2022年04月27日 (水)
間宮祥太朗さん 差別とどう向き合う?
俳優の間宮祥太朗さん(28)。
ことし夏に公開される映画で、被差別部落出身の主人公を演じました。
「差別について、どう思うか?」
今回の役を引き受けたことで、何度も聞かれたと言います。
間宮さんはこの問いにどう向き合っているのでしょう?
(大阪放送局 記者 橋野朝奈)
■映画『破戒』
島崎藤村の明治時代の小説を原作にした映画『破戒』。
被差別部落出身の教師、丑松(うしまつ)が父親からの戒めを守って出自を隠しながら、日々思い悩み葛藤します。
映画は、部落差別の根絶を求めて活動した「全国水平社」の創立から、ことしで100年となるのにあわせて製作されました。
3月に京都で行われた水平社創立100年を記念する部落解放同盟主催の大会で、映画の上映会と舞台あいさつが行われました。
丑松を演じる間宮祥太朗さんもステージに上がりました。
間宮さん
「自分の身体や言葉、感情を通して、主人公の丑松とその周り、その背景にあった物語というのがストレートに伝わればいいなと思って演じました」
「破戒」を主演したことについて間宮さんはどう思っているのか、会場の別室で詳しく話を聞きました。
■“見てもらいにくいテーマだけど”
まず聞いたのは、映画の核となる差別について。
間宮さんは、なかなか映画館に足を運んでもらえないテーマだと語ります。
間宮さん
「選ばれづらいテーマだと思います。とくに若い人からは。友達と軽く楽しい映画を見に行こうよっていうテーマでもないし」
若い世代からも圧倒的な支持を集める間宮さん。
自分の存在がきっかけになって、少しでも若い世代が目を向けてくれるのならうれしいと語ります。
間宮さん
「この映画をチョイスしてもらうことがまず重要だと思うし、そのために自分は、映画の知名度を上げるというか、この作品をチョイスしてもらえる要因のひとつになればいいと思っています。若い人たちが見てくれることが、いちばん重要だなと思います」
「自分より若い世代や学生たちが見に来てくれるなら、劇場でどう受け取ってもらってもかまわないんです。見たうえで、自由に思って、やっぱり何かは思ってほしい。映画を見て思うことは十人十色で、それは自由だと思うんですよ。思い方は人それぞれですけど、映画館で見終わったときに何かを思っていてほしいです」
間宮さんは、部落差別について知ってはいましたが、出演を機に、より深く考えるようになったと言います。
間宮さん
「授業で習ったりとかして事実としては知っていても、それは知識というか、そういうことがあったということを知っているだけで。それについて個人的に人間的な部分で知っているということはなかったです」
■主演にあたり差別についてどう受け止めた?
主役を演じるにあたって、差別についてどう受け止めたのか。
こうした質問に、間宮さんは言葉を選びながら答えました。
間宮さん
「この作品を受けるときに、やっぱりどうしてもその質問は聞かれるだろうし、向き合わないといけないと思いました。ただ、自分の中で思っていることはあるけど。自分の思想みたいなものをこの作品の外の部分で発信していこうという気はあまり持っていなくて」
「もちろん差別はひどいことではあると思います。でも僕は差別について、どう思う、こう思う、というような個人的な価値観を発信せずに、この作品をやることに意味があるかなと思っています」
■うごめく感情を覆い隠す「静けさ」
丑松は父親から被差別部落の出身であることを隠すよう戒めを受けています。
原作の小説も読んだうえで重視したのは、感情を覆い隠す「静けさ」でした。
間宮さん
「感覚的な言葉になってしまいますけど、静けさをすごく重視していました、自分では。丑松が、忍んでというか生活している中でも、いろんな感情がうごめいているんですけど、表に出さないというのがひとつのテーマだったんで。丑松は父親から、素性を隠して他者との関わりを深く持たないっていうことを言われていて。隠す、静けさ、静かにいるということはすごく意識しました」
■“名もなき差別”も
さらに、間宮さんが繰り返したのが「普遍的」という言葉です。
作品の舞台は明治時代。100年以上前の部落差別の話が、なぜ「普遍的」なのでしょうか。
間宮さん
「自分が知りえようもない時代の話で、そこに対して自分は想像するしかなかったり、台本を読んで状況を思い浮かべたりすることで、ちょっとずつ自分の中に入れていって、それをそしゃくすることしかできない」
「大きなテーマを扱っているんだぞという変な気負いより、もっと身近なところで感じる部分がありました。今回は部落差別の話で、丑松がそれに対してどう生きていくかっていう話ですけど、その時代とかその人物の背景を超えて普遍的に誰もが落とし込める部分があると思いました」
間宮さん
「差別自体はどの時代にもそこらに転がっていることなので。いま、さまざまな問題がメディアとかで世界中で取り上げられていますけど、そもそも名前もついていない差別もあるはずだし。部落差別の映画をいま自分がやることによって、自分が生きている今と、これから先の未来とリンクさせることしかできないと思うんです」
■静かな言葉に感じた力強さ
インタビューは約30分に及びました。
小説や映画の中の丑松と同じく、間宮さんの発する言葉には終始静けさを感じました。
静けさの中で紡ぎ出された数々の言葉。
その背景には、差別に対して間宮さんが抱いている思いが、間違いなく存在していることを感じました。
100年前、全国水平社の創立時に採択された水平社宣言は「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれています。
部落差別に限らず、差別のない世を求める普遍的な訴えです。
今、そして未来の社会で、差別とどう向き合うか。
私も考え続けていきたいと感じました。
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