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2023年02月17日 (金)

働かずに生きていく!?「FIRE」を目指す人たちの本音

番組では、みなさんからの声を募集します。
FIREの印象や働くことに対する思いを、コメント投稿フォームにお寄せください。

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投資などの収入で暮らし、会社を早期退職する「FIRE」という新しい生き方が広がりを見せています。

「FIRE」はもともとアメリカで生まれた新たなライフスタイル
Financial Independence, Retire Early” の頭文字をとったものです。
直訳すると「経済的な自立と早期退職」。生活に必要なお金を不動産や株の投資などでまかなって会社からの給料に頼らずに自立すれば、早くに仕事をやめて残りの人生を働かずに生きていけるというものです。

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当然、投資には失敗のリスクもありますが、いま各地で開かれているFIREに関するセミナーは、若者を中心に毎回盛況。
なぜ、いまFIREを目指す動きが広がっているのか。そして私たちの働く意味とは何なのでしょうか?

FIRE生活を手に入れた人、FIREを目指している人、約20名に取材。
その生活の実態や目標、働くことに対するいまの思いを聞きました。

FIREしたあとはどのような生活を送っているのか

まずは、FIREを達成した人たちに今の生活について聞きました。

名前(ペンネーム)
(年代/家族構成/(元)勤務先/投資方法)

穂高唯希さん
4年前にFIRE達成
(30代/妻/元会社員/株式投資)

株を中心に投資を続け、約7000万円の資産を得てFIREを達成しました。いまは、投資などに関する書籍の印税、講演やブログの収入などがあります。年によって変動はありますが、昨年は会社員時代の倍くらいになりました。FIREを達成した後は主体的にやりたいことを決めています。農家のもとで農業を学んだり、趣味の登山や水泳をしたり、好奇心の赴くままに各地の資料館や博物館などに行くこともあります。今日はこれ学んだなという実感は、充実感につながると感じています。

桶井道(おけいどん)さん
2年半前にFIRE達成
(40代/独身/元会社員/株式投資)

今は年間240万円ほど入ってくる株の配当金などで生活しています。朝、目覚まし時計なしで自然に目覚め、通勤電車とは無縁のこの生活がとても幸せに感じています。父が難病のため介護が必要ですが、時間やお金を気にせずにケアに専念することができます。何かに強制されるのではなく、自分がやりたいこと・好きなことに時間が使えることがなによりの喜びです。

イッセイさん
4年前にFIRE達成
(40代/妻・子/元メーカー/不動産投資)

生活は180度変わりましたね。お金の心配と時間の拘束がないというのが大きいです。スーパーに行って前まではちょっと高くて買わなかったものも、いまは迷わず買えます。逆に人の目を気にしなくなって見栄を張るためのものは買わなくなりました。以前はメーカーの営業として働いていましたが、そこで上司から「そんなスーツじゃだめだ」とか「もっといいネクタイしろ」とか言われていたのでその反動かもしれません。(笑)

FIREを目指したきっかけ

一方で、投資には利益が出ない可能性も、資産が減ってしまうリスクもあります。
そのリスクを負っても、仕事をやめてFIREを目指すのはなぜか。
話を聞いていくと、いまの職場環境や将来に対しての不安の声が多く挙がりました。

桶井道さん
2年半前にFIRE達成
(40代/独身/元会社員/株式投資)

会社の中で結果を残しても収入が上がらなかったのが大きな理由でした。私が従業員数千人の中で営業成績トップをとったときも、社内で表彰されただけで昇給も賞与への反映もなく、会社が過去最高利益をあげたときも従業員への還元はありませんでした。あれだけ頑張ったのに「やりがい」でごまかされていることにとてもがっかりしたのを覚えています。

堀川信夫さん
5年前からFIREを目指す
(30代/妻・子2人/市役所/株式投資・不動産投資)

今の仕事の上層部の一言ですべてが決まってしまうというトップダウンな体質が自分に合っていないと思ったからです。上司を見ていると仕事の大変さと給料が見合っていないなと感じましたこともあります。転職をしても待遇がよくなるとは限らないので、家族がいる中でそのリスクはとれないと思いFIREの道を選びました。株式投資もある程度勉強すれば自分で不確定要素をコントロールできますし、銘柄やタイミングを分散させることでリスクを減らすことはできます。個人的には転職よりもリスクは低いと考えています。

イッセイさん
4年前にFIRE達成
(40代/妻・子/元メーカー/不動産投資)

妻が病気で倒れたときに、子どもの面倒を見ながら仕事をしていて、自分もストレスと疲労で倒れてしまったんです。病院のベッドにいるときに「僕が稼げなくなったら、もうこの家は終わるな」と思ったことがきっかけです。サラリーマン以外で、自分が動けなくても稼げる収入源を作る必要があると思い、いろいろ模索する中で出会ったのがFIREという生き方でした。

大東さん
今年4月にFIRE達成予定
(40代/妻・子2人/元ハウスメーカー/不動産投資)

仕事自体は好きだったのですが、ついこの間まで6年間単身赴任をしていて、さらに土日に働かないといけない仕事だったため、子どもたちとか家族と一緒にいる時間がとれず、本当に会社に勤めている意味がよくわからなくなってしまったというのがきっかけですね。FIREをすれば自分の人生の時間の使い方の幅が広がるんだろうなと思ったんです。

戸田裕子さん
3年前からFIREを目指す
(30代/独身/製薬会社/株式投資・不動産投資)

将来不安が一番大きいです。今の職場は人間関係も悪くないし環境もいいんですけど、今の会社では給料アップは見込めない。なのに物価は上がっている。知らず知らずのうちに相対的に貧乏になっているというところで不安が大きいです。

FIREを達成するためにやっていること/やっていたこと

続いて聞いたのが、FIREを達成するまでどんな生活を送ってきたかです。
FIREに欠かせない資産運用の知識や資産を増やすために行っていた工夫。
そして多くの方が、将来のために日々の倹約を心がけていました。

堀川信夫さん
5年前からFIREを目指す
(30代/妻・子2人/市役所/株式投資・不動産投資)

毎月の手取りは30万円ほどで、そのうち半分くらいを株式投資や投資信託に回しています。不動産は35年ローンで4軒所有していて1軒あたり1万円ほどの利益を生んでいます。今の資産は3000万円ほどで50歳になるまでに2億円ためてFIREすることが目標です。月1回の勉強会やセミナーに参加して投資や税金の勉強をしています。家計簿は私がつけていて妻からは「金の亡者」と呼ばれています。(笑)

イッセイさん
4年前にFIRE達成
(40代/妻・子/元メーカー/不動産投資)

不動産投資をするにしても当時はお金があまりなかったのでスピードで勝負するしかなくて、いい物件を買うために不動産サイトを1日に何度も見たり、住宅情報誌が一番早く並ぶコンビニを探して誰よりも早くチェックしたりしていました。不動産はまだまだアナログなところもあるので。あとは不動産に飛び込みするとか、とにかく行動をしていました。

穂高唯希さん
4年前にFIRE達成
(30代/妻/元会社員/株式投資)

FIREという目標を達成するためには継続することが大事だと考え、毎月の株の配当収入をグラフに集計して可視化していました。配当金が増えて右肩上がりのグラフを見て、継続する意欲が増し、経済的自由に近づいている感覚も持てました。

桶井道さん
2年半前にFIRE達成
(40代/独身/元会社員/株式投資)

当時の年収は400万円台だったので、節約のために固定費のカットに強い意識を持っていました。携帯電話は格安スマホ、散髪も格安店。コンビニは使わない、飲み会は2次会には行かないなど心がけていました。ただ、何かひとつ自分を満足させる分野については支出をおおめに見ていました。ライブハウスに行くのが趣味で一時期は仕事帰りに毎週のように行っていました。

中里真衣さん
去年からFIREを目指す
(20代/独身/看護師/不動産投資)

動画配信サービスを解約したり、コンビニにはいかないようにしたり、節約を心がけています。これまでは仕事のストレス発散で洋服をたくさん買っていたのをやめました。その中でも、交際費は減らさないようにして、職場の先輩と投資の話をして情報共有しています。

FIREしたあとにどのような生活を送りたいか

FIREを目指す人たちは、将来どんな生活を夢みているのでしょうか?
働かないことを選ぶ人だけではなく、お金に縛られずに働きたいという方もいます。

大東さん
今年4月にFIRE達成予定
(40代/妻・子2人/元ハウスメーカー/不動産投資)

これまで家族と過ごせていなかったので、FIRE後は徹底的に子どもとの時間を大事にしたいです。息子が春から高校3年生で甲子園を目指して野球をやっているので、FIREしたらまず夏までは息子の応援にささげたいですね。

中里真衣さん
去年からFIREを目指す
(20代/独身/看護師/投資信託・不動産投資)

本当はアパレル業界に行きたかったけど、安定している仕事に就きたいと今の看護師の仕事を選びました。FIREを達成したら自分のやりたかったアパレル業界にかかわってみたいです。

米谷優さん
2年前からFIREを目指している
(30代/妻/翻訳会社/不動産投資)

10代の頃からスキー選手をやっていて、引退して民間企業に就職したあと、今はスキーチームのマネージャーやコーチなどをしています。FIREの最大の利点は時間を自分の好きなことに100%使えるということにあると思います。今はスキーの若い世代の育成に興味があるので、技術だけではなくて、選手を引退したあとのセカンドキャリアも含めて支援できる仕事ができればと考えています。

FIREを達成してから気づいたこと

話を聞いていくと、FIREを達成したあとに、仕事に対する考え方が変わったという声も多く挙がりました。価値観はどのように変化したのでしょうか?

穂高唯希さん
4年前にFIRE達成
(30代/妻/元会社員/株式投資)

会社員をしていたときは仕事の意義などを今ほど考えていませんでした。余裕がなかったので、自分のことで精いっぱいでした。会社を辞めて経済的にも精神的にも余裕が出てきてから、自分は社会の構成員だということを自覚して、社会や他の人の役に立ちたいと思うようになりました。

桶井道さん
2年半前にFIRE達成
(40代/独身/元会社員/株式投資)

FIRE前はのんびりしたいと思っていましたが、いざ暇な期間を1か月過ごしたときに「これはあかん」と思うようになって、その後「仕事がしたい」と思うようになりました。これは大きな誤算でした。今は仕事をしていたときの経験を生かして子ども食堂の運営にボランティアとしてかかわっています。昔からやりたいと思っていたので楽しく活動しています。好きなことならストレスなくやれる。働くことが嫌いだったわけではないことに気が付きました。

取材を通して見えてきたのは、労働環境が厳しさを増す中で、「働く意味」を見出せずに切実な思いを抱えながら、模索を続ける人たちが多いということでした。一方でFIREをしたあとにはじめて、自分のやりたいことが見つかり仕事が好きになったという人も少なくありませんでした。

個々人だけでなく、社会全体として、どうすれば働く意味を見出しやすい環境を作っていけのるか、問い直すときがきているのかもしれません。

番組では、みなさんからの声を募集します。
FIREの印象や働くことに対する思いを、コメント投稿フォームにお寄せください。

かんさい熱視線 2023年2月17日

「私たちはなぜ働くのか ~FIREを目指す人達~」

経済的に自立して、一生働かずに生きる=FIREと呼ばれる新たなライフスタイルを目指す動きが、若者を中心に広がっている。FIRE達成を目指すセミナーは毎回50人ほどの定員が20代~30代の人々で埋まり、関連本の売り上げも好調。極限まで倹約して投資に回す若者、いまの仕事に希望を見いだせずにFIREを目指す若者も少なくない。私たちが働く意味とはなにか?FIRE現象に集う現役世代への取材から考えていく。

 

 

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