2019年12月18日 (水)
やまとの季節 七十二候「飛火野 始めて凍る」
「ならナビ」12月18日放送
映像作家・保山耕一さんが、NHK奈良放送局「ならナビ」に、「やまとの季節 七十二候」をテーマとした極上の映像詩を届けてくれています。音楽は、スペインで活躍するピアニスト・川上ミネさんが、奈良で100年近くの時を刻んできたピアノで、オリジナル楽曲を奏でています。
やまと七十二候「飛火野 始めて凍る」 大雪
保山耕一
TBS世界遺産などで活躍してきたフリーTVカメラマン。6年前、がん余命宣告を受け、治療中に「奈良には365の季節がある」をテーマに奈良県各地の撮影を始める。日々、奈良の空や光、花、月、寺、などを撮影し、SNS発表・上映会を続けている。
川上ミネ
スペインと京都を拠点に活動しているピアニスト・作曲家。「ラジオ深夜便・ピアノが奏でる七十二候」、Eテレ「やまと尼寺精進日記」などの音楽を手がけている。昨年、春日大社奉納演奏会を機に保山氏と出会い、「こころの時代」でコラボレーション。この秋、「やまとの季節 七十二候」の新たな作曲・演奏をスタート。
奈良ホテル・100年ピアノ
1922年、スタインウェイ社のハンブルグ工場(ドイツ)で製造。1926年、奈良ホテルの調度品として鉄道省によって購入された。
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やまと七十二候
「飛火野 始めて凍る」
保山耕一
初霜が降りるのは11月の終わりから12月の初旬です。自分の中で、一番美しい霜の風景の場所は飛火野です。
冬の間何回か、霜、というよりは「凍る」という言葉がふさわしい朝があります。飛火野 全部が霜に覆われて真っ白、芝も水たまりもカチンコチンに凍ってしまう。そんな時を、 私は「白い飛火野」と呼んでいます。この光景を「やまとの季節 七十二候」に入れました。
白い飛火野は、霜が朝日で溶けて、水蒸気になり、天に昇っていく、じつに一瞬の光景です。そこでは、水のサイクルを感じるし、鹿も毎朝同じようにやって来て霜がついた草を食べる姿を見せてくれます。
なぜすべてが凍ってしまうのか。飛火野は常に水が潤している場所だからです。御蓋山 (みかさやま)を源流とする御手洗川(みたらしがわ)が、春日大社の森を抜けて飛火野の芝地へと流れていく。このことにより、土地に水が蓄えられ、飛火野全体が潤っている のです。芝の表面に触れると分かるのですが、たとえ夏場でも乾燥していることはありません。ところが最近、御手洗川の水量が極端に減っていることに気がつきました。もしかしたら、この冬は飛火野がすべて凍りつく風景は見られないかもしれません。
霜とは儚(はかな)いもので、朝日に照ら されるとあっという間に消えてしまいます。 霜が太陽に当たって水滴になった時、よく見ると、水の粒一つ一つに色が宿っているのが 分かります。赤、青、黄色、黄緑、水色、オレンジ、紫。キラキラと七色の光を放ちなが ら消えていく。なんて美しいんかなと思う。撮るのが難しいショットで、ワンカットだけ 入れました。
(聞き書き 伊藤享子)
七十二候 について
七十二候(しちじゅうにこう)は、古代の中国で生まれました。立春、夏至、秋分…などで知られる二十四節気(にじゅうしせっき)を、さらに約5日ずつの3つに分けて、季節の移り変わりを感じる名前がつけられています。日本では、江戸時代の「本朝七十二候」、明治時代の「略本歴」など、いくつかの異なる七十二候が作られてきました。
「やまとの季節 七十二候」では、保山さんが記録してきた奈良県各地の映像から、いまの「やまと」の暮らしの中で、季節のうつろいを実感できる映像を選び出し、オリジナルの名前を添えて紹介しています。奈良を愛する方々に…これから奈良に出会うであろうすべての方々に…こころを込めてお届けしています。
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