おはよう関西

2021年03月24日 (水)

【ウェブ記事】"エンタメの灯を守りたい" 劇場の経営者の奮闘

連続テレビ小説「おちょやん」の舞台にもなっている道頓堀は、江戸時代からエンタメの街として人びとを引きつけてきました。

新型コロナの影響で厳しい状況が続く中、「道頓堀のエンタメの灯を守りたい」と奮闘を続ける男性を取材しました。

 

取材:佐々木祐輔ディレクター(NHK大阪)

 

【若手に芸を磨く場を提供したい 自身の経験から劇場始めた代表】

 

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大阪ミナミの劇場「道頓堀ZAZA」は、コロナ前、お笑いライブや演劇など2つの劇場で年間およそ4000の公演を行ってきました。関西の駆け出し芸人の“登竜門”として知られ、お笑いコンビの「ミルクボーイ」や「アインシュタイン」などもここで芸を磨いてきました。

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劇場の代表を務める吉元常洋さんは、20代のころ役者を志し、当時上方芸能を代表する女優、ミヤコ蝶々さんに弟子入りしました。脇役で終わりましたが、道頓堀の舞台を踏んだこともあったといいます。その経験から、舞台を志す多くの人に芸を磨く“場”を提供したいと、劇場を始めました。

 

吉元常洋さん

「やっぱり(役者を)やめたときにがっかりしたんでしょうね。そういう場がなかったんでしょうね。

どれだけたくさんの出演者さんアーティストさんたちが、活躍できるのかそういう場を自分のなかで作りたいと」                          

 

【苦境の劇場 “人が来ず”稼働率3割以下に】

 

しかし、吉元さんの劇場は苦境に直面しています。

週末行われているのは30分600円で見ることができる、駆け出し芸人のお笑いライブです。劇場の前で芸人自らが呼び込みを行います。

新型コロナの感染拡大前は観光客を呼び込むことで多くの集客が見込めましたが、いまでは人通りは激減し、呼び込む相手がいないのが現状です。

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30分呼び込みを続けましたが、入った客はゼロ。この日最初の公演は中止となりました。

 

コロナ前、9割以上だった劇場の稼働率は3割以下になり、去年8月には3つあった劇場のひとつを閉館せざるをえませんでした。

吉元常洋さん

「たかくくってたとこありました。暑くなれば収束するであろうというほんとたかくくってました」

 

【“エンタメのまち” 道頓堀で劇場を続けたい理由とは・・・】

この1年、資金の借り入れなどして何とか劇場を続けてきた吉元さんには、この場所をなんとしても守りたい理由がありました。

道頓堀は、かつて5つの芝居小屋(浪花座・中座・角座・朝日座・弁天座)がならび、「道頓堀五座」としてにぎわってきました。劇場は5座の1つ、多くの名優が活躍した旧中座の跡地にあります。

今も劇場が入っているビルの地下2階には、芝居の神様「おたぬきさん」がまつられています。「おたぬきさん」はかつて中座の舞台の下にあり、当時の役者たちが公演の成功を祈って開演前に手を合わせていました。

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吉元さんの師匠、ミヤコ蝶々さんはかつて中座を愛し、晩年には「お金があったら中座の土地を買い取りたい」と考えていたということです。かつて自身も役者を志していた吉元さんは今、公演する“場”を受け継いでいきたいと考えています。

吉元常洋さん

「私らなんかが手を合わせるような場所ではなくて座長の有名な方々が手を合わされてたっていうのは見てました。そういえばここに中座あったんやなと、若いときにちょっとだけ出させていただいなというのは私の中では残ってますけどね、私なんかが思い出を語れるような場所じゃないです。」

 

【道頓堀のエンタメの灯を絶やさない 吉元さんたちの生き残り策】

危機を乗り越えるため、吉元さんは、一見の観光客に頼るのではなく、固定客が見込める公演を増やしていこうと考えています。その切り札が「OSK日本歌劇団」のOGが出演する舞台です。

およそ100年の歴史を持つOSKは昭和初期には宝塚歌劇団と肩を並べる人気を誇り、今も根強いファンがいます。

コロナ前は、公演終了後の出待ちで、ファンと劇団員による交流がありましたが、現在は感染防止の観点から中止に。さらに、客席からの声援を制限せざるを得ません。どうすればファンに喜んでもらえるのか、吉元さんは出演者らと話し合いを行いました。

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吉元常洋さん

「どういうふうな形を皆さんに提供すれば、この舞台に立っていけるのか考えていかなあかんと思うんですよ」

元OSKのOG

「お互い支えあってよくなればいいなっていうのはすごく思います」

吉元常洋さん

「結果としてそれが何かまた新しく生まれていけば、レギュラーになっていくやろうし」

 

公演の日。客にはマスク着用と検温を徹底し、座席数も半分に減らしました。

ファンに楽しんでもらうために打ちだしたのは・・・。

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ペンライトの配布です。出演者自らが考案、アイドルの公演や他の歌劇団で使われているのを参考に、初めて取り入れました。客が声援を送れない中でも、舞台との一体感を高めようという演出です。

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久々に会場の熱気を感じた吉元さんは、今後演出をさらに練り上げ、劇場を支える公演に育てていきたいと考えています。

 

吉元常洋さん

「出演されておられる方々は生き生きしているし、お客さんも非常に前のめりで、目を輝かして見てるし、

 空気感で伝わってくるので、劇場やってるということの喜びは感じましたね」

 

今後吉元さんは、歌劇など他のジャンルの舞台の前後にお笑いライブの公演を行い、

そちらへの集客にもつなげていきたいと考えているということです。。

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取材後記

これまで劇場に行ったことはほとんどありませんでしたが、今回何度か見学させていただく機会をいただきました。様々なジャンルの公演が行われていましたが、出演者やお客さんの息づかいを感じることができ、舞台と客席が近い小劇場ならではの一体感がありました。

道頓堀のエンタメの灯を守るためにも、興味を持っていただいた方はぜひ足を運んでいただければ幸いです。

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