連続テレビ小説「スカーレット」

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連続テレビ小説「スカーレット」ポスター制作秘話

2019年9月21日(土)

ヒロイン喜美子役・戸田恵梨香さんのまっすぐな表情と大きなつぼが印象的なメインポスター。そして、18人のメインキャストと焼き物のモチーフが喜美子をにぎやかに取り巻くキャストポスター。2つのポスターはどのような思いで制作されたのでしょうか。今作のロゴ、ポスター、オープニングのタイトルバック映像のすべてをアートディレクションされたクリエイティブディレクターの川村真司さん、ロゴ・ポスターのデザインを手がけられたデザイナーの高谷優偉さん、そして、喜美子役・戸田恵梨香さんにポスター制作時の裏話や感想をお聞きしました。

アートディレクション
Creative Director
川村 真司
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数々のブランドのグローバルキャンペーンを始め、プロダクト、テレビ番組開発、ミュージックビデオの演出など活動は多岐に渡る。カンヌ広告祭をはじめ数々の賞を受賞し、アメリカの雑誌Creativityの「世界のクリエイター50人」やFast Company「ビジネス界で最もクリエイティブな100人」、AERA「日本を突破する100人」などに選出されている。

“陶芸”“スカーレット(緋色/ひいろ)”がひと目で分かるものに
「今回、タイトルバック映像とロゴ、ポスターをまとめてアートディレクションさせていただきました。“朝ドラ”ならではのハッピー感、ポジティブ感を大切に、温かみのあるものにしようというのが全体の方向性です。

芯が強く包容力のあるヒロインが、女性初の信楽焼の陶芸作家となり仲間と共に生きていくというお話だとお聞きしましたので、そこをベースにまずロゴの制作から取りかかりました。

『スカーレット』というのは、伝統的に炎の色とされる緋色(ひいろ)、つまり、窯の炎や焼き物の赤茶色がベースになっているとお聞きしたので、それを凝縮して表現しているものにしようと考えました。つまり『陶芸に関わる話』『緋色(ひいろ)/赤』がひと目で分かるように。

メインポスターは奇をてらったものではなく、ヒロインとつぼのセットというシンプルな表現を目指しました。喜美子=主演女優、つぼ=助演女優というイメージの位置づけです。
撮影時の戸田さんの、トーンの理解の早さには驚かされました。こちらが説明後すぐに撮影に入ったのですが、狙った通りのポーズや表情をすぐにいただけて、30分くらいで撮影は完了しました。

キャストポスターはこれだけの豪華なキャストがそろっていることをひとめでお伝えするために、キャストのみなさんの顔にフォーカスし、様々なキャラクターを様々な焼き物で表現しています。

メインポスターとキャストポスターの趣は異なるものの、共に背景色を淡い茶色に合わせることで同じ世界観を感じるものになったのではと思います。

デザイン
Senior Designer
高谷 優偉
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Cannes Lions、The Webby Awards、ADFEST、文化庁メディア芸術祭、グッドデザイン賞、Tomorrow Awards 他、多数受賞。

logo_scarlet_RGB.jpg焼き物モチーフをアクセントにしたロゴ
「ロゴのデザインですがいわゆる陶芸っぽい筆書きのもの、窯をイメージしたもの、焼き物のモチーフが散らばっているものなど10種類ほど提案した中で、文字と焼き物モチーフを絡めたもの、という方向性が決まりました。

文字部分は伝統的なフォントをベースにして『芯の強さ』を、イラスト部分でヒロイン・喜美子の『おおらかさ』を表現しました。

色に関しては、フォントベースのところははっきりと分かりやすい赤にし、焼き物モチーフの部分は赤寄りのオレンジ、差し色に緑を使いました」。

main_ol_4-_rgb.jpgメインポスターのテーマは「喜美子とつぼ」

「メインポスターのデザインは当初、シンプルにつぼと向きあっているストイックなものと、たくさんの信楽焼きに囲まれた楽しい人生を表現したものの、大きく2パターンありました。
それぞれを『喜美子とつぼ』『信楽焼に囲まれて』って僕たちは呼んでいたのですが(笑)。

『スカーレット』は焼き物だけの話ではなく、喜美子の人生そのものに寄り添ったものなので、
『信楽焼に囲まれて』では焼き物感が強くなりすぎるということもあり、『喜美子とつぼ』案に決まりました。
『喜美子とつぼ』も“朝ドラ”のポスターとしてはストイックすぎないかという意見もあったのですが、喜美子と焼き物との関係性をストレートに描き、また『スカーレット』という色を印象的に表現したアイコニックなものにしたかったので、このようなシンプルなデザインにしました。

つぼに関しては、ひと目でつぼと分かる形、完成品ではなく焼く前のもの、という部分は満場一致で決まりました。難しかったのはサイズです。大きすぎるとつぼに目が行きすぎてしまい、小さすぎると存在感がなくなってしまう。そこで大きさや高さが違うつぼを3パターン用意してもらい、撮影現場で一番しっくりくるものを選びました。

衣装は前掛けや、着ざらしのワークシャツ、ワンピースなど数種類を用意しました。メインポスターの衣装はドラマの中で喜美子が着ているものとは違いますが、例えばワークシャツやデニムなどを着ると、ポスターとドラマの世界に大きなかい離がおきてしまいます。そこで、意味合いが強すぎない抽象的な赤い衣装がよいのではないかということになりました。

IMG_8032.jpgIMG_8072.jpg撮影では、あぐらをかいてもらったり、後ろに手をついてもらったり、いろいろなポーズをとってもらいました。その中で、柔らかい表情でありながら、芯を持ってまっすぐと前を見据えつつ、おおらかに大胆にひざを立てる、そのバランスが絶妙だった写真をメインポスターに使用しました。撮影している時も、この写真がいいと感じていました。こちらの意図を組んでポーズをとる戸田さんの勘の良さは本当にすばらしかったです」。

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キャストポスターには各キャラクターをイメージしたつぼのモチーフを
「キャストポスターは、第一に18人のメインキャストの顔をきっちり見せたいというオーダーがありました。グリッドに切るのが、一番、顔を大きく見せることができるのですが、それではおもしろみにかけますし、陶芸というところを考えるのならば、キャストの方々の背景をつぼの形で区切るのがいいのではないかと思い至りました。

すべての方のキャラクターをつかめていた訳ではないのですが、分かっている人についてはそのキャラクターをイメージしたつぼの形にしました。
例えば、北村一輝さん演じる喜美子の父・常治さんは、おおらかだけど厳格なので、少し角張った形に。富田靖子さん演じる喜美子の母・マツさんは柔和で優しい方なので、角は出さずに丸い形にしよう、という風にデザインをしていきました。

喜美子を中心にほぼシンメトリーな配置なのですが、背景のつぼの形や長さを左右で変えてみたり、つぼの間にちりばめたモチーフで強弱をつけたりしました。

メインポスターは、透明感のある感じに仕上げましたが、キャストポスターは、健康的なあたたかさを持ったトーンに仕上げました。

“朝ドラ”のロゴとポスターという、こんなにも世の人たちの目に触れるものを作らせていただくという機会はなかなかないので、2018年末から約9ヶ月近く、真摯に向きあって作らせていただきました。ドラマの良さがこのロゴやポスターを通して少しでも多くの方に伝わればうれしいです」。


「大きな木が強く柔らかく立っているイメージ」 ~ヒロイン喜美子役・戸田恵梨香~

「メインポスターは撮影時には気が引き締まるような思いで、また、ここからドラマが始まるんだという自覚も湧いてきました。ポスターの撮影は、大阪ではなく、京都の撮影所でドラマの撮影をしている期間に行われたのですが、『スカーレット』の象徴となる大切なポスターの撮影を京都という特別な場所でできてよかったなと思いました。

撮影時には喜美子の設定年齢などを確認したのですが、そのあたりはあまり明確にせず、本当にイメージ的なものにするとお聞きしました。衣装も劇中のものとは違います。
喜美子の強さや明るさを“一本の大きな木が立っている”というイメージで表現できたので、いいものができたなとうれしく思っています。

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いくつかのポーズを取ったのですが、撮影しながらもこのポーズが一番いいな、しっくりくるなと思っていたんです。立てひざをしながら背筋をすっと伸ばしているというこの姿勢は、大きな木がのびのびと強く柔らかく立っているというイメージだったので。

そして、仕上がりを見るとこの写真が使われていたので、制作の方たちと自分の意図がリンクしたんだなということが分かり、うれしかったです」。