スポーツ

2021年08月23日 (月)

野球部にみずからの夢を託して

 2年ぶりに開催された夏の全国高校野球。感染者の急増で、学校関係者に認められた甲子園球場への入場も、日に日に制限が厳しくなっていますが、スタンドには、新型コロナウイルスの影響でかなえられなかったみずからの夢を野球部に託して、エールを送る高校生もいました。

コロナで閉ざされた全国大会への道


 21日に2回戦に臨んだ山梨の日本航空高校。三塁側の内野席で試合を見届けた応援団の中に、女子バスケットボール部のキャプテン、荒井しおんさん(18)がいました。

arai.png

日本航空高校は、同じ敷地にある付属の中学校と合わせて、およそ700人の生徒が通っています。ことし6月、校内で新型コロナウイルスのクラスターが発生し、最終的な感染者は、生徒や教職員など合わせて90人以上にのぼりました。荒井さんが所属する女子バスケットボール部は、去年冬の全国大会に初出場し、次の目標をこの夏の全国高校総体においていました。しかし、校内で感染がひろがったことを受けて、すべての部活動の休止を余儀なくされ、女子バスケットボール部は全国高校総体の県予選を辞退することになりました。目標の舞台への道が閉ざされてしまったのです。

kousha.jpg

救いになった野球部の活躍


荒井さんは「全国高校総体に向けてたくさん練習していたので、モチベーションというか、どこを目指せばいいのかわからなくなりました」と当時を悔しそうに振り返ります。涙が出るほど苦しくなる日々が続いたという荒井さん。そんな中で、心を救われた出来事がありました。校内での感染がおさまった先月、野球部が夏の全国高校野球の山梨大会を勝ち抜いて、13年ぶり6回目の甲子園出場を決めたのです。野球部のキャプテン、久次米陸士選手は、2年生の時のクラスメイトでした。壮行会で「クラスターで出場辞退となった仲間の分まで全力で頑張ります」と、コロナの影響で悔しい思いをした他のクラブを思って述べてくれた決意が、荒井さんは心の底からうれしかったと言います。

soukoukai.jpg

甲子園に詰まった高校生たちの熱い思い


1回戦を突破した日本航空。きょう行われた愛媛の新田高校との2回戦も、スタンドでの観戦が認められ、荒井さんも応援に駆けつけました。自分たちが立てなかった全国大会の舞台。荒井さんは「コロナで、全国高校総体に出られなくなった私たち、女子バスケットボール部を含め、他の部活の分まで戦ってきてほしい。日本航空の代表として、頑張って欲しい」と野球部に、みずからの夢を託していました。

araiouen.png 野球部も荒井さんたちの思いに応えました。4回、3連続ヒットなどで3点を奪い、続く5回には、キャプテン久次米選手のヒットを足がかりに追加点を奪いました。投げては、先発したヴァデルナ投手が3失点で完投。5対3で勝ち、3回戦に進みました。

caphit.jpg試合後、久次米選手は、スタンドの応援団について、「応援があることで、自分たちの持っている以上の力が出せました。山梨大会の時から、全国高校総体の予選をはじめ、夏の大会を辞退した仲間の分までという思いでずっとやってきたので、今日も勝つことができて、良いところを見せられてよかったです」と話していました。一方、荒井さんは、「勝ってくれて、すごくかっこよかった。女子バスケットボール部の分まで、頑張ってくれたんだと思いました。入場制限が厳しくなるため、次の3回戦からは応援に行けないけれど、このまま勝ち進んで、ぜひ優勝して欲しい」と話していました。

arairimo.jpg

夢を託して必死に応援した荒井さん。そして、その応援に応えようと懸命にプレーした久次米選手たち。2年ぶりに開催された夢舞台、甲子園には、コロナ禍で苦しむ高校生たちの熱い思いが詰まっています。                               

 

 

 

 

 

高校野球 ブログ一覧

もっと見る

高校野球 ニュース一覧

もっと見る