憲民主党」は、専守防衛を逸脱し、立憲主義を破壊する安全保障関連法を前提とした「憲法9条の改悪」に反対する一方、内閣による衆議院の解散権の制

約などの議論を進めるとしています。

「社民党」は、憲法を変えさせず、憲法の理念を活かした政策提起を進め、安全保障関連法は廃止するとしています。

3党は、基本的に今の憲法を守るという立場と言えます。とりわけ、9条の改正について言えば、完全に足並みが揃っています。3党は、安全保障関連法は憲法違反という立場で、そうした中で、自衛隊を憲法に明記すれば、憲法違反を追認することになると、強く反対しています。

世論は?

NHKが10月7日から3日間行った世論調査で、憲法を改正して自衛隊の存在を明記することに賛成か反対かを尋ねたところ、「賛成」が32%、「反対」が21%、「どちらともいえない」が39%でした。

憲法改正をめぐって、今回の衆議院選挙では、9条だけでなく、「教育の無償化」や「内閣による衆議院の解散権の制約」などをめぐっても、議論を進めるべきだという考え方も示されています。

今回の選挙の結果が、このあとの国会での改憲論議に与える影響は決して小さくありません。それだけに、各党がどういう主張をしているのか、十分見極めて、投票に臨んでもらいたいと思います。