2021年03月24日 (水)
踊って伝える 乳がん「セルフチェック」
毎年9万人以上が新たにかかり、およそ1万5千人が亡くなっている乳がん。
乳がんを早期に発見するために大切なのがセルフチェックです。
去年、盆踊りを踊って、乳がんのセルフチェックを呼びかける動画が、動画投稿サイトに掲載されました。
制作したのは、乳がんを克服した元患者の女性。
踊りには、1人でも多くの人に、早期発見の重要性を伝えたいという思いが込められています。
(大阪放送局 ディレクター 橋詰絢子)
■制作したのは乳がんサバイバー
乳がんのセルフチェックを呼びかける動画を制作したのは、元乳がん患者の服部奈菜さんです。
服部さんに乳がんが見つかったのは8年前、32歳の時でした。
「なんだか胸がジンジンする」
乳房を触ってみると、しこりがあるように感じ、すぐに病院で検査をすると初期の乳がんがみつかりました。すぐに治療を開始し2年ほどで寛解しました。
「早く見つかったので治療での体の負担も少なく済みました。一人でも多くの人に早期発見・早期治療の大切さを伝えたいと思っています」
■新型コロナで検診率が下がる乳がん
乳がんは、毎年9万人以上が新たにかかり、およそ1万5千人が亡くなっています。
早期に発見し治療を行えば9割が治ると言われていますが、厚生労働省の調査によりますと、2019年までの2年間で、40歳から69歳までの女性の検診率は47.4%と、半数に満たないのが現状です。
さらに、新型コロナウイルスの影響で自治体の集団検診が中止になったことや患者が病院に行くのを控えたことなどが要因となり、去年は受診者数が一時大きく落ち込みました。
■自分で見つけよう!若い世代に呼びかけを
乳がんは体の浅いところにできることが多く、自分で触って異常がないかを確かめることができる数少ないがんです。
定期的な検診と並んで重要だとされているのが、月に一度、自分で胸を触り、異常がないかを確かめるセルフチェックです。
自分と同じ若い世代に乳がんの早期発見の大切さを知ってもらうため、乳がんの早期発見・治療の啓発を行う団体「ピンクリボンアートプロジェクト」を立ち上げた服部さん。
啓発イベントや動画配信を行う中、より多くの人にセルフチェックの大切さを伝えようと思いついたのが盆踊りでした。
「盆踊りには背景にいろんな願いが込められています。乳がんで悲しむ人が一人でも減るように思いを込めて、盆踊りで伝えたいと思いました」
■楽しく踊って身につく工夫
「ピースしてのの字書き しこりないかをチェックして」
「お月様 前よりも 後のチェックがおすすめよ」
「ピンクリボン音頭」と名付けた盆踊り。
幼いころから日本舞踊を習い、踊りが大好きだという服部さんが歌詞を書き、セルフチェックの際に気を付けることを盛り込みました。
振付はプロの振付師に依頼し、セルフチェックを連想させるような動きを取り入れています。
乳がんはごくまれに男性も発症することや、パートナーが異常に気付くことも多いため、男性にも踊りに参加してもらいました。
「『ピンクリボンはなんとなく知っていたけど踊ることで身近に感じた、来月検診に行く』という感想もありました。楽しく踊って、乳がんで悲しむ人が一人でもいなくなればと思っています」
乳がんの専門家も、踊りは乳がんのセルフチェックを知るよいきっかけになると話しています。
「斬新なものが出てきたな、というのが正直な印象で、中身を見るとしっかりとセルフチェックのポイントが紹介されています。患者さんからの発信はわたしたちにとっても非常にありがたいことです。いろんな世代の人が楽しめそうで、夏にみんなで踊りたいです」
■専門家に聞いてみた しこりってどんなもの?
わたしもセルフチェックを定期的に行っていますが、いまいちわからないのが「しこり」とはどんなものなのか、ということ。宮坂医師に尋ねました。
「表面近くにあるとポコッと指が引っかかる感じがします。しっかり触ると境界がコロッとわかったりするのがしこりの特徴です。肋骨と触り間違う方もいるので棒状になっていないか確認してください。
1か月程度様子を見て小さくなったりする場合は悪いものではありませんが、悪性だと進行することがあるので、乳腺外来を受診することをお勧めします」
■セルフチェックのポイントは
触り方のポイントを宮坂医師に乳房の模型で示してもらいました。
触る際には、指全体で触っても2本・3本の指で触っても構わないといいます。
触るときの強さは、少し皮膚の表面がへこむくらいの強さで押しながら乳房の上を滑らせるように触ります。痛みが出るほどぎゅうぎゅうと押す必要はないといいます。また、ボディーソープなどを使うと滑りが良くなるのでおすすめだということです。
また、乳房全体を確かめるためには、「の」の字を描くように触るほか、「縦方向」や「放射状」など自分の触りやすい方法で構わないということです。
宮坂医師は、触ったあとは次のポイントもチェックしてほしいと指摘しています。
■セルフチェック いつ触ればいい?
宮坂医師は、セルフチェックを行うタイミングは、生理がある人は生理が始まってから1週間から10日後を目安にしてほしいと指摘しています。生理中や直後は胸が張っているため、しこりを判別しにくいといいます。
また、閉経した人は自分の誕生日の日付や、例えば「ピンクの日」(毎月19日)のように、毎月の日付を決めて、セルフチェックを行うことを勧めています。
「もしも乳がんが見つかっても、早期であれば9割の治癒が期待できますし、最新の技術ではきれいに治すことがでます。とにかく早期発見することが大切です。
セルフチェックだけではなく定期的に検診を受け、検診と検診の間の期間をセルフチェックで補う。早期発見のためには両方バランスよく利用してもらうことが大切だと思います。
検査の時に痛いのでは?と敬遠される方もいますが、機器も進歩しているので、安心して検診を受けてください」
■新型コロナの時代 自分の体と向き合って
「楽しく踊って、セルフチェックを習慣にしてほしい」
新型コロナウイルスの感染拡大で、大人数で踊るのは難しい状況が続きますが、服部さんは「ピンクリボン音頭」の音色と踊りで、セルフチェックの輪が少しでも広がってほしいと願っています。
「ピンクリボン音頭は全部で2分半くらい。この世の中、心と体が皆さん疲れていると思いますが、月に一度、2~3分だけでも自分と向き合う時間を作ってくれたらいいなと思います」
※「ピンクリボン音頭」の動画はこちらから(NHKのサイトを離れます)
https://ohanaaroma0907.wixsite.com/pinkribbon-art
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