スポーツ

2022年12月22日 (木)

全国高校駅伝 取材記 神村学園(鹿児島)~留学生ランナーと固いきずなで頂点へ~

女子で4年ぶりの優勝を狙う神村学園は、ここ数年、1区での出遅れが響いて、涙を飲む結果が続いています。その1区での起用が見込まれるキャプテンの田島愛梨選手は、あえて留学生ランナーと一緒に走る“厳しい特訓”を積んできました。

 

優勝のカギは1区


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神村学園は4年前の2018年の全国高校駅伝で初優勝。その後も優勝候補として出場しましたが、準優勝2回、入賞1回と優勝を逃しています。おととしは、県大会で高校記録を上回るタイムをたたき出し、“歴代最強”というメンバーで挑みましたが、準優勝。2回目の優勝になかなか手が届かず、壁にぶつかってきました。いずれの大会も敗因は1区の出遅れです。チームを率いる有川哲蔵監督も、1区の重要性を痛感しています。

有川哲蔵監督

「初優勝してもう一度、優勝したいという気持ちが選手も私自身も強すぎた。知らず知らずのうちにプレッシャーに感じていたし、調整の段階でオーバーワークになってしまってうまく調整ができていなかったのかなというところを感じている。1区をいかに強化するかということに重きを置きました」

 

自分が走って日本一に


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その1区での起用が見込まれるのがエースでキャプテンの田島愛梨選手です。田島選手はチームで唯一、1年生から全国高校駅伝のメンバー。去年は2区で起用され、9人抜きの区間3位の快走で序盤の遅れを取り戻しました。3位に終わった去年の大会のあと、田島選手はある決意を固めました。

 田島愛梨選手

「1区に対しての不安という部分はこの3年間、先輩方の走りを見てきてみんな持っていると思います。去年の都大路を終えて、自分が来年1区を走って日本一を勝ち取るという目標を立てました。プレッシャーに感じるのではなく、プラスにとらえて先輩方が越えられなかった壁を乗り越えたい」

 

留学生についていく練習で


1区は5つの区間の中で最長の6キロで、中間点を過ぎてからは上り坂になる難しいコースです。もともと1500メートルを得意とするスピードランナーの田島選手にとって、長い距離にでも対応できる持久力が課題でした。

そこで田島選手が取り組んだのは、ケニア人留学生のカリバ・カロライン選手と一緒に走るという“厳しい特訓”です。走力に差がある留学生ランナーと走ると、極端にオーバーペースになり故障などのリスクがあるため、これまで練習で日本選手が留学生について走ることをあまりしてきませんでした。それでも田島選手は一定の本数を決め、カリバ選手の走りについていくという密度の高い練習を積むことにしたのです。

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カリバ選手はことしの全国高校総体で、1500メートルと3000メートルの2つの種目で優勝するなど、高校生ランナーのなかでトップレベルの記録を持ちます。そのカリバ選手に離されないように走ることで、田島選手には、長距離での粘り強さが身についていきました。特訓の成果は、ことしの夏のトラックシーズンで結果としてあらわれ、全国高校総体の1500メートルでは、4位入賞の成績を残しました。

 田島愛梨選手

「カリバ選手の後ろからつかせてもらって、自分の持っている力を高めていけるように意識して取り組んできました。カロラインにつくことで、基準となるペースが上がったり、ふだんのジョグのペースも上がったりして成長することができたと思います」

 

馴染めなかった留学生の支えに


田島選手とカリバ選手の2人は、練習相手としてだけでなく、互いに“よき理解者”だと言います。田島選手は愛知県の出身。「駅伝で日本一になる」という夢をかなえるために、鹿児島の神村学園に進学しました。「縁もゆかりもなかったし、はじめは鹿児島弁がわからなくて」と入学当時を振り返ります。鹿児島で育った選手が多いなかで、親元を離れて寮生活。慣れない環境のなかで、先輩たちの支えが助けになりました。

kamimura4.jpgそんな田島選手は、日本語がなかなか習得できず、チームや学校になじむのに苦労していたカリバ選手を放っておけませんでした。カリバ選手と積極的にコミュニケーションを取り続け、精神的に支えてきました。今ではチームで一番の仲で、互いに高め合う関係だといいます。

田島愛梨選手

 「カリバ選手がチームに馴染めなくて、どう接すればいいのか難しい時期もありました。私が変顔をしてみたり、『この大会の目標は?』と声をかけたり、常に寄り添ってきました。今ではカリバ選手からチームに求めてくれることもありますし、チームを和ませてくれる存在でもあります」 

 

笑顔でフィニッシュテープを


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高校生活のなかで田島選手がカリバ選手と一緒に走る機会も残りわずか。この1年の集大成となる全国高校駅伝で、田島選手は1区、カリバ選手は最終の5区での起用が見込まれています。固いきずなで結ばれた2人が見据えるのは、もちろん「日本一」です。

  田島愛梨選手

「一緒に生活して、練習してきて自分を成長させてくれたのは、カリバ選手のおかげです。とても感謝しています。ここまで一緒に頑張ってきた成果として、私が1区でいい流れをつくって、最後はカリバ選手に笑顔でテープを切ってほしいです」

取材:松尾誠悟記者(鹿児島放送局)

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