2023年01月17日 (火)
全国男子駅伝 取材記 長野~チームの結束で再び、優勝をつかむ~
大会で最多8回の優勝を誇る長野。おととし、去年の中止を挟み、3年前に行われた前回に続く連覇を目指しています。
日本高校最高記録の佐久長聖軍団!
長野チームの高校生はすべて佐久長聖高校の選手たち。先月の全国高校駅伝では、惜しくも優勝を逃して2位となりましたが、総合タイムの2時間1分57秒は日本高校最高記録(留学生を含まないメンバーでの記録)となりました。
中心となるのは、キャプテンで3年生の吉岡大翔選手です。
全国高校駅伝の3区では22分51秒で走り、洛南高校(京都)の佐藤圭汰選手選手(現:駒沢大1年)が前の年につくった日本選手最高記録を更新しました。全国男子駅伝でも、強い思いを抱いて走ります。
吉岡大翔選手
「中学3年生の時、疲労骨折に苦しんでなかなか結果が出ず、全国男子駅伝にかける思いが強かった。長野チームの先生方に特別練習メニューを組んで頂いたりアドバイスを頂いたりしたおかげで、6区の区間賞を獲得できた。高校生として最初で最後の全国男子駅伝なので、どの区間を任されても、区間新記録を出して恩返ししたい」
2年生の永原颯磨選手も強い意欲を示しています。
全国高校駅伝では1区を任され、西脇工業(兵庫)の長嶋選手が飛び出す中、冷静な走りで、区間2位でたすきをつないで流れを作りました。全国男子駅伝は初出場です。小中学校時代から1年先輩にあたる吉岡選手の背中を見てきました。実家も2キロほどしか離れていないご近所どうしです。
永原颯磨選手
「自分が小学5年生の時、所属していた川中島ジュニアランニングクラブに、吉岡さんが入部してきた。初めての練習の時から、くらいつき方が半端なかった。その吉岡さんが中学生の時、全国男子駅伝で区間賞を取ったレースを見て感動した。今回自分がそんな走りをしたい」
団結力の象徴 年始の千葉合宿
長野チームは、年明けの4日から7日まで、千葉県富津市で合宿を行いました。大きな特徴は、一般の選手も可能であれば参加することです。箱根駅伝の5区山登りで6位と好走したばかりの早稲田大2年の伊藤大志選手も参加していました。
伊藤大志選手
「自分が中学生や高校生のとき、年明けの合宿には、実業団や大学生の選手が参加していた。レベルの高い長野チームに選ばれることは、率直にうれしいし光栄なこと。箱根の疲れは残っているが、当然合宿に参加した。頼りがいのある先輩と練習できたことは貴重な経験だったので、今回は自分が先輩として役割を果たしたい」
チームを率いる高見澤勝監督は、高校時代に出場した第5回で5区、大学時代には第6回と第8回で7区を走った経験があります。高見澤監督が高校生の頃から、合宿には大学生や社会人が参加していて、自身が大学生の時に参加したときの思い出も残っています。
高見澤勝監督
「当時の西澤民雄監督はじめ指導者の方々が長野チーム強化のために尽力し、千葉で合宿していたことを覚えている。千葉は気候が温暖で、おいしい海の幸を食べられるのが魅力。何より世代を越えて合宿することで経験を共有できるし一体感が生まれる。こうした伝統があるからなのか、社会人になっても長野チームで走りたいという選手が多いのも長野の特徴」
なんと!あのランナーが復帰
ことしは佐久長聖の卒業生で、2018年から立教大の監督を務め、チームを55年ぶりの箱根駅伝に導いた上野裕一郎選手が37歳にしてエントリーしました。
6年前の大会で優勝テープを切る上野選手
上野裕一郎選手
「自分は長野チームや男子駅伝に育てて頂いた。中止になったが、去年の大会の前から走らせてくださいと立候補していた。男子駅伝初出場は高校2年生の時、当時大学生の高見澤さんと同じ長野チームで走ったことを覚えている。当時の西澤監督や高見澤さんたちが今に続く、強豪長野の礎を築いてくださった。選んでいただいたからにはいい走りで恩返ししたい」
合宿で垣間見える 長野チームの強さ
長野チームの宿舎で取材をしていると、選手たちが草むしりを始めました。選手の1人に聞くと「佐久長聖の寮でも草むしりや清掃をしています。それと同じことを合宿でもしています」と説明してくれました。
高見澤勝監督
「まず一番に、お世話になっている宿舎の方々に感謝の気持ちを込めている。選手たちには当たり前のように感謝できる人間になってほしい。それと、環境が変わってもいつも通りのことをすることが試合にも通じる。大舞台で平常心を失うと、普段できていることができなくなることもある。合宿で日常のルーティンを崩さないことは、試合で自分の力を発揮することにもつながる」
この宿では、多くの高校や大学、実業団が合宿を行いますが、自主的に草むしりやゴミ拾いをするチームは他にはないそうです。
白井正志さん 美枝子さん
「長野チームの皆さんは私生活も挨拶もきちっとしていて好感を持てるし、宿をきれいにしていただき感謝している。レースは毎回テレビで応援している。うちの食事で栄養をつけていい練習をして優勝してくれたら、これほどうれしいことはない」
千葉からもエールを受ける長野チーム。初めて男子駅伝を走ることに緊張感を感じている選手もいますし、経験者でも優勝8回の伝統を誇るチームで走ることに気持ちが高ぶっている選手もいます。それでも平常心で持っている力を存分に発揮すれば、9回目の優勝が近づきます。
(取材:佐藤洋之 広島放送局アナウンサー テレビ実況担当
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