高校野球

2021年03月31日 (水)

全国大会で初めて運用された球数制限 その課題は?

 

ことしのセンバツ高校野球。大会が終盤に近づくにつれて、注目されるようになったのが、ピッチャーの球数制限です。

導入決定はおととし秋


球数制限は、ピッチャーを肩やひじのけがから守るため、1週間に投げる球数を500球以内とするルールで、おととし秋に導入が決まりました。当初は、去年のセンバツから運用が始まることになっていましたが、新型コロナウイルスの影響で大会が中止。夏の甲子園なども開催が見送られたため、全国大会での運用は、ことしのセンバツが初めてとなりました。

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地方大会では適用された事例も


一方で、地方大会では運用が始まっていて、去年秋の東北大会では、実際に球数制限が適用されたピッチャーも出ました。大会が1週間の日程で行われるなか、柴田高校(宮城)のエース、谷木亮太投手1回戦から準決勝までの4試合で481球を投げていたため、決勝では19球しか投げられなかったのです。エースが戦力になれなかった柴田高校は、仙台育英高校に大量18点を奪われて敗れました。準優勝という成績が評価されて、センバツ初出場を果たしたものの、大敗した試合の内容がどう受け止められるのか、出場校を選考する過程で注目を集めました。

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センバツでの適用は


今回のセンバツで、最も球数制限が適用される可能性があったのが、中京大中京高校(愛知)のエース、畔柳亨丞投手です。畔柳投手は1回戦から準々決勝までの3試合で379球を投げました。1回戦の登場が最後だったため、1週間のうちに、準決勝までの4試合を戦うことになりました。このため、準決勝を121球しか投げられない状況で迎えることになったのです。結局、畔柳投手は、腕に疲れがあるとして、リリーフで2回3分の1、31球を投げるにとどまりましたが、万全の状態であれば、球数制限をにらみながらの難しい起用になったかもしれません。

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チームによって条件が異なるケースも


準々決勝までの3試合で最も球数を多く投げていたのは、天理高校(奈良)のエース・達孝太投手です。1回戦で161球、2回戦で134球、準々決勝は164球を投げ、3試合の合計は459球となりました。ただ1回戦が大会1日目だったため、11日後に迎えた準決勝は、2回戦と準々決勝の球数だけがカウントされることになり、200球以上投げられる状況で迎えることができました。

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達投手は準々決勝で左脇腹を痛めたため、準決勝では登板しませんでしたが、絶対的なエースをチームの中心に据える中京大中京と天理は準決勝を異なる状況で迎えていて、組み合わせ抽せんが投手起用に大きく影響を与えることが改めてわかりました。

指導者は戦い方も模索


今回のセンバツでは、球数制限を意識した戦い方をするチームも多く見られました。仙台育英は、1回戦で好投した2人とは異なる3人のピッチャーを2回戦で起用。須江航監督は「大会で頂点まで駆け上がるには2人以外のピッチャーで勝ち上がることが重要だと思っていた」と話し、全国の舞台で戦える複数の投手を育てることが優勝を狙ううえで重要なポイントになるという考えを示していました。

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仙台育英 須江航監督

福岡大大濠高校の八木啓伸監督は、エースの毛利海大投手が2回戦までに278球を投げていたため、疲労を考慮して、準々決勝は、2年生の馬場拓海投手に先発を託しました。この試合、福岡大大濠は序盤の大量失点が響いて敗れました。八木監督は「球数制限もあり、1人で投げ切るのは難しい。エースをどこで投げさせるのかが指導者に問われている。夏に向けて試合をつくれる投手を2人、どちらでも任せられるというエース格を2人作りたい」と話していました。

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福岡大大濠 八木啓伸監督

試行期間で検証


全国大会で運用されるなか、さまざまな課題も見えてきた球数制限。高野連=日本高校野球連盟は去年春からの3年間を試行期間としたうえで、先月、発足させたワーキンググループで、エビデンスを集めて検証していく方針です。

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高野連の八田英二会長は「去年秋の大会やことしのセンバツでの事例を試行期間における貴重な経験として、球数制限をどうするか、議論にいかすようにさせていただきたい」と話していました。

センバツ取材班 今村亜由美記者

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