2022年12月22日 (木)
全国高校駅伝 取材記 仙台育英(宮城)~連覇を狙う女子の鍵は?男子は3年ぶり頂点へ~
宮城の仙台育英高校はことしも男女そろっての出場です。去年、史上最多5回目の優勝を果たした女子はこの5年で優勝3回を誇りますが、そのよくとしはいずれも3位。念願の連覇を目指します。男子は10年ぶりに迎えた新監督のもとで3年ぶりの頂点を狙います。
女子の絶対的エース 杉森心音選手
エースでキャプテンの杉森心音選手(3年)は、去年は2区で区間1位と優勝に貢献。ことしは全国高校総体の3000メートルで5位入賞(日本選手2位)を果たすなど好調を維持しています。高校最後の都大路ではエース区間の1区(6キロ)での起用が見込まれます。
杉森心音選手
「どんな時も自分がエースだという気持ちを忘れることなく、走りで引っ張っていきたいとこの1年やってきました。どの区間でも“攻めの走り”をして日本人トップを目指せるようにしたいです」
エースに続け!
連覇への鍵は、エースの杉森選手に続く選手たちの成長です。
去年はチーム6番目の評価で出場を逃した壁谷衿奈選手(2年)はことしの全国高校総体800メートルで優勝。武田莉奈選手(3年)は東北大会2000メートル障害で高校記録を更新するなど、“ことしこそは”と強い思いを抱く選手たちがアピールしてきました。
【武田選手(左)/壁谷選手(右)】
それでも全国高校駅伝でのメンバー入りが約束されることはなく、大会の直前までハイレベルなチーム内競争が繰り広げられてきました。
12月、関東で臨んだ合宿では、メンバー選考の最終的な判断材料となるトラックでのスピード練習が行われました。その日は練習前から張り詰めたような空気が漂い息苦しくなるほどの緊張感が伝わってきました。
走るのは800メートルを5本。400メートルごとにペースメーカーが替わりながら設定タイムに向かって走る、スピードとスタミナが試されるメニューです。エースの杉森選手とことしケニアから来日した留学生のデイシー・ジェロップ選手(1年)は、去年の優勝メンバーとほぼ同じタイムをマークし上々の仕上がりを示しました。
一方、メンバー入りを目指す選手たちの中には本来の走りができずに悔し涙を流した選手たちがいました。
釜石監督
「先生も人間なので、悔しいだろうな、涙を流している姿を見てどうにか走らせてあげたいな、という思いはあるけれども、12月25日に向けて最大限の努力をするしかないでしょう。選ばれた登録メンバーとしての振る舞いをしなさい」
連覇を達成するにふさわしい選手かどうか
釜石監督は心を鬼にして、スピード、粘り強さ、精神面、直前のコンディションなど、あらゆる角度から選手を見極め5人のメンバーを決めることにしています。
釜石監督
「47の代表校の中で連覇を目指せるのは仙台育英だけ。エースの力とミスのない駅伝ができるかどうかが鍵を握る。守りに入らず攻めの駅伝をしたい」
男子は同学年監督が切磋琢磨(せっさたくま)
男子は10年ぶりに監督が交代しました。千葉裕司監督です。
全国高校駅伝ではおなじみの岩手の一関学院を率いて学校として歴代最高の5位に導いた実績があります。千葉監督の起用を推薦したのは、同じ岩手出身で同学年の女子の釜石監督です。
それぞれの高校時代、千葉監督は一関学院のエースとして全国高校駅伝で7位入賞。釜石監督は仙台育英で3連覇を達成しました。2人は小学生の頃から互いに意識しあうライバルだったそうです。
【釜石監督(左)/千葉監督(右)】
釜石監督
「小学5年生の時の大会で千葉監督に負け、絶対に勝ってやると思いながら常に意識していた存在だった。一関学院に強さを植え付けた千葉監督の“駅伝力”はすごいなと思っていた。これからも刺激し合って長く優勝争いできるようなチームを作りたい」
千葉監督
「かつては犬猿の仲でした。都大路には僕のほうが多く出場しているが、指導者として釜石監督に勉強させてもらう」
男子は優勝候補の一角にあげられた去年、チームには5000メートルのベストタイムが13分台の選手が7区間中3人もいましたが、全員がベストの走りは発揮できず3位に終わりました。
真の強さ
個の能力だけではなくチームとしての真の強さがなければ駅伝では勝てないと考える千葉監督は、就任後すぐにチームの「隙」を見つけました。選手たちはトラックでのスピード練習には高い集中力を見せる一方、フォーム作りやスタミナ強化など走りの基本であるジョギングへの取り組みに甘さを感じたのです。
日々の練習から見直したことし、5000メートル13分台の選手は7区間中、ケニア人留学生の1人だけですが、ほとんどの選手が14分台前半を常にマークできるようになりました。安定したチーム力は去年との大きな違いだと言います。
大西柊太朗主将(3年)
「去年はエース格の選手とそのほかの選手の練習メニューが違いましたが、ことしは多くの選手が高いレベルでの練習を一緒にこなせるようになりました。挑戦者として、優勝に対してどのチームよりもどん欲にやっていきたいです」
千葉裕司監督
「総合力では去年のチームと同等の強さがあると思う。選手たちが100%の力を発揮できるように手助けしていきたい」
取材:仙台放送局・藤原由佳キャスター
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