連続テレビ小説「スカーレット」

特集記事

作・水橋文美江さんインタビュー

2019年10月12日(土)

ひとりの女性の人生にじっくりと取り組めることがとてもうれしい
blog_special_mizuhashi_sensei_01.jpg -本作の脚本を担当されることが決まった時のお気持ちを教えてください。

制作統括の内田(ゆき)CPから「"朝ドラ"に興味がありますか?」というメールを突然いただいて、「あります、あります」と速攻でお返事して、速攻でお会いしました。とても光栄でうれしかったのですが、なかなか実感がなくて。「本当に書くんだ」と思ったのは、実際に書き始めてからですね。
ひとりの人物を幼少期からずっと書くという作業は、とてもやりがいがあります。よく「"朝ドラ"は大変」といわれますが、私の場合は「これだけに集中すればいいんだ」と、ほかのことを考えずにすむのがうれしいです(笑)。3か月1クールのドラマなどでは時間に追われて慌ただしく過ぎていくことも多いのですが、"朝ドラ"は1年以上かけて取り組めるので、私にとってはそこがこの仕事の大きな魅力の一つだと思っています。


ドラマチックな演出は一切ナシ。登場人物の気持ちをこまやかに丁寧に紡いでいます
-"朝ドラ"の脚本は、ほかのドラマの脚本と違いますか?

書き始めてから半年以上たちましたが、15分間を書く、ということにはまだ完全には慣れてないですね。毎日の完結と週ごとの完結が必要な"朝ドラ"はやはり特別な枠だなと実感しています。そして今までのノウハウが通用しないなぁとも感じています。私が脚本家になった頃はいわゆるトレンディドラマが受け入れられていた時代で、現実から少しかけ離れたドラマチックなシチュエーションを考えたりしたものですが、今は見る側の意識も変わってきていますので、これまでのノウハウはいったん置いて、新人になったつもりで、登場人物の気持ちをこまやかに丁寧に紡いていく作業に取り組んでいます。とはいえ、当初は物書きのスケベ根性で、多少あざといシーンや変わった名前など提案したのですけど、内田CPと中島(由貴)チーフ監督にことごとく却下されました(笑)。昭和にそんな名前はありませんと。今となってはキラキラネームとかをつけるチームじゃなくて良かったと思っています。
「スカーレット」には優しい人たちがたくさん出てきますが、それは、「スカーレット」を作っている人たちがみんな優しいからなんですよ。


「川原喜美子人生劇場」なので、なかなか陶芸家にはなりません
blog_special_mizuhashi_sensei_02.jpg -「スカーレット」はどんな物語ですか?

ひと言で言うと「川原喜美子人生劇場」ですね。私は個人的に有名無名問わず20人近くの陶芸家に取材をしましたが、女性陶芸家を描くというよりも、喜美子がやりたいことをたどっていったその先に陶芸があった、という描き方にしています。ですから、なかなか陶芸家にはなりません(笑)。まだ、今は一生懸命に生きている喜美子の人生を私自身も丁寧に一生懸命追っているところです。
もうひとつ言うならば、心底悪い人は出てきません。やはり"朝ドラ"なので、見てくれる方々に元気になってもらいたいというのが、私を含め制作陣の思いです。


お芝居に関しては全幅の信頼を寄せてお任せしています
blog_special_mizuhashi_sensei_03.jpg -戸田恵梨香さんはじめ出演者のみなさんの印象は?

戸田さんとお仕事をご一緒するのは今回が初めてです。初めてお会いしたのは制作発表の時。ほんの10分ほど立ち話をしただけですが、聡明で、サバサバとした気持ちのいい方だなという印象です。 それ以前に、戸田さんがご出演された映画やドラマを拝見していましたので、お芝居に関しては信頼してお任せしています。
実はこの物語を着想してから、「できればヒロインは戸田さんに」と内田CPと話していたので、念願かなってうれしいです。とはいえ、私は当て書き(その役を演じる俳優を決めてから脚本を書くこと)はしないので、まず私が描く喜美子が基本にあって、それを内田CP、中島監督、演出チームに渡して、話し合い、さらにそれを戸田さんが肉づけされて、さらにほかのスタッフ全員の愛情が込められて、前向きで明るく竹を割ったような性格の喜美子ができていくという感じですね。みんなで作った喜美子です。

ほかの出演者のみなさんも巧みな方が多いので、北村(一輝)さんも富田(靖子)さんも財前(直見)さんもマギーさんも「お上手なんだろうな」という絶対的な安心感がありますし、林(遣都)さんも大島(優子)さんも、もはやベテランの域ですし。佐藤隆太さん、大阪編の水野美紀さん、溝端淳平さんとは以前ご一緒したことがあるので、なおのこと、信頼感があります。お名前をあげてない出演者のみなさんすべて、芸達者がそろっていますので、私のほうはいつも安心しきって、のびのびと書かせてもらっています。

不快な人間もあざといシーンも一切出てきません
blog_special_mizuhashi_sensei_04.jpg -最後に視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

先ほども言いましたが、私が脚本家としてのサービス精神で少しでもドラマチックにと、あざとい要素を入れようとすると、内田CPや中島監督、演出チームから「そんな劇的にしなくてもいいです」と言われるのです。登場人物に対して、とても誠実な本作りをしてくれます。奇をてらわずに、喜美子の気持ちを大切にしながら、ごく自然な感覚で追っていくと、自然と誰かを好きになったり、やりたいことが見つかったり。それが結果的にドラマチックな出来事になっているという、それが「スカーレット」らしさかもしれません。また、そんな喜美子を通して「仕事を持っている女性の人生」を丁寧に描き出そうとしていますので、共感をもっていただき、応援していただけたら、うれしいです。そして、喜美子はもちろん、どの役も、みなさんに愛していただけるように、人間的なかわいらしさを大切に、ということを心がけています。不快な人間はひとりも出てきませんし、あり得ないようなあざといシーンを作り込んだりもしていませんので(笑)、ぜひ安心して楽しんで見ていただき、朝から元気になっていただけたらと思います。


水橋 文美江[プロフィール]
石川県出身。中学生のころから脚本を書き始め、フジテレビヤングシナリオ大賞への応募をきっかけに、1990年脚本家としてデビュー。NHK名古屋「創作ラジオドラマ脚本募集」佳作、橋田賞新人脚本賞を受賞する。映画、ドラマの脚本を数多く手がけ、代表作に『夏子の酒』『妹よ』『みにくいアヒルの子』『ビギナー』(フジテレビ)、『光とともに』『ホタルノヒカリ』『母になる』(日本テレビ)、『つるかめ助産院』『みかづき』(NHK)など。