次郎節”今度はなに

「改革」という言葉が好きな男が、また発信を始めた。
小泉進次郎(37)。
総裁選挙後の党内人事で、厚生労働部会長に就任した。
「社会保障改革は、社会のあり方を改革することだ」と主張。正直、威勢はいいが、その発言だけでは何だかよく分からない。小泉氏が思い描く「人生100年時代」の社会の姿を、最近の発言から探ってみた。
(政治部「進次郎番」 根本幸太郎)

またまた“進次郎節”

10月22日、自民党本部7階の会議室は、報道陣でごった返していた。

カメラの先には、小泉進次郎氏。

厚生労働部会長に就任して初めての党の会合だ。この日、議題となったのは、中央省庁による障害者雇用の水増し問題。会合の後、小泉氏は“進次郎節”を放った。

「考えられないと思いますね。役所は法律を守って当たり前の立場で破るんだから。このこと自体、ありえない。意図的ではないと言ったって、悪質なことに間違いない。きょうの役所側の受け答えを聞いていても、どう考えても国民の立場からしたら理解できないですよ」

総裁選挙後およそ1か月ぶりに報道陣の前で取材に応じた小泉氏。
総裁選挙では、投票日に石破元幹事長支持を表明したものの、一部で「態度表明が遅く、男を下げた」などと厳しい論評にもさらされた。
しかし、やはり“進次郎節”は健在だった。

代理ポストは大人気

小泉氏が厚生労働部会長になると分かると、その代理のポストに、10人ほどの議員が手を挙げた。
党幹部は「進次郎の隣に並んで仕事をしたい人たちが、こんなにいるのかとびっくりした」と舌を巻く。
また長年、厚生労働行政に携わってきた、ある党関係者は「社会保障制度全体が、徹底的に改革されるのではないか」と戦々恐々としている。

それでも「雑巾がけ」を

部会長は、党の若手・中堅議員が担うポストだ。

政治家として鍛えられると、よく言われる。党内の意見調整など、裏方仕事が多いからだが、小泉氏は、いわば「雑巾がけ」を、今回みずから希望した。厚生労働部会が扱うテーマは、年金、医療、介護、子育て、労働、障害者福祉など、多岐にわたり、いずれも国民生活に直結するものばかりだ。さらに、この分野は業界団体も多く、「厚労族」と呼ばれる専門知識を持った重鎮議員が力を持つ。
部会長経験者は「限られたパイ(=財源)の中で、いかに利害を調整するか、その力が試される」と話す。

ではなぜ、小泉氏はこのポストを望んだのか。
そこには、社会保障制度改革への強い関心が背景にある。部会長に就任する直前の10月7日、医療関係者向けの講演会での内容から、そのことがうかがえた。

きっかけは「3万円事件」

「『人生100年時代』はコマーシャルや新聞広告を見ても、もう完全に根付き始めていると感じる」

小泉氏は、いま9歳以下の日本の子どもの50%が、107歳まで生きるという研究を紹介した。その際、人生100年時代を考えるきっかけになったエピソードとして、こんなことを語った。

「人生100年時代はどこから始まったのか。『年金生活者等支援臨時福祉給付金』、高齢者に3万円渡すという政策。使われる金が3000億円から4000億円。ちょっと待った。子育て支援にお金が無いといいながら、高齢者の3000億円は出るのかと声を上げたのが『3万円事件』」

その『事件』を受けて、若手議員が議論する「小委員会」で提言を出したのが、スタートになったという。

「政治家が作り上げたレールに国民が乗るのではなく、国民1人1人のレールに、国がどのように選択肢を用意できるかが大切だ。年金も、働きながら何歳からもらうかは自分で決めよう。それを阻害するような制度は変えよう。こういうことが全部つながっている」

「社会保障改革というのは、医療・介護をどうやって抑えるかという財政的なものがかなり強かったが、これから必要な発想は、社会のあり方を変えていかないと本当の社会保障改革はできない。これからの社会保障改革は、社会改革だというのが私の思いだ」

定年を超えて働く元気な高齢者、子育てと仕事を両立する女性、終身雇用ではない働き方を選択する若者など、多様なライフスタイルに対応する新たな制度の構築が必要だと、小泉氏は考えているという。それにしても「社会改革」とは大層な言葉だ。具体的にはどういうことを指すのか。

バリアフリーと逆の「超バリア」って

小泉氏は講演で「まちづくりから変えたい」と続けた。
「最近、スポーツジムに行くと、高齢者の方が本当に多い。これって、病院がサロン化していると言われていたことを考えたら、まだジムに行くほうがいいですよね。この次に、実現したいのは、町なかの公園とかがジムになっている姿だ。鉄棒とかジャングルジムとかが健康器具に変わっていると。そうすると、そこでスクワットからベンチプレスみたいなことができる」

高齢化で膨らむ医療や介護の予算を圧縮するためにも、公園をジムに変えて、国民の健康寿命を延ばしたいという。だが、すでに健康器具が設置された公園はあちこちにある。果たして効果はいかほどだろうか。

さらにバリアフリーと真逆の「超バリア」というアイデアを持ち出した。
「私いつも思うのは、気づけば、誰でも、いつでも、どこでも運動が可能な、まちづくりを実現したい。僕が、しょうもないことを考えているのは、バリアフリー、普通、超バリア(という3段階)。この超バリアは、階段の幅が一段高いとか、より自分に負荷をかけたい人は『こちらのルートからどうぞ』という形で、気がつけば、町なかで、運動やスポーツとつながると。社会のあり方を変えていければ、今までとは違う社会保障改革がきっとできる」

超バリアとは、初めて聞く言葉だ。ある意味、驚くべき発想だが、どう整備していけるのか。改革の具体策はまだまだこれからのようだ。

「お手並み拝見」

そもそも社会保障制度の改革は、容易ではない。
2年前、農林部会長を務めていた小泉氏は、JA全農の改革に取り組んだ経験があるが、党内からは「お手並み拝見」との声も聞かれる。
ある「厚労族」の議員は、「全農改革なら、主な相手は全農1つだが、社会保障分野の場合、複数の関係団体を相手にしなければならない。今の社会保障は、複雑な利害関係の調整の上に構築されており、改革は簡単ではない」と指摘する。
小泉氏自身も「社会保障関係は歴史的な経緯がたくさんあり、それを変えていくのは、並大抵の作業ではない」と認める。
各方面からの反発も予想される中、まずは法案や予算の審査など目の前の課題をこなすことに集中するという。

試されるのは、これから

小泉氏をめぐっては、総裁選挙後、初入閣や官房副長官への起用など、さまざまな臆測が乱れ飛び、今回の人事を「意外だ」と受け止めた人もいるかもしれない。

ただ厚生労働部会長は、政治家として必要な調整力や、社会保障に関する専門知識を身につけられるポストだ。
かつては安倍総理大臣も、前身の社会部会の部会長を務め、「大荒れの部会を深夜まで開くなど、雑巾がけをやり、もまれて成長した」(党関係者)とされる。
また父、小泉純一郎氏は、厚生大臣を経て、総理大臣となった。
若くして、総理大臣候補の1人に挙げられながら、「調整力はまだまだ」と辛口の批評も聞かれる小泉進次郎氏。部会長として結果を出せるのか。試されるのは、これからだ。

政治部記者
根本 幸太郎
平成20年入局。水戸局に5年間勤務後、政治部に。29年8月から「進次郎番」。人生はロックンロール。