高校野球

2021年03月22日 (月)

「車いすだから野球部に入らない。そういうのは無し」

具志川商業のアルプススタンドで、試合を見守る車いすの男子生徒がいました。彼は野球部のマネージャー。チームに欠かすことができない重要な戦力だといいます。 

憧れの高校野球、でも…


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具志川商業野球部マネージャーの山城来さん。
山城さんは、先天性の脳性まひで生まれつき両足に障害があり、車いすで生活しています。幼いころに見た高校球児に憧れ、少年野球チームに入るほど野球にのめり込み、プロ野球のキャンプにも毎年欠かさず訪れて、野球の知識と見る目を養ってきました。

憧れの高校野球に携わるためにマネージャーになりたいと高校に進学しましたが、いざ入学すると、野球部に入っても練習中に水を運んだり、けがの手当をしたりできない自分は迷惑をかけるのではとためらっていました。そんな時に、声をかけてくれたのが同じクラスだった、キャッチャーの比嘉力太選手でした。

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「車いすだから野球部に入らないとか、そういうのは無し。
 本当に好きだったら一緒に野球やろう」。

 

“目”を生かしチーム支える


 

比嘉選手のことばを受けて、入部を決めた山城さん。
マネージャーとしてできない作業がある代わりに、自分が培ってきた“目”を生かして、チームに貢献することにしました。取り組んだのは、相手チームの戦力やチームメートのプレーの分析です。

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 対戦相手の試合の映像やデータを集めて共有しているほか、チームメートのフォームを撮影し、何度も見直しながら選手の状態を確認して癖があれば指摘しています。選手たちはもちろん、喜舎場正太監督からも信頼されるその山崎さんの分析力を支えにチームは去年の秋、九州大会ベストエイトに進出。そして、初めての甲子園出場を果たしました。


ともに戦う憧れの舞台で


 

迎えたきょうの第1試合。同じく21世紀枠で選ばれた青森・八戸西高校と対戦しました。アルプススタンドで見つめる山城さんの目の前で選手たちが躍動します。
2回、山城さんを野球部に誘ってくれた比嘉選手のレフト前ヒットからチャンスが広がり、この回4得点。山城さんが分析したデータを元に、八戸西の先発・福島投手を一気に攻略しました。試合は8対3で具志川商業が勝利。試合後、チームメートからは「宿舎に戻ったら山城と一緒に喜びたい」そんな声も聞かれました。

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 勝利の瞬間、笑顔を見せた山城さんは、初めての甲子園で校歌を歌う選手たちの様子をじっと見つめながら、こう話してくれました。
「ここまで連れてきてくれた選手たちに、心から感謝を伝えたいです。次の試合に向けても、できることを1つ1つやって、甲子園というすてきな場所での経験を少しでも長くできるようにして、思い出を自分の目に焼き付けたいです」

 (甲子園取材班 佐藤翔記者)

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