2021年03月03日 (水)
パラスポーツが教えてくれたもの 【山本賀保子】
東京パラリンピックの開幕まで半年を切りました。
私自身、いちばん力を入れて取材をしてきたのがパラスポーツです。
今は、取材を通して感じたことをお伝えしたいと思います。
パラスポーツを初めて取材したのは、4年前の5月2日。大阪・梅田で開催されていた体験イベントでした。
「車いすバスケットボール」や「ボッチャ」の体験ができ、平日にもかかわらず大人から子どもまで幅広い世代の方が楽しんでいました。
スポーツキャスターになったばかりの私は、競技用の車いすを間近で見るのが初めてで、スピードを出した車いすどうしが激しく接触する迫力に衝撃を受けました。
ただ、放送では、その魅力をうまく伝えることができませんでした。
スタジオには『まとまった言葉』『すてきな言葉』を探している自分がいました。
今思えば、取材者としての経験や知識がなく、リアリティーに欠けるコメントでした。
その日の夜は、すごくもどかしく、なかなか眠ることもできませんでした。
パラスポーツに限らず、スポーツの魅力を伝えるにはもっと知識が必要で、いろんな選手に会いに行かないといけないと気づかせてもらった取材でした。
それ以来、関西のアスリートに会いに行くようになりました。
そこで選手自身の競技に対する姿勢や考え方、ふとした会話から、いろんなことを教えていただきました。
特に、パラスポーツの取材では、印象に残った2つの言葉があります。
パラカヌー冨岡忠幸選手
「教科書がない」
パラスポーツは、障害の程度によってクラス分けをされていますが、選手自身の体の特徴は人によって大きく違います。
誰かのまねをしても、自分には合わないことがほとんど、ひたすら自分の体を研究して練習を重ねないと上達できないということでした。
滋賀の自宅から石川の練習場に通う冨岡選手。
限られた練習時間の中で限界まで集中力を高め、練習していた姿がとても印象的でした。
パラ柔道の松本義和選手
「柔道で培った受け身がふだんの生活で身を守るために役に立つ」
松本選手は、視覚障害のある選手ができる競技は何でも挑戦してきた方です。
松本選手によりますと、転んだりけがをしたりすると道を歩くこと自体が怖くなり、外に出られなくなってしまう視覚障害者の方もいるそうです。
その気持ちは十分わかるとしたうえで、怖がらなくていいようにさまざま経験しておくことが大事だと話していました。
松本選手からは、道路はややかまぼこ型になっているため、自分が道のどのあたりを歩いているのかを足の裏で感じていることや、風の流れを感じながら目の前に障害物がないかどうかを察知していることも教えてくれました。
自分ではまったく気づかなかったことで、視野が広がったような気がしました。
選手からは多くのことを学ばせていただき、どんどんパラスポーツが好きになりました。
選手たちが躍動する姿をもっと多くの人に見てほしい。競技にかける思いや、熱量を感じてほしい。
そばでたくさんの感動をもらった一人の取材者、ファンとして、そう願います。
スポーツキャスター 山本 賀保子(やまもと かほこ)
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