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廣田碧さん「ポスターは番組を見るきっかけとなるもの 多くの方に受け入れてもらえる作品をと考えました」

インタビュー

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グラフィックデザイナーとして活躍するかたわら、大阪を拠点に多彩な活動をしている廣田 碧(ひろた みどり)さん。担当した番組ロゴとポスターについて、制作秘話を教えていただきました。

 

舞台は100年前、でも最新の“朝ドラ”を意識

「おちょやん」のロゴは文字の読みやすさを第一に、寄席文字など日本の伝統的なエンターテインメントによく使われている書体をイメージしながら作字しました。竹の節の間に文字が入っています。竹はとても生命力の強い植物。「おちょやん」という言葉にはちっちゃいとかかわいらしいというニュアンスもあるんですが、制作チームと話し合いを重ね、かわいいだけじゃなく「泥臭く、力強く生き抜いていくさま」を表現しよう、と竹を選びました。

 

杉咲 花さんの姿に目が行くよう、青っぽい背景に対して赤系の着物と、色合いに差を付けています。衣装さんには何通りもの衣装を探していただきました。最終的に採用したものは大正時代によく着られていた柄で、先染めの糸から作られた着物なんだそうです。

物語の時代は大正から昭和で、ヒロインも着物姿。ですが「2020年に放送される、最新の“朝ドラ”」ということは常に意識していました。ポスターは番組を見るきっかけになるものなので、幅広い皆さんに受け入れてもらえるようにと。

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書き割りの制作は、父との共同作業

背景は「書き割り(大きな板に絵を描き、舞台背景として使われるもの)」で、芝居小屋の内部と植物、鶏を描いています。芝居小屋は浮世絵を見て構造を参考にしたり、四国の金丸座(香川県に現存する、日本最古の芝居小屋)の写真を見せていただいたりして参考にしました。花は菊とぼたん。ほかにみかん、紅ずいきなど。ヒロインの故郷、大阪の南部で栽培しているものや、季節のものを中心に選びました。
これらの書き割りは父とふたりで、NHKのスタジオで描かせてもらいました。

 

ペンキ絵などの職人の技ってそれぞれの経験がもとになっていて、技術が書かれた本があるわけではないんです。どこかから聞いてきた話をもとにして工夫していたり、自分で試して「あの筆がいいぞ」なんて。今回の作業中には、長年NHKの背景制作をされているベテランの方が時々見に来てくださって。緊張しましたがお話を聞いてとても勉強になりました。

 

 

技術や構造、さまざまな「掛け合わせ」

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左下のタヌキの置物は実物です。右奥にある笹も。今回は俳優さんがドラマの中で俳優を演じるという、なんと言っていいのか、不思議な構造がありますよね。ポスターも「ファンタジーと現実の境目のようなことを意識していて、平面(書き割り)と立体が混ざっている感じを意図的にやっています。このタヌキ、芝右衛門狸(しばえもんだぬき)という淡路島の洲本出身のタヌキなんですよ。撮影を担当したカメラマン・濱田英明さんがそこのご出身で、「演劇界ではちょっと有名なタヌキみたいですよ」って教えてくださって。そうしたら偶然、セットの中に飾ってあるのを見つけて(笑)。これ使いましょうってなりました。

 

今回のポスター、私のこれまでの作品の中でいちばん多くの人の目に触れることは間違いありません。書き割りとして絵を描き、字を作り、デザインをし、今、自分にできることを精いっぱいやらせていただいたポスターとなっています。

 

プロフィール

廣田 碧(ひろた みどり)

デザイン事務所でグラフィックデザイナーとして活動後、2015年から家業である看板屋「看太郎」の2代目を継ぐ。店舗やブランド、イベント、展示などのロゴ・CIのデザインを手がけながら、看板を主軸に、手描きのレタリングやドローイング、グラフィックといった平面のデザインを、さまざまな素材・媒体を用いて空間へ展開することを試み、デザイン→製作→施工までの工程を一貫して担う。看板が持つメディアとしての可能性を探求するための自主企画として『超看板』を2017年(大阪)と2020年(東京)に開催、現在は衰退しつつある看板のペイント技術の普及も目指している。