高校野球

2019年08月22日 (木)

星稜 奥川投手 涙の後、目に映るものは

奥川恭伸投手。今大会ひときわ大きな輝きを放った星稜のエース。ただ、最後の夏に至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。閉会式で涙を流した後、彼の目に映るものは。

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壁に直面し続けた高校野球生活


今大会、前評判通りの実力をみせたプロ注目の奥川投手。しかしここに至るまでの高校野球生活は決して順風満帆ではありませんでした。
中学3年生の夏の全国大会で優勝投手になり、星稜に入学した奥川投手。1年生夏からベンチ入りを果たし、主戦ピッチャーを任された1年生秋の大会。石川大会の決勝で対戦した日本航空石川戦では序盤から打ち込まれ3回もたずに降板、再戦となった北信越大会の決勝でも5回7失点と役割を果たせず、自信を打ち砕かれました。
冬場の厳しいトレーニングを乗り越えて迎えた翌年春の石川大会決勝、再び日本航空石川と対戦し、今度は9回を1人で投げ抜き4安打完封。
壁を乗り越えた奥川投手は去年の夏、2年生エースとしてチームを夏の甲子園に導きました。しかし、その大会では2回戦の済美戦で足をつるアクシデントから4回で降板、チームも敗退しました。
「よくなったと思ったら、次の壁に当たるということの連続だった。彼が成長するために、野球の神様が試練を与えてくれたのかもしれない」と星稜の林監督。
「困難にぶつかるたび、奥川投手はそれを乗り越え、一回り大きく成長してきた」。もっとも近くで奥川投手の成長を見守ってきた林監督はその努力を評価しました。

最後の夏、輝きを放つ


迎えた最後の夏。甲子園に出場した奥川投手は3回戦の智弁和歌山戦、前の試合で大会記録に並ぶ1イニング3本のホームランを打った強力打線を相手に延長14回を投げ抜きました。「怖かった。何度も心が折れそうになった」と振り返りながら、終わってみればヒット3本1失点のほぼ完璧なピッチング。準決勝でも7回無失点の内容で、チームを決勝に導きます。

そして決勝。試合開始のサイレンが鳴り響くなか、奥川投手が投じた1球目はストレート。打席には履正社の1番・桃谷選手。ここまでの5試合、第1打席で5打数5安打、5本のうち4本が長打と強打のチームを勢いづける1打を打ち続けてきたリードオフマンです。「抑えるのと打たれるのとでは、試合の大きな違いになる」と奥川投手、力を込めた149キロでショートゴロ。警戒していた相手を打ち取り、波に乗ったかに見えました。

しかし打線が1点を先制した直後の3回、ツーアウトから「相手にもぎとられた」と連続フォアボールでピンチを招き、4番・井上選手との勝負。「抜けてしまった」と高めに浮いたスライダーをバックスクリーンに運ばれ、逆転を許しました。7回に打線が同点に追いつき、「星稜の底力を見せてくれた。なんとか0点で切り抜けたかった」とマウンドに上がった8回、持ち味の速球を履正社打線に捉えられ、日本一にはあと一歩、届きませんでした。それでも試合直後「きょうも9回まで投げさせてもらって、最後まで野球ができて幸せだった。やりきった」と晴れやかな表情を浮かべました。

涙の後、目に映るものは


今大会は5試合の登板で41回1/3を投げて51の三振を奪い、失点はわずかに6、防御率1点09と安定した成績でした。
決勝では、9回以外はすべてランナーを許し、粘りのピッチングとなりましたが最後までマウンドでチームのスローガンである『必笑』を忘れず笑みを浮かべながら全力で投げ続け、試合が終わっても気丈に振る舞いました。
それでも閉会式の直前、スタンドにいた中学時代の恩師と目が合い、言葉をかけられたとき、支えてくれた人たちへの感謝から涙があふれました。

閉会式の後、奥川投手はこれまでのようににこやかに取材に応じました。今後の進路については未定としたものの、「上の舞台で野球をしたい気持ちはあるし、まだまだ大きくなりたい。きょうの負けを野球の神様が与えてくれた試練だと思って今後に生かしたい」と話しました。
奥川投手は、みずからの目に映る次の壁に挑むことで、さらに成長していくことを誓いました。

【甲子園取材班:安留秀幸記者】

 

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