2021年10月12日 (火)
コロナ禍で子どもたちが寝不足に
コロナの影響は、子どもたちの睡眠時間にも影響を及ぼしています。
大阪 堺市では睡眠不足の子どもたちが増えていて、中には次の日学校があっても午前3時まで起きているという中学生も。
学校現場では、「言い様のない不安」が広がっていると危機感を抱いています。
(NHK大阪放送局 記者 宗像玄徳)
午前3時まで起きている日も・・・
緊急事態宣言によって、学校が休校になったり、部活動が中止されたりと様々な影響が出ました。
今は多くの学校で子どもたちがタブレットなどの端末を使うようになり、オンライン授業も当たり前のように行われるようになりました。
その一方で、堺市北区の中学3年生の女子生徒は、以前に比べて家でタブレットを使う時間が増えたと言います。
動画投稿サイトを見たりゲームをしたりして過ごす時間が増え、学校がある平日でも午前3時まで起きている日もあり、翌朝起きられないこともあるそうです。
女子生徒
「YouTubeやゲーム配信の動画とか・・・風呂に入った後にタブレットを見ると、特別遅い時間にならなくても目がさえちゃうので、眠れないというか。翌朝も学校に行くまでの腰が重いというか、気が乗らないというか」
母親
「タブレットは時間を決めて使ったり、時々目を休めたりするよう呼びかけていますが、コロナ禍でタブレットやパソコンを使う時間が増えるなか、子どもをネットから引き離すのは難しいです」
コロナ禍で学校の休校や不要不急の外出の自粛が求められてきた中で、自宅でネットを使う時間が相対的に増える中、家庭ではどう折り合いを付けていくかが悩みだといいます。
午後11時以降に寝る中学2年生は“3人に2人”
子どもの睡眠不足はデータにも現れています。
堺市の教育委員会は、すべての市立学校の小学4年生から中学2年生合わせて3万4000人を対象に去年12月、アンケート形式で就寝時間についての調査を行いました。
それによりますと就寝時間が午後11時以降と答えたのは、中学2年生の約67%(4462人/6686人)にのぼりました。
コロナ禍前のおととしから5ポイント増加したことがわかりました。
また、小学6年生も約29%と、おととしより3ポイント増えていて、すべての学年で就寝時間が遅くなっている傾向が浮き彫りになりました。
堺市教育委員会
「コロナ禍が続き、家でスマホなどに触れる時間が増えたことが影響している可能性がある。ネットの過度な使用を控えるよう目を配るなど、子どもたちの生活を大人が見守る必要がある」
睡眠不足改善を 動き出した中学校も
子どもの睡眠不足が、遅刻や不登校につながっていると指摘する学校があります。
堺市南区の市立三原台中学校は、年間5回、生徒の就寝時間や起床時間を調べ、生活習慣の改善のための指導に力を入れています。
生徒指導を担当する福井彬人教諭によりますと、新型コロナの感染拡大前、生徒たちの不安やストレスの原因は人間関係や部活動など、多くの場合、特定できたといいます。
一方、新型コロナの感染拡大後は、不安の理由を聞いてもうまく答えられない生徒が増え、生徒たちの中で「言い様のない不安」が広がっているのではと危機感を抱いています。
こうした生徒たちの中で、授業中、保健室で過ごしたりスクールカウンセラーに相談したりする生徒が増えているということです。
学校では、睡眠の大切さを伝える特別な授業を行ったり、生活習慣が乱れた生徒に対して個別の面談を繰り返したりすることで不安やストレスの原因を探り、睡眠時間の改善に取り組んでいます。
三原台中学校 福井彬人教諭
「生徒の心や体がコロナ禍の影響を受けて支障を来しているのが、目に見えて分かる状況です。生徒の不安やストレスを解消させるために、コロナ禍で休止した学校行事や部活動の場を取り戻してあげたいです」
専門家「子どもたちの変化に気づいて」
コロナ禍が小中学生の精神面に与える影響について研究している専門家は睡眠不足という子どもたちが発するSOSを見過ごさず、対応をとる必要があると訴えています。
筑紫女学園大学人間科学部人間科学科 大西良准教授
「睡眠が不足すると精神的不調、メンタルヘルスの不調を起こしやすくなるのは明らかで、精神的な不調を起こすまた眠れなくなるという悪循環になっていきます。子どもたちの声に耳を傾けて変化に気づいていくことが大事になると思います」

宗像 玄徳