高校野球

2021年03月30日 (火)

「俺もいるぞ!!」 新戦力台頭の春

 2年ぶりに戻ってきたセンバツ。今大会は、去年秋の段階ではレギュラーどころかベンチにも入れず「控えの控え」の立場だった選手たちの躍動が目立つ大会になっています。

秋はベンチ外の選手が大会1号



SUGOUSUZUKI.jpg大会5日目までホームランがなかった今大会。今大会1号を打ったのは、去年秋の公式戦ではベンチに入れなかった選手でした。東海大菅生高校2年の鈴木悠平選手。若林弘泰監督から「ひと冬越えて、持ち味のパワーが光るようになってきた」と評価され1回戦に「6番・ライト」で先発出場すると、最初の打席でいきなりレフトスタンドへ先制ホームランを打ちました。

SUGOUSUZUKI2.jpg序盤で主導権を握ったチームは1点差で逃げ切り、4回目のセンバツで初勝利をつかみました。鈴木選手は「冬場は1日500スイング以上を欠かさず振り込み、下半身も鍛えてきた。やってきたことが出せてよかった」と振り返りました。

東海大菅生は2回戦の京都国際高校戦では、9回に代打で起用された多井耶雲選手が逆転サヨナラのタイムリーツーベースを打ちました。

SUGOUOOI.jpg多井選手も、去年一度もベンチに入れなかった2年生です。それでも「チャンスがある」と信じて自主練習でバットを振り込んできました。常に相手ピッチャーを想定し丁寧にスイングすることを繰り返して最後の滑り込みで甲子園のメンバーに入り、この打席が公式戦初打席でした。春に出てきた2人の新戦力が、東海大菅生を初のベストエイトに導く原動力となりました。

大会中に中心選手に



ベスト4に進んだ奈良の天理高校には、このセンバツでメンバー入りをつかんだところから、大会期間中に一気に中心選手まで駆け上がった選手がいます。木下和輔選手です。木下選手は大会前の練習試合でバッティングで結果を残してメンバーに選ばれました。

TENRIKINOSITA.jpg中村良二監督が「とても思い切りがいい選手なので、大舞台でも物怖じせずに自分のバッティングをしてくれるのではないか」と期待を込めて1回戦でいきなり「6番・センター」で先発出場させると、2回にチームを勢いづける先制のタイムリースリーベースを打ちました。

TENRIKINOSITA2.jpgのサムネイル画像木下選手は試合後のインタビューで「“天理にこんなやつがいたのか”と思わせることができた。この冬やってきたことが出せたのですごく喜びがありました」と興奮気味に話していました。甲子園でさらに評価を上げた木下選手は、2回戦の高崎健康福祉大高崎高校との試合では2番に打順を上げてヒット3本の活躍。ここまで3試合すべて先発出場し、チームにとって欠かせない選手となっています。

公式戦初先発で好投



SAGAMIMOTOME.jpg同じくベスト4の東海大相模高校は、2回戦で公式戦初登板の求航太郎投手が先発しました。求投手は層の厚い東海大相模の投手陣の中に埋もれて去年秋までは公式戦の登板がありませんでした。関東大会ではチームがサヨナラ負けした準々決勝をスタンドから見つめ「何もできずに負けたのが悔しかった」と、冬場、下半身強化などのトレーニングに必死に取り組みました。ひと冬越えて、大会前の練習や練習試合で結果を出した求投手。門馬敬治監督からボールの質の良さを評価され、甲子園で公式戦初めてのマウンドに上がると、4回をヒット2本、無失点の好投。見事に期待に応え、チームは1対0で鳥取城北高校に勝ちました。SAGAMIMOTOME2.jpg

求投手は「冬場やってきたことをすべて出そうと思っていた。緊張したが、自分のピッチングができて自信になった」と振り返りました。

実戦機会増え、埋もれていた選手にチャンス



ほかにも多くのチームで、去年までベンチに入れなかった選手が甲子園の舞台で活躍しています。ではなぜ、今大会そうした選手たちの活躍が目立つのでしょうか?東海大相模の門馬監督は「去年は新型コロナウイルスの影響で3か月ほど練習できない期間があった。新チームになって以降も時間が限られ、新しい選手を鍛えるとかチャンスを与える機会があまりなかった。そのため新しい発見ができなかったが、年末から大会前の期間でチームの中にいろんな選手が見えてきた」と説明してくれました。

SAGAMIKANTOKU.jpg新型コロナウイルスで試合も練習も思うようにできない期間が長かったこの1年。それでも諦めることなく努力を続けてきた選手たちが「俺もいるぞ!!」とばかりに活躍しているのが今大会の特徴といえます。ただ、新たにベンチに入った選手がいるということは、当然外れて悔しい思いをした選手がいます。彼らもがむしゃらに夏の背番号を奪いに来るでしょう。さらに新しい選手の台頭もあるかもしれません。

チーム内の競争を勝ち抜いて憧れの舞台、甲子園の土を踏もうと、全国の球児たちが今も汗を流しています。


センバツ取材班 福島康児記者

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