かんさい深掘り

2021年11月09日 (火)

児童養護施設から社会へ!若者の自立を支える

親の病気や虐待など様々な理由から児童養護施設で暮らす子どもは全国で約2万7千人。

原則18歳になると施設を出なくてはなりませんが、社会に出ても相談する人がおらず孤立し困窮するケースが少なくありません。

こうした若者たちを支えようと息の長い取り組みを続ける人たちがいます。

(取材 大阪拠点放送局ディレクター 伊藤愛)


京都府にある児童養護施設では毎月1度、地元の中小企業の経営者たちが入所児童との交流活動を行っています。

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メンバーは学校生活での悩みや進路の相談など1人1人の子どもたちの話に耳を傾けたり、将来の仕事について考えるきっかけにしてもらうため職業体験を受け入れたりしています。

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入所時からつながりを持つことで施設の退所後も“何かあれば相談できるおっちゃん・おばちゃんになりたい”と、10年以上こうした活動を続けてきました。

施設の交流がきっかけとなり社会での居場所を見つけた人がいます。

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滋賀県内にあるシール印刷の会社で働く麗紋(れもん)さん(25歳)は、中学1年の時に親を亡くし、児童養護施設で育ちました。

施設を退所後、行き先が見つからず困っていた麗紋さんに声をかけたのが、この会社の会長をつとめる大槻裕樹さんでした。
施設で長年交流を続けていたこともあり、採用することにしたのです。

大槻さんは麗紋さんが社会人として自立できるよう、親代わりにサポートしてきました。

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大槻裕樹さん:人なつっこい子で、うちの仕事もできるかなと思うところもあったし、どこにも行く所が無いならうちに来るか?みたいなところから始まった。寝坊したら起こすし、怒るしということを普通に親はするけど、あの子たちに必要なのはそういうことではないか。

麗紋さんは現在、働きながらひとりで2歳の娘を育てています。

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育児と仕事に追われる暮らしの支えになっているのは大槻さんの弟夫婦、裕司さんと美佐子さんです。

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麗紋さんに用事がある時や休養したい時など、月に一回程度、娘を預かり一緒に過ごします。

裕司さん夫婦は、何かあればすぐに助けられるよう、麗紋さんに近所に住むことを勧め、声をかけあう関係を続けています。

麗紋さん:子どもを産んで1年してコロナが流行して、本当にいっぱいお世話になった。みんながいなかったら、私も子どもと一緒にやばい、やばいって言っていたかもしれないし、みんなの"おせっかい"のおかげで私たち親子は生きていける。


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麗紋さんが大槻さんの会社で働くようになって5年。
今ではシール印刷機の職人として、新入社員の指導役を任されるまでに成長しました。

大槻裕樹さん:意識が大人になってきたし仕事をする気持ちが変わってきた。彼女はひとりでよく頑張っているし、頑張りが自信になってできることが増えてくれたらうれしい。

児童養護施設から社会に巣立つ若者たち。

地域の企業との温かいつながりが、自立への歩みを支えていました。

 

 

大阪拠点放送局 ディレクター
伊藤 愛