高校野球

2021年03月20日 (土)

52年の時を超えて挑んだ春

 出場32校のうち最も久しぶりのセンバツとなったのが宮崎商業です。前回の出場は、なんと52年前の昭和44年。当時のメンバーも今のチームを支えています。

  選手たちの背中を押す52年前のメンバー


 大会の開幕まで、およそ2週間となった3月3日。宮崎商業のグラウンドにいたのは西井哲夫さん(69)、52年前のセンバツに出場したOBです。

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西井さんは、高校時代、速球が持ち味の右投手として活躍。しかし、九州王者となり、優勝候補の一角にも数えられたセンバツ大会では、コントロールに苦しんで打ち込まれ、初戦で敗退しました。西井さんは卒業後、プロ野球のヤクルトに入団。長嶋茂雄さんや王貞治さんなど、そうそうたる顔ぶれの選手たちを相手に、先発や中継ぎとして18年間プレーしました。甲子園での悔しい経験が原動力になったと振り返ります。

子どもたちを甲子園に送り出したい


 

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西井さんは、プロ野球選手を引退した後、地元の宮崎県に戻って、子ども向けの野球教室を開きました。対象は主に中学生。高校入学直後から即戦力として活躍できる選手を送り出すためです。日課は、畳の上ではだしで500球ティーバッティングをさせること。スパイクを履いていると分かりにくい、足の指での踏ん張りを意識させるためです。しっかりと下半身でスイングを支えることができれば、逆方向にも強い打球が打てるようになると教えてきました。

ベンチ入り5人が教え子


 ことしの宮崎商業では、ベンチ入り18人のうち5人が西井さんの教え子です。

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5番を打つ西原太一選手もその1人。去年の秋の大会ではホームランを2本打つなど、チームトップに並ぶ10打点を挙げて、センバツ出場に大きく貢献しました。西原選手は「甲子園で活躍して西井さんに恩返ししたい」という思いで試合に臨みました。対戦相手は、奈良の天理高校。大会屈指の好投手、達孝太投手から7回まで得点を奪えず、苦しい展開が続きました。それでも8回に1点を返し、西原選手にランナー三塁のチャンスで打席が回ってきました。西原選手は、スリーボールからの4球目。ストライクを取りに来るボールを狙います。西井さんの教えを意識して、逆らわないバッティングでバットを振り抜きましたが、ファール。その後、フルカウントから低めの変化球を振らされて三振。チームも1対7で敗れました。

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西原選手
「逆方向に強く打つ意識があったんですが、それができなかったのが悔しいです。西井さんには、個人もチームもさらに力を上げて、夏にまた甲子園に出られるように練習していきたいと報告したいです」

テレビで試合を観戦した西井さんにも電話で取材しました。

西井さん
「全国クラスのピッチャーを相手によく頑張りました。西原選手の三振は、打たなきゃいけないボールだったのに残念でしたが、まだ夏があるので、さらに打って走って練習して、悔しさを次につなげて欲しいです」

52年ぶりのセンバツで勝利をあげることはできませんでしたが、選手たちは、今後につながる大きな経験を積むことができました。西井さんをはじめ、OBの思いや期待も支えに、宮崎商業の選手たちは夏に向けて成長を誓います。

(担当:センバツ取材班 佐藤翔記者)

 

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