かんさい深掘り

2021年04月16日 (金)

"命を救いたい" 電話の向こうの声に寄り添って

fukabori030416_1.jpg大阪にある、自殺防止に特化した電話相談センターには、去年1年間で、前の年よりおよそ20%多い相談が寄せられています。
背景には、新型コロナウイルスの影響を指摘する声もあります。
現場では、電話の向こうの命を救おうと、その声に寄り添う相談員の姿がありました。

(大阪放送局アナウンサー 牛田茉友)

 

新型コロナの影響か 増える電話相談


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NPO法人国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター

「ぷるるる」「ぷるるる」

電話が常に鳴り続けているビルの一室。

大阪市にあるNPO法人国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センターです。
自殺防止に特化した電話相談を行おうと、43年前に設立されました。
毎週、金曜日午後1時から日曜日午後10時まで連続57時間、電話で相談を受け付けています。

fukabori030416_3.jpgセンターの活動はほぼ寄付金で賄われ、相談員は全員、ボランティアです。

相談員たちは、相手の「死にたい」という気持ちを受け止め、ときに1時間以上、話に耳を傾け続けます。

去年は、電話相談件数が11万件余りと、前の年よりおよそ20%増加しました。

fukabori030416_4.jpg相談員によりますと、職を失ったり、収入が減ったりと新型コロナウイルスの影響を受けた人からの相談が目立ったといいます。
それだけなく、感染拡大でリモートワークが増えたことで、以前から悩んでいた家庭内暴力がより深刻化しているなどと相談を寄せる人も増えているといいます。

 

「相手の顔が分からないからこそ胸の内を素直に語れる」


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NPO法人国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター理事長 北條達人さん

NPOの理事長、北條達人さん(35)は、15年前に友人を自殺で亡くしたことをきっかけに、このNPOに参加し、2年前から理事長を務めています。
電話相談は、相手の顔が分からないからこそ、胸の内を素直に語れるところに意義があるといいます。

「本当に話したいことがあっても、例えば家族だからこそ話せない。会社の同僚だからこそ話せない。そういった日常の立場から離れて、ありのままの自分で話せる場所なんじゃないのかなと思っています。ある意味で、これくらい匿名性が担保された空間・関係でないと、本当の自分というのはなかなか出せないのかもしれません」

 

電話相談に助けられた相談員の思い


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相談員の女性

相談員の60代の女性は、かつて、電話相談に助けられた経験があります。
6年ほど前、これから先、共に生きていこうと約束していたパートナーが自殺。
絶望感のあまり、後を追いたくなる衝動にかられ、何度も電話相談センターに電話をかけたといいます。
ほかにもかけるひとが多くいたのか、当初はなかなかつながらず、ようやくつながったときの心境を、いまでも鮮明に覚えているといいます。

「電話がつながると、すごくほっとしたんです。息が吐けたという感じでしょうか。夜中になると、とにかく食べることも眠ることもできない状態が続いていましたので、その眠れない時間に、息が詰まって苦しいんです。
頻繁にかけていたのは1年近くでした。その間、例えると、水泳でビート板を使って息継ぎしているような感覚でした。
でも、私は死にたいと思い続けて電話したんじゃないんですよ。自分を持ちこたえるために、電話をしてとどまる時間が必要だったんですね」

3年ほどがたち、パートナーの死を受け入れられるようになった頃、女性は自分も誰かの役に立ちたいと、相談員になることを決意しました。

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「あの時にすごく助けてもらえたっていう気持ちはすごく強くあるんですね。電話がつながった時のほっとする感じというのも、つながらなくて、むなしくなっている時の気持ちも、いまだに忘れられないものがあります。自分自身がそうだったように、息が詰まって息苦しくてというところを、ふぅっと一息、息を吐いて、少しでも楽な気持ちになっていただけたらなと思っています」

女性は、1本でも多くの電話を取りたいと、なるべく多くの時間、電話の前に座り、悩みの声に耳を傾け続けています。その原動力のひとつには、亡くなったパートナーへの後悔の気持ちが強くあるといいます。

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「彼が亡くなる前に、話をちゃんと聞いてあげられなかったっていう後悔がずっとあるんです。身近な人に言えないことってあると思いますが、彼がこの電話相談を知っていて、あの日、電話して自分の思いを吐き出していたら、彼にももっと時間があったのではないかと思います。彼の話を聞けなかった分、罪滅ぼしかもしれませんが、誰かの話に耳を傾けて、役に立てたらと思っています」

電話相談を受けるとき、女性は決して相手を否定せず、受け入れることを心がけているといいます。

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「とにかく、死にたいと感じることを否定しないようにしています。人ってそういうときあるよね、と。その人は、いま死にたいと感じるほど苦しい気持ちでいらっしゃるんだなというところを受け止めて、解いていく。自分の価値観などは一切排除して、受け止めていくことを心がけています」

 

何より大事な相談員の心のケア


NPOが大事にしているのは、相談員の丁寧な心のケアです。

まず、「引き継ぎの時間」
電話相談の担当を交代する時に、思いの内を打ち明ける時間を設けています。

そして、「振り返りの時間」。
指導を担う相談員と共に、過去に受けた電話の内容を振り返る時間を設けているのです。

理事長の北條さんは、いずれも、相談員が一人で辛い思いを抱えることがないようにするための大切な心のケアだといいます。

「相談される方もいろんな気持ちが起こるんですけれども、電話を受けている相談員の気持ちにも、いろんな変化が起きているんです。それを消化できないまま、次の電話に入るというのはとても危険です。自分だけの力では、その変化に気づくのは難しいですし、誰かと共に振り返りをすることによって、少しずつ自分の気持ちに起きた変化を明らかにしていくことができたら、結果的に、それがもっともっと寄り添える電話につながっていくんじゃないのかなと思っています」(北條達人さん)

 

新型コロナの影響で深刻な相談員の人手不足


fukabori030416_1.jpg強い思いを持つ一人一人のボランティアに支えられている電話相談。
しかし、NPOは、いま、深刻な人手不足に直面しています。
新型コロナの影響で、42人いる相談員のうち、28人しか活動ができていません
高齢の相談員や、家族に高齢者がいる相談員が感染リスクを懸念したり、会社勤めの相談員が新型コロナをきっかけにボランティア活動を禁じられたりするなど、さまざまな理由で、事務所に来られなくなっているのです。

1か月にかかってくる電話およそ1万件のうち、対応できるのは300件程度と、これまでの6割にとどまっています。

北條さんは、少しでも相談員を増やし、1本でも多くの電話を取れるようにと、SNSを使って、相談員の募集を呼びかけ続けています。

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「やはり、生身の人と会って、生身の関係でコミュニケーションを取りたいなと。でも、コロナでいま、それが難しいですよね。SNSでもなくて、誰かと会って話す時間でもなくて、ある種、特殊な場ですけれども、だからこそ、電話相談はこれから必要とされているのではないかなと思います。電話を通じて、心と心が通い合うような場というのが、今後、私たちに求められているものなのかなと思っています。
相談員の数を増やして、365日24時間、開いている状態にしたいですし、ただ開いているだけでなく、電話をかけたらすぐにつながるような、そういった窓口にできればと思っています」

NPO法人国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター
相談電話番号 06-6260-4343
毎週 金曜日午後1時~日曜日午後10時(連続57時間)
(大阪府民以外でもかけることができます)

電話相談ボランティアの問い合わせ
06-6260-2155
火曜・水曜・金曜・土曜 午前10時~午後5時



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